2019年下半期映画ランキングベスト20!

CHANNELCINEMA.COM管理人の私が観た映画のランキングを発表しています。2019年下半期の映画ランキングです。2019年下半期はラグビーワールドカップにすっかりはまってしまい、約1ヶ月半映画鑑賞しなかったので、いつもの週一ペースよりちょっと少なめの20本でした。
それでは、2019年下半期の映画ランキングをどうぞ!

1位
主戦場

監督:ミキ・テザキ
出演:吉見義明/中野晃一/林博史

人としての基本:ひとのはなしをききましょう

あいちトリエンナーレの企画展「表現の不自由展・その後」で慰安婦像が展示されたことに対して抗議が殺到し、企画展はわずか3日で中止に追い込まれた。
慰安婦問題を肯定する人と否定する人がいて、双方相手を否定し腹をたてる。
それは仕方がない。でもいかなる時でも表現の自由はあるべきだ。自分が不愉快だからといって相手の意見を無かったことにする、あるいは発言権を奪うのは違う。
この一連の騒動で、相手の意見を封殺せず、耳を傾け正面から反論することこそ自由な社会だという思いをますます強くした。

つい先日そんなことがあった後にこの「主戦場」を観た。2ヶ月くらい前に上映していた時はタイミングを逃してしまったところへきて、京都シネマでアンコール上映。
慰安婦問題をめぐって日韓米の様々な立場の人がインタビューに応える様を編集したドキュメンタリー。日韓の対立ではない。
日本にも否定派がいるし韓国の肯定派の中にも意見の相違が見られる。
ぐいぐい引き込まれた。どうしてもある一方の人たちが「間違っている」「悪」というように見えてしまうのだけれども、それでもできるだけ公平であろうとした結果だろうと思う。
話は慰安婦問題を超えて日本の闇を照らし出す。

右でも左でも、安倍政権を支持する人も反対する人も、歴史や政治に興味がある人もない人も、できるだけこの映画を観て欲しい。ある意見の人は不愉快に感じることでしょう。
それでもこの映画を観て自分と考えが違う人の意見に敬意を払ってしっかり耳を傾けて欲しい。
自分と考えが違っても相手の意見を封殺しないこと。
無かったことにしないこと。
そして考えること。
相手の意見をすべて否定するのではなく、すべて肯定するのでもなく、自分でしっかり考えること。
これが平和に近づける道だと思う。

世界平和。
この映画を観る人が多ければ多いほど選挙の投票率は上がるでしょう。

それにしても・・、こういう政治ドキュメンタリー映画をたまらなく面白いと感じるようになったのは年を食ったってことですかねえ。
このブログを読んでくれた若者(どれだけいるか知らんが)よ!
とっつきにくそうな映画と思うかもしれないけど、ぐいぐい引き込まれる面白い作りになってるので是非観てください。
おそらくテレビでは放送されないので是非劇場で!
2019年8月25日(日)鑑賞

2位
2人のローマ教皇

監督:フェルナンド・メイレレス
出演:アンソニー・ホプキンス/ジョナサン・プライス

水と油なローマ教皇

今年は約200年ぶりに天皇陛下が生前退位された。
昭和から平成に変わった時はお祝いなどという雰囲気は全く無く国全体で喪に服した一方で、今年の改元はお正月のように明るいムードだったのはすごくよかった。
キリスト教界隈でも同じようなことが少し前に行われていて、2013年にベネディクト16世が辞任し、あらたにフランシスコ教皇が誕生した。
ローマ教皇の生前退位は約600年ぶりとのこと。
こちらも高齢による衰えが表向きの理由だけど、カトリック教会の聖職者による性的虐待などのスキャンダルが重なったことが原因とも言われていて日本の天皇陛下の退位のようにおめでたいムード一色ではなかったみたい。
このベネディクト16世からフランシスコへのバトンタッチを描いた本作品。

基本的には2人のじいさんが喋ってるだけなんだけども実に面白かった。
枢機卿を辞めたいベルゴリオ(後のフランシスコ)とそれを止めるベネディクト16世。
ローマ教皇を辞めたいベネディクト16世とそれを止めるベルゴリオ。
保守派ベネディクト16世と改革派ベルゴリオ。
カトリックであること以外は何から何まで水と油な2人の新旧ローマ教皇。
お前の意見には何一つとして同意できないとまで言い放つ。
それでもお互いをどこかで敬い「我が友よ」とハグをする。
考えが違っていてもお互いを認め合うことはできるんだな。改めてそう教えられた。

ちなみにですが2006年の正月にローマで(正確にはヴァチカンで)ベネディクト16世のスピーチを聞きました。
広場に集まった観衆は大興奮。サッカーのチャント風に「ベーネディクト!!」なんて叫んでる人もいて、まるでロックスターのよう。
科学が進歩するにつれて宗教の存在感が薄くなっている現代において、教皇はイエス・キリストの代理ではなく単なる超有名人になってる印象を受けました。
科学がいくら進歩しても国民の象徴は国民の象徴であり続けられるけど、神様はそういうわけにはいかないようです。
2019年12月14日(土)鑑賞

3位
新聞記者


監督:藤井道人
出演:シム・ウンギョン/松坂桃李/田中哲司

情熱を信念に変えよう

ニュースによれば先日の参議院選挙の投票率は24年ぶりに50%を割って48.8%だったらしい。そういうことを考えるとこの映画で語られた
「この国の民主主義は形だけで良い」
というセリフは残念ながら大げさでもなんでもなく、むしろ真実を突いている。

日本の国民が政治に無関心な理由の一つは政治が醜いから。
しょーもないウソとそのウソに対する追求。
どっちもどっちだ。国民そっちのけ。しょーもない政治を変えてくれそうな候補者もでてこない(僕は今回は出てきたと思ってますが)
そういうことに呆れて国民はどんどん無関心になる。

そんなことじゃいかんと熱くなる人もいて、そういう人が48.8%なわけだけども、その48.8%の人も果たしていつまで政治に関心を持ち続けられるか。
その辺がこの映画を観て実に不安になった。

衝動的な情熱は時が経てば冷めてしまうんだと。
情熱だけに突き動かされるとあっけなくダークサイドに落ちてしまう。情熱は必要条件であるが十分条件ではないんですね。
悲しいけど。いやほんと悲しかったよ。
情熱に冷静な判断や知見を合わせて信念にしないと継続せずブレてしまうよね。
確かにそういうの自分も身に覚えあるもの・・。
だからこそ余計に悲しくなったのかな。

2019年7月27日(土)鑑賞

4位
空の青さを知る人よ


監督:長井龍雪
出演:吉沢亮/吉岡里帆/若山詩音

昔の自分に胸を張れますように

映画は泣ければ良いってもんじゃないのは重々承知していますが、それでもこの映画は泣きすぎて喉が渇くんじゃないかってくらい泣けました。
荒唐無稽でデタラメな設定なのにこんなに共感できたのは、登場人物一人一人の実在感が凄かったから。
まずキャラクターデザインがイイ。
とりわけ主人公のあおいの眉毛。カーラ・デルビーニュかあおいかってくらいのぶっとい眉毛。
こういう意思の強そうな女性って美しい。ナウシカみたいな感じ。古いか。
声優陣も良かった。吉沢亮とか吉岡里穂とか旬な俳優なのに?でしゃばってなくてしっかりそのキャラになりきれてた(上から目線ご容赦を)。
そんな視覚的、聴覚的に素晴らしいキャラたち。
そういうキャラ一人一人がみんな「もがいている感じ」がすごく良かった。全員ガンバレってなった。
主役を引き立てるための脇役ではなく、一人一人がしっかり生きてる感があったな。
ということでキャラクターに魅力を感じた作品でした。

あと、これは自分の備忘のためにも残したいのだけれども、高校生の「しんの」が大人になった自分に対して突きつける
「将来、お前になっても良いかもって思わせてくれ」
って言葉。これ重いですねえ。今僕は40半ばだけど中学、高校時代の自分は今の自分を見てそう思ってくれるだろうか。残念ながらちょっと難しい気がします。でも諦めない。
しんのの言葉を胸に僕も頑張ろー。
2019年10月22日(祝)鑑賞

5位
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド


監督:クエンティン・タランティーノ
出演:レオナルド・ディカプリオ/ブラッド・ピット/マーゴット・ロビー

周知の事実でもネタバレですか?

先日インパルスの「やたらネタバレに厳しい男」をネタにしたコントですごく笑った。twitterでは厳格なネタバレ警備隊をよく見かけるし、はてなブログでもネタバレは禁止になるそうだから、そういう風潮なんでしょうね。
情報社会だからこそいかに情報をシャットダウンするか、流しちゃいけない情報を留めておくか、そういうことが大事になっているのでしょう。

で、この「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」。
鑑賞前に「シャロン・テート事件」を軽くでもいいから調べておけという忠告がtwitterにいくつも流れてきた。忠告に従いウィキってみると妊娠8ヶ月だった女優シャロン・テートはチャールズ・マンソン率いるヒッピー集団に殺害された(もちろんお腹の子供もろとも)んだそうです。
凄惨な事件だけにさらっと調べただけなのにインパクトが強烈でメンタルぐったり。そんな精神状態で映画スタート。
物語が進むにつれ思ったのは、おいおいこれひどいネタバレじゃないか。マーゴット・ロビー演じるシャロン・テートが出てくるたびに、惨殺されるってことが常に頭をよぎってしまう。ネタバレ寛容派を自認していたけどさすがにこれはアカンと憤ったわけです。
・・が、結論からするとネタバレでは無かったのです。むしろやっぱりこれは知っておくべき前提条件でした。
例えば80年代の日本映画シーンを舞台にした「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・太秦撮影所」を北野武が撮るとして、そこに夏目雅子役の女性が登場したら日本人なら誰もが「ああ最後には白血病で亡くなっちゃうんだな」って分かるじゃないですか。
シャロン・テートが殺害されるというのはそういう類の前提条件なんですね。
ということで調べておいてよかったのは間違い無いんだけど、結局なーんか虚しくなりましたね。
・・・この「虚しくなった」という感想すらネタバレだ!って警備隊に怒られそうだけど・・・。
2019年9月1日(日)鑑賞

6位
アス


監督:ジョーダン・ピール
出演:ルピタ・ニョンゴ/ウィンストン・デューク/シャハディ・ライト・ジョセフ/エヴァン・アレックス

いつの日か日本版アスを

ああ、なるほど。
少しズラすと笑いになって、だいぶズラすと恐怖になるんだな。
もちろんやみくもにズラせばただスベるだけだけど、
監督のジョーダン・ピールはコメディアンだから、その段取りはしかと心得ていらっしゃる。
ズラし具合を時々変えて、怖がらせたり笑わせたり。

それならばと、ふと思った。
たけしとか松っちゃんも良質なホラーを作れるんじゃないかなと。
すごく観たいなそれ。
ホラーもお笑いも言葉を深く知っていればいるほど楽しめるはずだから、
やっぱり日本語が一番楽しめると思うんですよね。
特にたけしなんてバイオレンスも得意だから凄いの撮ってくれそうだけどなー。

それはさておきこのアス。
監督の前作ゲット・アウトと比べるとストーリーの納得感は細かった一方で、社会的メッセージは極太に仕上がってました。
UsとOthersを分断するUSの社会が生み出す憎悪。
虐げられたOthersを見て見ぬふりをするUs。
Japaneseの僕は無関係だなんて言わせない迫力。
観終わった後も現実が抱える闇とリンクしてゾクっとしました。
2019年9月7日(土)鑑賞

7位
真実 特別編集版


監督:是枝裕和
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ/ジュリエット・ビノシュ/イーサン・ホーク

日本代表是枝裕和!

カトリーヌ・ドヌーヴ、ジュリエット・ビノシュ、イーサン・ホークという海外の大物俳優が出演、ロケ地はフランスのパリ、フランス人製作陣、そして監督は我らが是枝裕和!というこの映画。
カズがセリエAに、野茂がメジャーリーグに行った時と同じような感覚だなあ。
是枝監督はもちろんお会いしたこともない赤の他人だけども、日本人を代表して頑張ってくれー!って感じ。
奮闘努力の甲斐あって実にいい映画に仕上がってました。パリを舞台に世界的な俳優を起用しているのだけども、それでもなお是枝節は失われない。
僕にとっての是枝節というのは、何気ないながらもほのかにユーモアがある会話、丁寧に描かれた料理あるいは食事、自然な演技の子役。
会話と食事と子供をしっかり描くことで家族の形の輪郭が見えてくるってことかなあ。そうすることで生まれたリアリティでなぜかほっこりするのです。
字幕鑑賞だったけど会話のリズムが良かったなあ。宮本信子と宮崎あおいの吹替版もかなり良さそうだ。字幕よりも情報量多いのだろうし。
それにしてもやっぱり世界に出ても自分の持ち味で勝負して勝った(と僕は思う)のが素晴らしい。
噂されてるハリウッド進出でもこの是枝節で勝負するのでしょうか。あるいは迎合してもっとメリハリつけていくのかな。
いずれにせよ楽しみ。
2019年12月15日(日)鑑賞

8位
ドクター・スリープ


監督:マイク・フラナガン
出演:ユアン・マクレガー/レベッカ・ファーガソン/カイリー・カラン

20年前の自分に観てほしい映画

シャイニングは今から20年以上前、まだ学生だった頃に観た。
ホラー映画の最高峰という評判を聞いて期待してみた割にはたいして面白くなかったという記憶だけが残ってた。
そのシャイニングの続編が公開されると聞いて改めてシャイニングを鑑賞することに。
面白かったら続編を観よう、つまらなかったら観ないってことで。
結果・・むちゃくちゃ面白かった!
学生時代の僕は一体何をどう観てたんだ?ってくらいにこれを面白くないと感じる理由が全く見つからない。
20年の月日はこうも人を変えるのですねえ。
この大傑作の続編ですって?もちろん行くしかないでしょう。
期待をパンパンに膨らませてドクター・スリープを観た結果、自分の好みについてわかったことがあった。
まず、シャイニングやフォースの類の不思議な力は、超人的な能力であると同時に制御困難である神秘性がたまらないのであって、分かりやすいただの便利な能力になっちゃうと冷めるってこと。
空を飛べます、テレパシーできますってそりゃ目の前にそんな人が現れればとんでもなく感激するけど、身も蓋もないこというと所詮映画なんだしさ。設定次第で何でもできちゃうわけなんだし。
シャイニングは能力を使いこなしてるわけじゃなかった。むしろその能力に悩まされることもあった。
ドクター・スリープは能力をフルに駆使して大活躍でしたね。

次に、戦う相手の正体が分からなければ分からないほど不気味でゾクゾクするってこと。
あからさまな悪者が出てきちゃうとホラーっていうよりアクション。ドクタースリープは開始早々に、はいこちらが今回の悪役でございますってなったからなあ・・
正義超人対悪魔超人の話になると、興奮はすれど恐怖はないのよね・・。

ということで、求めていたものとは全然違いました。得体の知れない恐怖。これが欲しかったんだけど・・。でも違う楽しさはあったのかも。
多分20年前の僕ならドクター・スリープに拍手喝采だったことでしょう。
2019年12月1日(日)鑑賞

9位
ジョーカー


監督:トッド・フィリップス
出演:ホアキン・フェニックス/ロバート・デ・ニーロ/ザジー・ビーツ

ジョーカーよ!ナチュラルボーン絶対悪であれ

悪役を意味するヴィランという言葉を知ったのは、去年ヴェノムが公開された頃。
ネイティブの人のニュアンスは知らないけど、日本人がこの言葉を使う時、
単に悪役ということではなく、カッコイイ、クールであるという意味が含まれているように思います。
いわゆるヒーローよりも人気があるキャラも多い。
ジョーカーもそういう類いのヴィランだった。とりわけヒース・レジャーが演じたジョーカーはそんなヴィランそのものでクリスチャン・ベイルのバットマンを完全に食ってた。
頭はキレて、大胆、迷いがなく強い。そしてなぜかカッコイイ。
一見おぞましいルックスなのに、なぜかだんだんかっこよく見えてしまう。これこそヴィラン。

そんなジョーカーの誕生秘話を描いた本作品。演じるのはこれまた演技派俳優のホアキン・フェニックス。
いかにして悪のカリスマジョーカーは誕生したのか。
正直僕はナチュラルボーン絶対悪であってほしかった。あるいは善人だったとしてもアナキン・スカイウォーカーのようなネイティブ特別感がほしかった。
つまり善か悪かはさておき、泣く子も黙る超絶的な力を期待していた。
おお・・さすが未来のジョーカー、おそるべしって。
ところがね。やがてジョーカーとなるアーサー・フレックは悲しみの社会的弱者でした。
格差社会に容赦なく見捨てられた悲しきピエロでした・・。
盗人にも三分の理というけど、理がありすぎた。八分から九分くらいあったんじゃないか。

これからも色々な解釈のジョーカーが描かれるだろうけど、今回のジョーカーの強烈な印象は良くも悪くもヒース・レジャーのそれを塗り替えてしまった。
今後ジョーカーの不気味な笑顔を見ても、恐怖よりも先に「ああ、お気の毒に・・」って同情してしまいそう。
・・んーなんかヤダ。
2019年10月14日(祝)鑑賞

10位
スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け


監督:J・J・エイブラムス
出演:デイジー・リドリー/アダム・ドライバー/ジョン・ボイエガ/オスカー・アイザック

先代ジェダイに免じて

こんなにも自分の気持ちが分からない映画はかつてない。
面白かったのかつまらなかったのか、結末に納得なのか不満なのか・・鑑賞から1週間以上経った今でもよく分からない。
呆れるような後出しジャンケン的な展開があっても、エピソード8の尻拭いに奮闘しているJJエイブラムスを責める気にはなれない。
むしろよくぞここまで戻してくれたというJJのリカバリー力を褒め称えたい。
そう考えると横道にそれまくった8が悔やまれる。本作の冒頭テロップでさらっと衝撃の事実が語られるわけだけど、そのテロップ部分こそがエピソード8で描かれるべきだった。ローズのエピソードとか総カットしてさ。
結局シークエル(エピソード7〜9)は、JJが7で広げた風呂敷をライアン・ジョンソンが8でどっかに吹っ飛ばしてしまったので、9で再びJJが慌てて回収して無理矢理雑に畳んだものになった。
これはJJやライアン・ジョンソンどうこうっていうよりも、シークエルのプロデューサーであるキャスリーン・ケネディの責任なのでしょう。
JJが本作でしたことは軌道修正と不時着でしかなかった。
JJも不本意だったと思う。その証しに1320円もしたパンフレット(あーだこーだ言いながらも限定版を購入しました)に掲載された監督インタビューはほんのわずか。
製作のキャスリーン・ケネディ、ミシェル・レイワン、共同脚本のクリス・テリオよりもはるかに少ない文字量。
インタビューで不満をぶちまけて掲載できるコメントが少ししかなかったんじゃないかな(笑)
こうして冷静に振り返ってみると僕は「スカイウォーカーの夜明け」単体には満足していなかったんだと思う。
でも「スカイウォーカーの夜明け」は1つの映画というより、シークエルの結末であり、スター・ウォーズサーガの終着点でもある。
だから9つのエピソードの想いを背負って、ラストシーンのセリフを噛みしめると
「ああ・・サイコー・・」
となってしまうのです。要するに色々不満がありながらもまあ良しってなってるのは先代のジェダイのおかげなのです。
2019年12月21日(土)鑑賞

11位
ゾンビランド:ダブルタップ


監督:ルーベン・フライシャー
出演:ウディ・ハレルソン/ジェシー・アイゼンバーグ/アビゲイル・ブレスリン/エマ・ストーン

10年を経て蘇るゾンビ映画

10年前に公開された「ゾンビランド」の続編。映画の中でも10年の時が流れたという設定。
当時はほぼ無名だったエマ・ストーンはこの10年でアメイジング・スパイダーマン、ラ・ラ・ランドを経てスターダムにのし上がったのに、こういうおバカ映画の続編にもしっかり出てくれるサービス精神?が嬉しい。
逆にと言うと失礼だけど、「リトル・ミス・サンシャイン」や「私の中のあなた」で当時すでに子役として売れっ子だったアビゲイル・ブレスリンはこの10年はあまり目立った活躍はなく懐かしみな出演。
子役としての「かわいい」は、柴犬やくまもんの「かわいい」みたいなもんで、女性としての「美しい」とは違うから、大人になっても活躍するのは難しいのかもしれない。
芦田愛菜とか安達祐実とか。
下手すると中学生くらいの時点で「老けた」とか言われちゃったりもして。

また映画の中で過ぎた10年もなかなか興味深い。
誰も彼もゾンビだらけの世界で10年をどうにか生き延びてきたわけだ。あの新キャラのおバカギャルなんて一体1人でどうやって生きのびたのか。スピンオフができるくらいのドラマがあるんじゃないか。
ま、もちろんそういう設定に目くじら立てるような映画じゃないです。
笑い飛ばせるゾンビ・コメディ(エマ・ストーン曰くゾメディ)でした。

それにしてもアビゲイル・ブレスリン・・本当に可愛かったのになあ。まあ・・みなまで言うまい。
2019年11月23日(土)鑑賞

12位
天気の子


監督:新海誠
出演:醍醐虎汰朗/森七菜/小栗旬

君の名は。の自己ベスト更新なるか

中学の時ちょっとだけ足が速くて、学校対抗の陸上大会の選手に選ばれた。渋谷区の中学校だったのでなんと会場は国立競技場。
学校でもギリギリ選手に選ばれるかどうかの速さだったので本番は見事ビリ。全校生徒が応援する中、国立競技場でビリになったのは思春期まっさかりの僕にはなかなかのショッキングな出来事でした。
ビリだったのもショックだったけど、何よりもショックだったのは自己ベストすら出せなかったこと。国立のトラックは走りやすいから自己ベストが出るよと言われてたけどダメでした。
それ以来、オリンピックとか世界陸上の本番で自己ベストを更新する人ってすごいなあと尊敬するようになりました。
中学の僕なんて比較にもならないくらい毎日毎日0.01秒のギリギリの努力をしていて、それまでの記録だって自分を出し切った記録のはずなのに、本番でそれを超えてしまう精神力。思春期に傷を負って以来そういう人に憧れるようになりました。

と、まあ映画と全然関係ないことを長々と書いたけど、新海誠監督にとって「君の名は。」は間違いなくぶっちぎりの自己ベストだったはず。細田守に大差をつける、あるいは宮崎駿に肉薄する自己ベストを「君の名は。」で記録した。
そんな自己ベストを記録した新海誠監督が挑んだ新作がこの「天気の子」。
僕は「君の名は。」が大好きなので、正直これを超えるのは難しいだろう、でもそれに近いものを見せてくれれば十分満足できるという思いで観に行きました。
結果、僕としては「記録更新ならず」としたい。
メッセージはすごくいい。でもひねりが足りなくないか?
「君の名は。」の時の「ああそういうことだったのか!」感を求めすぎなのかな。
もちろんあくまで僕の感想であって、巷では「新海誠は作家性を貫いて突き抜けた」と自己ベスト更新と見る人も多いようです。
みなさんはいかがでしたか?
2019年7月20日(土)鑑賞

13位
アイネクライネナハトムジーク


監督:今泉力哉
出演:三浦春馬/多部未華子/貫地谷しほり

日本のスティーブン・キング!?伊坂幸太郎原作作品

期待の遥か上をいった「愛がなんだ」の今泉力哉監督作品。
しかも原作伊坂幸太郎、音楽斉藤和義、ヒロイン多部未華子と大好物全員集合映画ってことで、スキップに鼻歌で映画館に向かった。
見事な伏線回収が特徴の伊坂幸太郎作品は映画とも相性が良いらしく映画化された作品多数。
どの映画も伊坂幸太郎らしさが漂います。
初の恋愛小説の本作でもそれは変わらない。

伏線回収というのは回収の爽快さがたまらんのだけども、後に残るものは案外少ない。
作っている時は楽しいのに、出来上がって見えた絵はたいして響かないパズルみたいなもんだ。
それでもたくさんの点と点が繋がって一本の糸になっていく物語は大好きだし、今泉監督作品だしってことでかなりこちらから迎えに行ったと思います。
よし思いっきり楽しもう。なんならうるうるきちゃいましょうって。
なので作中で何度も繰り返される
「あの時、あの場所で出会ったのが君で本当に良かった」
というメッセージはなるほどなるほど良いこと言うなあ。そういえば僕もあの場所で出会ったのが妻で良かったよなあってじーん・・・。

いや、じーんとしたかに思えたけど、
あれ?でもなんかそれって当たり前じゃない?
ってすぐに冷めてしまった。
良くも悪くもパズル風味の伊坂幸太郎原作作品であり、今泉力哉監督作品らしさをあまり感じなかったのは残念。
2019年10月6日(日)鑑賞

14位
HELLO WORLD


監督:伊藤智彦
出演:北村匠海/松坂桃李/浜辺美波

こんにちはセカイ

Twitterで天気の子のレビューを見ていると「いかにも新海誠作品って感じのセカイ系アニメ」という意見が多くて、初めて「セカイ系」なる言葉を知った。
その時は自分のセカイ観を全面に押し出してる作品ってこかなと思ったんだけれども、HELLO WORLDも典型的なセカイ系アニメだということでその意味がぼんやりわかってきた。
普段は世界の片隅で生きているような地味目の子の恋がセカイをひっくり返しちゃう、みたいなことだと解釈してます。
パンフレットによればセカイ系という概念は別に目新しいものでもなく、2003年頃に流行して新海誠の君の名は。あたりから2周目に入ったらしい。
いっちょここらで乗っかたもんを作ってみますか、ってノリで作ったのでしょう。なんせタイトルからして、「こんにちはセカイ」だし。
そういう売れ線狙いらしい薄っぺらさを感じちゃったかなあ。どこかで観たようなシーンや聞いたようなセリフの寄せ集めというか。
ということでこのセカイはどうにも居心地が悪かったです。
居心地の悪さは標準語のセリフのせいもある。他の京都映画でも思うことが多いけど京都が舞台なら京都弁で話そうよ。
東京で育って京都に移住した僕としては、標準語の京都はすごく居心地の悪いセカイなのよね。
ネイティブ京都の人はどう感じるんだろう・・・
2019年10月5日(土)鑑賞

15位
IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。


監督:アンディ・ムスキエティ
出演:ジェームズ・マカヴォイ/ジェシカ・チャステイン/ビル・ヘイダー

27年の成長の証

前作CHAPTER 1は全くハマらなかったので、ラストシーンで続編があるとわかった時もこれはさすがに観ないだろう・・って思ってたけど、なんとあの出演作にハズレ無しとの呼び声が高いジェシカ・チャステインがCHAPTER2のヒロインだというじゃないですか。
金ローで直前復習をしてあれ思いの外面白いじゃないか、ジェシカ・チャステインの法則で続編は傑作かもという淡い期待を抱いて映画館へ。

結果。やっぱりどうにも僕にはダメでした。
27年後の世界ですっかり大人になったルーザーズが、27年越しのリベンジを目論むペニーワイズと対決するわけだけども・・・

どっちもちっとも成長してねえ!!
ルーザーズどもは見た目がオッサン、オバハン(チャスティンさんごめんなさい)になっただけで、中身は子供時代から一歩も成長してない。
なんで27年前と同じレベル感の(あるいはそれよりもひどい)戦いを挑むんだ。
翻ってペニーワイズ。この食人ピエロも全く成長してない。27年間温めてきたお前の恨みつらみはそんなもんか。
いやいやあんた、こんなガキどもに泣かされちまうのか!
27年間じっとこの時を待ってたんだろ!ガンバレよ!
正直クライマックスでは、僕は同情にも似た声援をペニーワイズに送ってました。悪役が同情されちゃあおしまいよ。

あとですねえ。これはこの映画に限らずだけども、一番良いシーンを予告編に使うの止めてもらえませんか。
そりゃあ集客しなきゃいかんのはわかるけども・・
結局予告編のジェシカ・チャステインのシーンが一番ゾクゾクなシーンだったじゃないか・・。
2019年11月10日(日)鑑賞

16位
男はつらいよ お帰り 寅さん

監督:山田洋次
出演:渥美清/吉岡秀隆/後藤久美子/倍賞千恵子

サウナと水風呂

シリーズ49作全て観てるのに、劇場で観るのは初めてでした。
初めて劇場で観る男はつらいよは実に奇妙な映画だった。
サウナと水風呂を行ったり来たりしてる感じ。
今は亡き渥美清の回想パートで号泣するのに、吉岡秀隆と後藤久美子の続編パートになると温まった気持ちが急速に冷めて涙も綺麗に乾く。
終始この温かい、冷たいの繰り返し。
この映画を採点するなら、全ての加点は回想パートにあり、全ての減点は続編パートにあった。

空回りの善意、昭和なセリフ回し、臭い芝居。
そういったものが「男はつらいよ」の世界のリアリティを作り上げていたわけで、続編パートも確かにそうなんだけどなぜか全然違う。
寅さんがいるといないとでこうも違うのか。

良いところと酷いところがたくさんあって、満足なのか不満なのか自分でもよく分からないのは先週観た「スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け」と全く同じ。
レガシー作品の続編というのは洋の東西を問わずこうなるんだろうか。
2019年12月28日(土)鑑賞

17位
ホット・サマー・ナイツ


監督:イライジャ・バイナム
出演:ティモシー・シャラメ/アレックス・ロー/マイカ・モンロー

あの時代、あの歌

レディ・バード以来に観たティモシー・シャラメは相変わらず優男で危険な香りがした。
長いまつ毛とくっきり二重のあのとろんとした瞳に見つめられると、男の僕でも虜になってしまいそう。
超絶美しいのと同時にどこか不健全さも秘めてる。

そんなミスター優男がにわかドラッグディーラーを演じた本作は、91年のアメリカ東海岸の海辺の町を舞台にした青春グラフィティ。
91年に日本の高校生だった僕は、ターミネーター2やスト2を懐かしむ一方で、
ずいぶん古くさくもあり、そうか僕の青春時代はもう30年近く前のことなんだなとしみじみおじさんになったことを実感してしまった。

それにしてもだ。
アメリカと日本の違いはあれど、91年とはこんなにも古い過去なのか?
まるで60年代、70年代のよう・・とい感じたのはあながち間違いじゃなかった。
流れてくる音楽が60〜80年代の曲が多いの。
音楽は青春時代の重要要素。音楽を聴けば青春時代が蘇る。
部活の時も、友達とはしゃいでる時も、恋人といちゃついた時も脳内で音楽がかかってたからね。

監督のイライジャ・バイナム曰く
「時代的に正しい音楽よりも、感情的にしっくりくる音楽を選んだ」
のだそうな。
監督は87年生まれで91年当時は4歳だった。
4歳だった時代は「ずいぶん昔」でしかない。正直僕も60年代と70年代は一緒くた。それより前は大昔。
87年生まれのイライジャ・バイナムにとって、感情的にしっくりくる91年の音楽はこういう曲だったということですな。
本音を言うとちょっと悲しいけど時代が流れるというのはそういうこと。
そんな若い監督が91年を選んだのはなぜなんだろう。
91年は日本ではバブルがはじけた年だけど、実はアメリカでも節目になった年なんだろうか。
2019年8月16日(金)鑑賞

18位
アド・アストラ


監督:ジェームズ・グレイ
出演:ブラッド・ピット/トミー・リー・ジョーンズ/ドナルド・サザーランド

看板に偽りあり

「宇宙に消えた父の謎を解かなければ人類は滅びる」
「太陽系の彼方で消息を絶った父。だが、父は生きていた・・人類を滅ぼす脅威として。」
宣伝チラシのこのコピーで俄然期待は高まった。
その設定やよし!めちゃくちゃ面白そうだ。
なぜ父親は人類を滅ぼす脅威となったのか、はるか太陽系の彼方から影響を与える大きな脅威とはなんなのか。父親の目的は何か。
高鳴る胸を抑えつつ、人類の脅威となった父親の謎を解き明かすべくMOVIXへ。
だがしかし。期待は完全に裏切られた。いやどうやら僕の期待の方向が間違っていたようだ。

ミディアムレアの最高級ステーキを出すステーキハウスに入ったはずなのに、江戸前寿司を出されたような感覚だ。
この中トロは確かに美味しいのかもしれないが・・
これは・・
魚じゃないか・・
生じゃないか・・
そんな気分だ。

宇宙の神秘だとか父親の謎だとかそういう贅沢な牛肉感は全くなく、
旅を通じて自分探しをする極めてヘルシー和食な映画でした。
僕の口は完全に牛肉を食らうモードに入っていたのでこの寿司が美味しかったのかどうか判別ができない。
少なくとも看板には偽りがあったと思う。
「アメリカンステーキ ザ・テキサス」という看板を掲げた江戸前寿司ムービーでした。
2019年9月29日(日)鑑賞

19位
さらば愛しきアウトロー


監督:デヴィッド・ロウリー
出演:ロバート・レッドフォード/ケイシー・アフレック/シシー・スペイセク

レジェンドプレイヤーの引退試合

ロバート・レッドフォード御大が俳優を引退されると聞いて馳せ参じてきました。
その最後の出演作品は実在した非暴力でセクシーな強盗を描いた映画、ということでなかなか僕の好物っぽい。
だけども・・93分という短めの尺であることに加えて恋愛エピソードも盛り込んであり、強盗の部分が圧倒的に足りない。
非暴力でセクシーな印象だけが頭に残った。

でも、ああそうかと腑に落ちた。
これは引退試合なんだった。
サッカーのレジェンドプレイヤーの引退試合を何度か観に行ったことがある。味方チームも相手チームも忖度して、引退する選手にゴールを決めさせて花を持たせる試合。
観客もそれを八百長だなどと鼻息を荒くすることはなく、思い出を振り返っておつかれさまでしたと拍手喝采する。
この映画はそういう類の映画だった。
だがしかし。なぜか僕はおつかれさまでしたと労をねぎらう感覚にならなかった。

パンフレットにあったロバート・レッドフォードのフィルモグラフィーがその理由を教えてくれた。
ロバート・レッドフォード。もちろんその名前はよく存じておりますがその出演作の内、僕は大統領の陰謀の1作品しか観てなかったのです。
だから本作は過去作品のオマージュシーンが満載だったようだけど、完全に初見なので気づける由もなし。
勝手によく知った俳優だと思ってたけどなんの思い入れもなかったのね。

そういえば似たようなことが最近あった。今年の春のイチロー引退。
イチローが引退すると聞いて寂しくなったけど、よくよく考えるとイチローの試合って1試合も通しで観たことなかったなって。

2019年7月14日(日)鑑賞

20位
世界の涯ての鼓動


監督:ヴィム・ヴェンダース
出演:ジェームズ・マカヴォイ/アリシア・ヴィキャンデル/アレクサンダー・シディグ

愛が強いほど人は弱くなるのか

守りに入ったとか、丸くなったと言われるのは「老けた」と言われるのとほぼ同意義だと思う。
中年になるとたいていの人はそうなる。
何故そうなるのかなんて考えたこともなかったけど、この映画にその答えがあった。
それは自分以外の誰かを愛することを知ったからなんじゃないかな。
守る人ができたから守りに入るし、亀のように硬い甲羅を背負って丸くなるのでしょう。
自分一人なら無茶できるけど、配偶者や子供のことも考えると安パイを切っていくしかない。

そのディフェンシブ加齢臭をこの映画の二人に感じてしまった。
遠く離れても強い愛で結ばれているいうことなんだろうけど、僕はその強すぎる愛がテロリストとの戦いや前人未到の深海への挑戦に迷いを生じさせていたような気がした。
愛がお互いを結ぶ絆を強くした一方で、一人の人間としては弱くなってしまった。だからこそお互い寄り添わなければいけないような・・・。
守りに入ることは悪いことばかりではないけど、愛が人をブレさせるのはなんだかネガティブだなあ。

最後の最後まで科学+ファンタジーものを期待してしまっていたので、ネガに感じたのかも。
2019年8月15日(木)鑑賞


最後まで見てくださりありがとうございます。
いかがでしたでしょうか?1位の主戦場はブルーレイ化するのは難しそうですねえ・・。多くの日本人に観ていただきたい映画でしたが・・・。
年末には男はつらいよとスター・ウォーズという日米のレジェンド作品の続編(完結編)も公開されましたが、残念ながらどちらも大満足って内容ではなかったです。
ではでは、2020年もCHANNELCINEMA.COMをよろしくお願いします!

コメントを残す