2020年下半期 映画ランキングベスト30!

CHANNELCINEMA.COM管理人の私が観た映画のランキングを発表しています。2020年下半期の映画ランキングです。2020年上期に公開延期が続いたせいか下期は豊作でした!このランキングを参考にして一人でも多くの方に映画館に足を運んでいただけると嬉しいです。
みなさんも良かった!という作品があれば、CHANNELCINEMA.COMでその作品に投票して感想を書いていただければ幸いです。それでは、2020年下半期の映画ランキングをどうぞ!


1位
スペシャルズ! ~政府が潰そうとした自閉症ケア施設を守った男たちの実話~

監督:エリック・トレダノ/オリヴィエ・ナカシュ
出演:ヴァンサン・カッセル/レダ・カテブ/ブライアン・ミヤルンダマ

心と信念を支える愛の物語

終始慈愛に満ちた2時間だった。
民主主義の名の下に多数決の仕組みを採用したのなら、少数派の声に耳を傾けるべきだし、
資本主義という勝ち負けの仕組みを採用したなら、敗者に救いの手を差し伸べるべき。
取捨選択や競争も大切だろうけど、そろそろ二極化の進行に歯止めをかけて、底上げの仕組みを導入できないものか。

障がいを抱えた子供の親が、自分が亡くなった後が心配だから一緒に死のうと憂うのではなく、例え自分が亡くなっても社会がこの子の面倒をみてくれると安心できる仕組み。
まあ・・簡単じゃないですね。
だから今の社会はこの映画の主人公たちのような聖人レベルの善意に頼るしかないのかもしれない。
そういう属人対応(しかも聖人レベルの善人が必要)だと限界があるから仕組みを構築するのが理想だけど、世界中のすべての人がこの主人公たちの何分の一かの善意を持つだけでも素晴らしい世の中になると思います。

人にやさしく。
とりわけ助けを必要とする人にやさしく。
まずは自分がそうありたい。
とてつもなく力強く優しい愛の映画でした。
2020年9月13日(日)鑑賞


2位
東京裁判

監督:小林正樹
出演:佐藤慶/ウィリアム・ウェッブ/ジョセフ・キーナン/東條英機

常に今こそ見るべき映画

「2時間も集中するなんて無理だから上映中にスマホを見るのは仕方ない」
という現代の若者の映画鑑賞スタイルについては、 2時間くらい集中しなさいよとやや呆れたわけですが、さすがに上映時間4時間37分ともなると僕も集中できるか自信がなく本作品の鑑賞をためらってました。
しかし終戦から75周年の終戦記念日の今日、腹を決めて鑑賞してきました。
実に見応えのある素晴らしいドキュメンタリーでした。
たくさん考えさせられたのでセンシティブなことを含めて色々思いを書きますが、僕と異なる考えを否定したり説得しようという意図は全くないのであくまで個人の一意見ということでご了承ください。

まず我々人類は根本を見直さなければならない。
そもそも「戦争」そのものが悪なんだ。
正しい戦争、ルールに則った戦争なんかない。 戦争について有罪か無罪かを裁くことが間違ってる。
「戦争は国際法が定められているのだから、犯罪ではなく合法的な殺人だ」
とするアメリカ人弁護士のブレイクニーの主張は、そもそも戦争は悪であるということを逆説的に訴えている。
「真珠湾攻撃が悪なら、広島への原爆投下も悪ではないか!」
と強い口調で主張する姿は
「広島への罪が裁かれないなら日本の政治家、軍人も無罪である」
と弁護士として無実を訴えたものではあるが、一般人の僕には
「真珠湾攻撃も罪であるし、原爆投下も罪である」
と日本も有罪だし、戦勝国も有罪だと叫んでいるように聞こえた。
日本の被告全員の無罪を主張したインドのパル判事の真意もそこにあるように思う。

この裁判のもう一つの瑕疵性は天皇の責任。ウェッブ裁判長が天皇の戦争責任を追及したがっていたのは まがりなりにも裁判に正当性を持たせようとする裁判の責任者の姿勢としては正しいと思う。
日本の戦争は天皇の名の下に行われた。
天皇の名を借りて軍部が勝手に戦争を進めて、天皇はしぶしぶ承諾したのだとしても、 裁判のテイをとるのであれば法廷でそれが証明され無実となるべきだと思う。
起訴すらされないのは検察のあり方を疑問視せざるを得ない。
戦後の日本をコントロールしやすくするためだったとされているアメリカの真意は分からない。
それでも多くの日本人は天皇に責任が及ばなくて良かったと喜んでいるのではないか。僕が天皇の戦争責任を追及すべきだと考えていると思われそうだけど、 僕もそう思ってる。理屈でないところで天皇陛下が有罪にならなくて良かったと思ってる。
戦後何十年も経って生まれた僕ですらそう思うのだから、当時の日本人特に軍人はなおさらでしょう。
キーナン判事がわざわざ天皇に責任が及ばないように証言を誘導しようとしているのに、 天皇陛下を敬うがあまり東條英機が失言してしまうあたりは、 滑稽であると同時に骨の髄まで天皇を崇拝していることが伺えた。
マッカーサーが天皇陛下の人格に感銘を受けて責任追及を避けようとしたのが本当だとして、厳しく他の被告を追及したキーナン判事ですらその意向にしたがって責任回避を誘導したり、東條英機は敬うがあまり「天皇陛下の意向に逆らうことなどありえない」と失言してしまったり、 あるいは現代を生きる僕ですら天皇陛下に責任が及ばなくて良かったとホッとしている。

これほどまでの影響を与える天皇陛下とは何か・・そうも考えさせられました。 戦後の人間宣言によりその神格性を否定されたけれども、日本人にとって特別な存在であり続けているのは間違いない。
(そういう点においても「象徴」という位置づけは適切な気がします)
しかしながら、裁判という点においてはやはり起訴すらされないのはおかしい。 そもそもの存在が悪である「戦争」について同じ悪事を犯した戦勝国が裁くという点と、天皇が起訴すらされなかったという点において東京裁判は裁判ではなく、 戦勝国の報復に過ぎなかった。そして7名の絞首刑という判決は法の執行ではなく殺人だった。もう少し柔らかく表現するのであれば戦争であった。
東京裁判は戦争の一部。戦争は絶対悪であるから東京裁判も悪の一部だったと思う。

誤解のないように改めて書きますが、有罪となった日本の被告が過ちを犯していないと言いたいわけではないです。東條英機は過ちを犯した。同時にルーズベルトもチャーチルもスターリンも過ちを犯した。
本当に残酷なことだけど戦争に行って戦った人も被害者でありながら加害者でもあった。為政者も兵士もその当時そうするしかなかった、一人で声を上げても世界の流れは変えられなかった。
その通りだと思う。だから過去の過ちを責めても仕方ない。これからの未来において同じ過ちを起こさないことが大切。第二次世界大戦がそうであったように、悪い方向に傾いた世界の流れは簡単には変えられない。
だからこそ予兆を感じ取って細やかな軌道修正が必要だ。

−戦争反対−
青臭くても、当たり前のことでも、何度でも言いたい。
4時間37分は確かにあっという間ではなかった。でももっともっと知りたい、まだまだ観ていたいという気持ちになった素晴らしい映画でした。 終戦記念日の今日にふさわしい!って意気込んで観たけど、これは終戦記念日とは関係なくいつでも観るべき映画。
パンフレットの小笠原清さんの言葉を借りれば常に「今こそ見るべき映画」でした。
8月15日でなくても夏でなくても機会があれば是非観てください。
2020年8月15日(土)鑑賞


3位
ストックホルム・ケース

監督:ロバート・バドロー
出演:イーサン・ホーク/マーク・ストロング/ノオミ・ラパス

人質みんなで愛しき犯人を助けよう!

探偵ナイトスクープで「なまはげ」に憧れる男の子の回があった。
番組が用意した本場のなまはげが男の子の家を訪れると、男の子はなまはげの味方であることを示したかったのか大声で
「大好き!大好き!(僕は)良い子!良い子!」
となまはげに全力でアピールした。
そして憧れだったはずのなまはげが家に来てくれたというのに、しばらくすると「怖いからもう帰ってほしい」となってしまった男の子。
「怖い」ということは、なまはげを正義キャラと捉えているわけではないのでしょう。
ダースベイダーのような悪いキャラだがどういうわけか惹かれてしまうというところかと。
ところがなまはげは自分のことをどう思っているかはわからない。
もしかしたらあの大きい出刃包丁でめった刺しにされてしまうかもしれない。
そんな不安が
「私はあなたの敵(悪い子)ではありません。尊敬しています。」
という猛アピールにつながったのだろうと思う。

この映画の事件が語源となったストックホルム症候群というのは人質が犯人に連体感や好感を抱いてしまうという奇妙な心理現象を言うのだそうだ。
ある種の吊り橋効果なんだろうと思う。
殺されるかもしれない緊張感、自身の生殺与奪の権を他人が握っている(by 冨岡義勇)時、なまはげに対峙した男の子のように抵抗する意思がないことを犯人に必死に示すうちに、自身の思考や感情が混乱して「好き」という感情にすり替わってしまうのではないか。
犯人が時折見せる優しさにコロっとしてしまうのは、不良がちょっと良い行いをしたり更正しただけで「凄くイイヤツ」に見えてしまうのと同じでしょう。
そこに輪をかけて犯人(イーサン・ホーク)のどこか憎めないおバカっぷりが「助けてあげたい」という母性をくすぐったのかな。
難解な脱出ゲームに自分も挑戦しているかのような錯覚もあったのかもしれない。
フツーの人は一生味合うことのない特別な気持ちをごちゃ混ぜにした時に人はどんな行動をとるのか。
開始2分でいきなりクライマックスに突入して、そのまま90分駆け抜ける勢いのある映画です。
スリルと笑いがたっぷりでかなり楽しかったー!
2020年11月8日(日)鑑賞


4位
破壊の日

監督:豊田利晃
出演:渋川清彦/マヒトゥ・ザ・ピーポー/松田龍平/窪塚洋介

2020年7月24日はスポーツの日改め破壊の日

コロナの自粛期間が続き映画業界も大きな打撃を受けた2020年の春。
「映画に救われたやつだけが映画を救う。」
と銘打ったクラウドファンディングが行われた。
豊田利晃監督作品「破壊の日」という映画のクラウドファンディング。
内容は不明だが、公開日だけは2020年7月24日と決まってる。
テーマ曲「日本列島やり直し音頭二〇二〇」はTHA BLUE HERBのILL-BOSTINOが歌詞を書いた。
僕は映画に救われたというほど映画から影響を受けたわけじゃないかもしれないけど、豊田利晃監督作品の「青い春」やTHA BLUE HERBは大好きだし、コロナに立ち向かいこの時期に製作し、東京オリンピックの開催予定日だった7月24日に公開するという気概にパンクを感じる。

20年もCHANNELCINEMA.COMを運営してるんだから映画に救われてるといえば救われてるし、少なくとも救えるものなら映画を救いたいという思いはある。 ということでクラウドファンディングに参加しました。
自分のお金を投じたことで当事者意識が芽生え、
毎日届く製作日誌メールでその当事者意識がぐんぐん高まり、
「ほぼ俺の映画」になっていく。
監督からのメッセージが届き「可能なら是非7月24日に観て欲しい」とあった。 なにしろそこを目指した映画だ。
その訴えに僕が応えないで誰が応えるというのか(なんせこれは俺の映画だ)。 京都では急遽出町座とみなみ会館が24日の夜に上映することを決めた。
監督からの挨拶状によると24日の公開は東京、大阪、宮城、京都のみ。しかも京都だけ2館も上映がある。
さすが反骨の街京都。京都人じゃないけど誇らしい。
23日、出町座に電話して予約。YouTubeで前夜祭の模様をがっつり観てテンションを上げる。
24日朝、朝一で出町座に赴き席を指定。パンフを買って一旦帰宅。パンフは開けてびっくり。文字がぎっしり。21万字。
毎日メールで届いていた製作日誌をまとめたものでした。こいつぁ尋常じゃない映画に仕上がってるのは間違いない。
24日夜、再び出町座へ。時間までコーヒーを飲んで待つ。とてつもないことが始まる予感で興奮してる。
当日昼に東京で収録された関西向けのメッセージが流れて本編上映。
監督が劇場のサブウーハーを心配したほどに凄まじい重低音。
ただならぬ不穏な気配、激しい怒り、切実な祈り。
イイ映画とか感動したとかそういう言葉は全くふさわしくない。
全てを理解できたとは到底言えない。でも何かとてつもないことを体験した。 2020年7月24日は本来であれば東京オリンピックが始まるスポーツの日になるはずだった。
コロナが全てを変えた。スポーツの日は破壊の日となった。
社会は変わってしまった。僕たちがこのままでいいわけがない。
そうだ!変われ!!
2020年7月24日(祝)鑑賞


5位
ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー

監督:オリヴィア・ワイルド
出演:ケイトリン・デヴァー/ビーニー・フェルドスタイン/ビリー・ロード

ネイティブD&I世代が作る理想郷

Diversity&Inclusionという言葉が聞かれるようになって数年経つ。
多様性を認め、その多様性を生かす社会。
大人になってからこの考え方を知った我々大人は、
「それが正しいこと、そうあらねばならない」
と、やや説教臭い義務感を伴った目指すべきゴールとして捉えている。
でも生まれた時からDiversity&Inclusionが当たり前のものとしてあるネイティブD&I世代はもっと違うステージにいるのかもしれないな。
みんな違ってて当たり前だよね。
それぞれが得意な事をすれば良いよね。
って。

この映画で描かれている高校はそんなネイディブD&Iたちが作る理想郷。
いわゆるイケてる組とガリ勉組といったある種のスクールカースト的なものは存在するものの、イケてる組もガリ勉組を受け入れるし、ガリ勉組だって他者と違うことに引け目を感じる事なく堂々と自己表現ができる。
これこそネイティブD&Iなんだろう。
現代のアメリカの高校生がここまでの理想郷にいるのかわからないけど、様々な人種の生徒がいるという点において日本よりは遥かに多様性を認める雰囲気なんだろう。
とりわけ多種多様な民族、人種が暮らす西海岸はそうなんじゃないかな。

スクールカーストのどの序列に属していた人でも受け入れてくれる素晴らしい映画でした。
2020年8月23日(日)鑑賞


6位
mid90s

監督:ジョナ・ヒル
出演:サニー・スリッチ/ナケル・スミス/ルーカス・ヘッジズ

最後のネット無き青春時代

90年代半ば。
僕もちょうどこの頃に青春してました。
インターネット到来前夜。
「イケてる」音楽やファッションの情報源は友達だったり、雑誌(しかも月刊誌)だった。
今よりも情報が伝わるのが遅く、量は限られていたけど、それだけに貴重でありがたみがあった。
音楽だってYouTubeやサブスクで聞き流すなんて文化はまだなくて、CDやレコードを買って聴いてた。それだとたくさん聴けないから友達と貸し借りして。
1つのアルバムを何度も何度も繰り返し聴いて。
90年代半ばというのはそういうウェットな時代の終焉期でした。
そうして必死に情報を集めて「イケてる」キッズを目指したのです。
いわゆる「悪そなヤツ」に憧れて、スケボーなり、バンドなり、夜のクラブ活動なりに精を出す。
だけど大抵の少年は「イケてる」ってことに憧れてるだけで、心の底からストリートカルチャーを愛しているわけじゃないから、テキトーなところで脱落していきます。丘サーファーなんて言葉も生まれました。
ま、僕もそういうクチでしたね。周りは「悪そなヤツ」を超えてホンモノになっていく一方で、僕はフツーに大学を出て、フツーに就職しました。
カッコに憧れるのではなく、本当に自分が好きなものは何かということを90年代半ばにしっかり探せば良かったかなとこの映画を観てちょっとしょっぱくなりました。
日本とアメリカ西海岸との違いはあるけど、空気感は凄く懐かしい匂いがした。
2020年9月6日(日)鑑賞


7位
私をくいとめて

監督:大九明子
出演:のん/林遣都/橋本愛

のん&橋本愛の最強コンビ再び

セルフパートナーと言う概念をエマ・ワトソン(ハリーポッターのハーマイオニーを演じた女優さん)が提唱しているそうです。
自分自身が恋人でありシングルでも十分幸せ!という状態のようです。
のんが演じるこの映画の主人公みつ子もそれに近くて、脳内に(能年の脳内というしょうもないフレーズが浮かんでしまった・・)Aという相談役を住まわせておひとり様ライフを満喫している。

僕も昔は寂しがり屋で友達といないとつまらない!っていうタイプだったけど東京から友達のいない京都に引っ越してひとりで遊ぶということに随分慣れた。
(土日のどちらかは奥さんが仕事なので一人で遊んでます)
でもエマ・ワトソンやみつ子と違うのは自分自身を恋人として客観視したり、もう一人の自分を作り出したりしてバーチャル恋人やバーチャル相談役を作り出してないってこと。
あくまで自分は主観で一人です。恋人の自分といちゃいちゃしないし別人格の自分に相談もしない。一人で決めて一人で楽しみます。
そう書くとなんかちょっと寂しい人だなって心配されるかもしれないけど、それが楽しいのです。別人格の自分にすら邪魔されない自分一人の世界。平穏で最高です。
それを教えてくれたのは蛭子能収先生の「ひとりぼっちを笑うな」という本です。
これはすごいです。正直僕はこの領域にはたどり着けてないけども、少なくとも「あ、全然一人でいいじゃん。友達といないと寂しいって勝手な思い込みだったな。」と気づかせてくれた一冊でした。
ま、蛭子さんも私も結婚していて基本的には一人じゃなくて、時々おひとり様を楽しむ感じだからそう言ってられるのかもしれないけど。
ちなみにこの映画を観た後、僕も脳内友人を作り出そうとしてみたけどダメでした。

あ、全く話は変わりますが、見出しに書いたのん橋本愛の共演もぐっと来ました。「あまちゃん」も「私をくいとめて」ものんが主役だったけど、いつか橋本愛が主役でのんが脇を固める共演も観てみたいな。

それにしても海のシーン最高だったなあ。
中村倫也じゃないんかい!」
って誰もが突っ込んだはず。
2020年12月27(日)鑑賞


8位
君が世界のはじまり

監督:ふくだももこ
出演:松本穂香/中田青渚/金子大地

30年経っても色褪せない青春の一曲

僕がブルーハーツを知ったのは1989年のドラマ「はいすくーる落書」の主題歌のTRAIN-TRAINでした。
中学生だった僕はそれこそハンマーが打ち下ろされた感覚で、友達から1st、2ndアルバムのCDを借りてさらに衝撃を受けた。ブルーハーツに救われたとまではいかないけど、意味もなくイライラしたり、妙に傷つきやすかった青春の支えだったのは間違いない。
パンクというのは基本的に特定のくすぶってる若者にのみ響く音楽であり、大衆に受け入れられるものではないはずなのにブルーハーツは大衆にも受け入れられた。
思春期の僕は長渕ファンを名乗るのはちょっと恥ずかしかったけど、ブルーハーツは明るく爽やかに好きって公言できた。

あれから30年。
30年も経つというのに日本の青春ソングといえば未だにブルーハーツだ。
米津玄師やRADWINPSがどんなに流行ろうともブルーハーツは超えられない。音楽の良し悪しじゃなくて、本当の声を聞かせてくれる具合が全然違うもの。
おっさんになった今でも時々聴いて元気をもらっているわけなので、
「退屈な街で、一方通行の想いを抱え込む、高校生たち。 ブルーハーツの歌声で、やっと息ができた。」
などというキャッチコピーを聞かされた日には観ないわけにいかないじゃないですか。
ブルーハーツをダシに使うなんてズルいよ・・とどこかで少しなじりながらも映画館へ。
いやー実によかったです。
なんかこうどこがどう良かったのかよくわからない感じが青春をしっかり表現してたんだと思う。
「人にやさしく」もすげー良かった。
女の子も叫べてしまうのがブルーハーツの良い意味でのキャッチーさ。
本質はなんら損なうことなく女の子にも歌えてしまうパンク。

ただこれが今の高校生にも刺さるのかは不明。
現にパンフレットで出演者に「青春の一曲」を尋ねているんだけどブルーハーツを挙げた人はゼロ。
ま、ここはブルーハーツにしておかなきゃみたいな妙な忖度しないのがまっすぐで良いけどね。
参考まで各出演者の「青春の一曲」は以下のとおり。
松本穂香:KANA-BOON「ないものねだり」
中田青渚:MONGOL800「小さな恋のうた」
片山友希:YUKI「愛に生きて」
金子大地:Mr.Children「終わりなき旅」
甲斐翔馬:EXILE「運命のヒト」
小室ぺい:Sonic Youth「Dirty Boots」
2020年8月9日(日)鑑賞


9位
パピチャ 未来へのランウェイ

監督:ムニア・メドゥール
出演:リナ・クードリ/シリン・ブティラ/アミラ・イルダ・ドゥアウダ

アルジェリア版ファイト!

「ガキのくせにと頬を打たれ少年たちの眼が年をとる
悔しさを握りしめ過ぎたこぶしの中、爪が突き刺さる」
中島みゆきの名曲「ファイト!」の一節です。理不尽な大人(社会)の抑圧にぐっと堪えて今に見てろよという怒りがフツフツと煮えたぎっているのを感じます。
「眼が年をとる」という表現はキラキラした目つきが諦めに変わっていってしまう危うさも感じさせるけど、なんせこの歌は頑張る若者へ向けたエールだから「意志がある力強い目つき」になっていくということでしょう。

この映画パピチャもそういう社会の抑圧と闘いながら自分の夢を叶えていく若者の青春物語だと思ってました。 アルジェリア版ファイト!なのだと。
まあ大きな方向性ではそうだったけれども、頬の打たれ具合の激しさがぜんぜん違った。
相手はイスラム原理主義者。頬を打たれるどころか文字どおり殺されてしまう。
自由と未来のためを求める代償が大きすぎる。これを青春映画と言って良いのか?自由を求める闘争を描いた映画でした。

「パピチャ」というのはアルジェリアのスラングで
「愉快で魅力的で、常識にとらわれない女性」のことを指すそうです(公式パンフレットより)。
僕はこの定義に「美しく」「逞しい」を加えたい。
打ちのめされる絶望の中に未来への力強い希望を感じる素晴らしい映画でした。
2020年11月1日(日)鑑賞


10位
鬼滅の刃 無限列車編

監督:外崎春雄
声の出演:花江夏樹/鬼頭明里/下野紘

日本映画界にもたらされた希望の星!

もう、これに関しては話題になり尽くしてるし、僕はもっともありがちなパターンで鬼滅の刃にはまったので、独自の視点とか切り口とかは特段ございません。 「ありがちなパターン」を一応書いておきますと、鬼滅の刃をはじめたのはコロナ自粛期間でした。
その頃すでに話題になっていた鬼滅の刃の素晴らしさを、お笑い芸人が熱く語っていたのでアマプラで見始めたのがきっかけ。
最初のほうのストーリーはありがちなヒーローものだなあという感じだったのだけど、魅力的な仲間が増えていくに従って沼にどっぷりはまりました。
テレビシリーズは漫画全体の序盤で終わってしまうので、即漫画を全巻購入。
断捨離中でコミックが20冊も増えることに抵抗があったのでKindleを買って電子書籍で買いました。
1日1話ずつ読んでゆっくり楽しもうと思ってたのに、辛抱たまらず2,3日で全巻読破。実に面白くてすっかりハマりました。
そんな中で迎えた映画の公開。本作はテレビシリーズの続編だけど、漫画を読んでる人は当然そのストーリーを知ってます。
なんならセリフまで頭にしっかり入ってます。なので映画はどうしようかなーなんて思ってたのですが、結局公開2日目に行きました(笑)
展開も結末も分かってるのにまあ泣けるったらない。
改めて映画の素晴らしさを実感しました。
当たり前だけど色が付いていて、動くし、しゃべるし、効果的な音楽が流れるしで、漫画では経験できない感動と興奮がありました。
もうラスト15分泣きっぱなしでした。
ま、中には面白くないって人もいるのでしょうけど、多くの人が楽しめると思います。
新型コロナでみんなで盛り上がれる明るいニュースが少ない中での希望の星になれたのも良かったなー。
2020年10月17日(土)鑑賞


11位
TENET テネット

監督:クリストファー・ノーラン
出演:ジョン・デヴィッド・ワシントン/ロバート・パティンソン/エリザベス・デビッキ

よくわからんけど凄いことだけは確か

去年日本人研究者がブラックホールの撮影に成功したというニュースを新聞で読んだ時、単純にすげー!って思ったものの具体的に何がどう凄いのかさっぱりわからなかった。
よくよく記事を読むと素人が想像するような超望遠レンズでパシャっと撮影したわけではなく、何やら世界中の電波望遠鏡で観測したデータを分析して画像を作り出したらしい。
・・・ますますわからない。
さらに肝心のそのブラックホールの画像というのもなんか黒い点の周りにぼやーっと明るい光がある映像で正直インパクトに乏しい。
ただそれでもとてつもない偉業なのだろうということは素人でもうすうすながらわかる。
おそらくこの道の研究者や学生であれば鼻血が出るくらいの興奮ものなのでしょう。

TENETはまあそんな映画でした。
何か凄いことが起こってる。その凄さはビンビン感じる。
でも自分はおそらくその凄さの半分も理解できなかったんじゃないか・・。
そんな人が多いらしく、TENETは2回目の方が面白いという人が多いようです。
2020年9月22日(祝)鑑賞


12位
はちどり

監督:キム・ボラ
出演:パク・ジフ/キム・セビョク/チョン・インギ

いつでもお前、14歳にしてやるぜ by 甲本ヒロト

「14才」というザ・ハイロウズの歌がある。
レコードプレイヤーのスイッチを入れればいつでも14才に戻れるという歌。
13才でもなく15才でもなく14才。とても特別な年齢。
人は徐々に大人になっていくけれども14才というのはとりわけそのスピードが速い。
ホルモンとか何かよくわからないけどそういう大人になるための成分がものすごく分泌されてるんじゃないだろうか。
統計を取ったら思春期とか反抗期のピークは14才のはずだ。
思いはあるのに言葉にできないもどかしさや、やりたいことと出来ることとのギャップにイライラして爆発寸前。
多分それは万国共通なのでしょう。
ソウルの少女ウニも同じ。親や友達はなぜ分かってくれないのか、自分はどこへ向かえば良いのか。
思いっきり羽をジタバタさせるけれどもちっとも前に進まない。その様はまるではちどりのよう。
でもそうやってジタバタして蓄えた力は必ずその後の人生の役に立つのです(多分)。

ちなみに本作は南海キャンディーズの山里さんが奥様の女優蒼井優さんと一緒に鑑賞したそうで、奥様は絶賛する一方で山里さんはどこが良いのか全くわからなかったけど、センスが無い人だと思われるのが怖くて 「凄く良かった」と強がってしまったとか。
あんまり無理していると結婚生活が大変になるんじゃないかな(笑)
2020年9月25日(金)鑑賞


13位
エイブのキッチンストーリー

監督:フェルナンド・グロスタイン・アンドラーデ
出演:ノア・シュナップ/セウ・ジョルジ/ダグマーラ・ドミンスク

神よりも大切なもの

以前イスラエルに行った時にエルサレム旧市街のホステルに泊まりました。
ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の聖地であるエルサレムは各宗教の熱心な信者が集まる。
熱心な信者にとって自分の宗教こそが正義だ。だからと言って争いを望んでいるわけでは無いので、すぐ隣に別の宗教を信じる人がいてもケンカになるわけでもない。(数年に一度「ケンカ」なんて生易しい言葉ではすまないレベルの争いが起こるけど)
なのでお互いの存在を無視して生活しています。とりわけユダヤ教の超正統派と呼ばれるハードコアなグループは際立ってます。
旧市街近くのメアシェアリームという地区に住む彼らは嘆きの壁でお祈りをするために旧市街に毎日通うのですが、スタスタと足早に歩き嘆きの壁に一目散という感じで、観光客や他の宗派の人は全く目に入ってない様子です。
同じ町に住みお互いの存在を強く意識しているのに敢えて交流しないという実に居心地の悪い町でした。
自分が強く信じている正義があって、その強い気持ちと同じ熱量で別の正義を信じる隣人がいるとき、人は理解しようとするのではなく無視するのです。(隣人を愛せという教えはどこに行ってしまったのか・・)

日本人は宗教でも政治でも強く信じる正義を持っている人は少ない。僕もそのクチなので、この一歩も譲れない正義という感覚はイマイチよくわからないのだけど、エルサレムで見たユダヤ教徒とイスラム教徒の子供同士が結婚する状況は全く想像がつかない。
この映画で描かれているように、自分の信じる正義によって愛する子供や孫が苦しめられると気付いたときに人は変われるのでしょうか?
神よりも大切なものを見つけることができるのでしょうか?
2020年12月6日(日)鑑賞


14位
羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ) ぼくが選ぶ未来(日本語吹替版)

監督:MTJJ
出演:花澤香菜/宮野真守/櫻井孝宏

妖精原理主義者フーシー

以前イースター島に行った時のある現地ガイドさんはポリネシア系の先住民の母親とチリ人の父親とのハーフのLiliさんという女性(なんと前年のミス・ラパヌイ)だった。
絶海の孤島であるイースター島にはもともとポリネシア系の先住民が住んでいたのだけれどもヨーロッパ人や南米の白人がやってきて 先住民を奴隷として連れ去ったりした末に、19世紀後半にチリ領となった。
Liliさんにチリに対する感情を聞いてみたところ、父親はチリ人であるものの生まれも育ちもこの島だから気持ちはラパヌイ人であるとのこと。
それでも一部でくすぶっている独立運動には反対でチリの援助を受けなければ生きていけないからチリ領であることは仕方ないと考えている。
ラパヌイ人として生きたいが、現実を考えるとチリ人として生きるしかないと諦めと開き直りが混ざったような表情で語った顔が忘れられない。
独立派の話を聞く機会は無かったけど、チリに頼らず物質的に貧しくなったとしても精神的な自由を求めるということか。
チリ依存派と独立派のどちらが正解ということはない。
それでも依存派には現実や諦めを感じる。本当は独立したい、でもそうできない。 遠い国のことで無責任に言えてしまうのだけれども、カッコイイと惹かれてしまうのは向こう見ずで理想に突っ走る人なんだよなあ。
だからこの映画でもフーシー頑張れ!って思っちゃいましたね僕は。
もちろん暴力はダメですよ。

あ、そういえば初めてMX4Dで鑑賞しました。イスが動いて時には風とか霧状の水がかかったりしてUSJのアトラクションのようでした。
・・・まあUSJに行ったことはないのですけども。
2020年11月15日(日)鑑賞


15位
薬の神じゃない!

監督:ウェン・ムーイエ
出演:シュー・ジェン/ジョウ・イーウェイ/ワン・チュエンジュン

悪法も法なり?それとも悪法は悪なり?

高校で「倫理」という授業がありました。
ヤギのようなヒゲをがっつり蓄えた先生の名前は忘れてしまったけど、あだ名が「次元」だったのはよく覚えてる。
倫理といいつつも、中身は哲学だったような気がする。
次元が語ったソクラテスのエピソードをよく覚えてます。
理不尽な法律で投獄されたソクラテスは弟子に脱獄を勧められるのですが
「悪法もまた法なり」
と弟子を諭して罰を受けたとか。これが妙に心に刺さった僕はしばらくの間、往来がない横断歩道の赤信号でも律儀に青に変わるのを待ったものです。
もちろん信号は悪法じゃないけど、ルールというものは多少納得できなくてもしっかり守ろうっていう思いに至ったわけだから倫理の授業としては成功なのでしょうね。
(大人になるにつれて、「赤信号では止まる。ただし誰もいなければそれはほぼ青である」というマイルールを制定し今に至るわけですが)

すべてのルールの背景には理由がある。だけれども完璧ではない。時にはこのルールは間違ってるんじゃないか?っていうこともある。
それでも自分が正しくてルールが間違ってると言い切るのはなかなか難しいですよね。
往来がない横断歩道の赤信号くらいならマイルールを信じられるけど、人の命に関わるルールならどうでしょう?そのルールを破ることは重罪に値する場合はどうでしょう?
そんなルールに立ち向かって自分を信じられる人は本当に強い人だ。
そういう強い人の映画です。

※往来が無くても信号は守らないとダメですよ。言いたいのはそこじゃないですからね。念のため。
2020年10月31日(土)鑑賞


16位
リトル・ジョー

監督:ジェシカ・ハウスナー
出演:エミリー・ビーチャム/ベン・ウィショー/ケリー・フォックス

お花中毒

イヌ派ネコ派で言うとイヌ派です。
イヌの祖先はオオカミなわけで、まあ確かに似ているけども愛くるしさ具合が全然違う。
なぜこうも愛くるしくなったかというと、イヌを家畜化した昔のヒトが可愛い(人懐っこい)イヌを選別して交配させてきたからだと言われています。
そしてやがてチワワやポメラニアンのように、動物的には「可愛い」ことしか取り柄が無い生き物が誕生する。
狩猟能力なし、逃走能力なしの愛玩犬を野生に放ったら一代で絶滅するでしょう。
彼らはヒトに守ってもらうことが種の保存の前提。
あの愛くるしい造形と全力で愛想を振りまく様は彼らのしたたかな生き残る術なのです。
草花も同じ。動くことができない草花は甘い香りや鮮やかな色で動物を誘惑して花粉を運ばせる。
生き延びるために他の動物に媚を売るという点ではチワワと大差無い。
大麻やコカの木なんか結局リアル版リトル・ジョーなんじゃないかな。
人間に快感をもたらすことで、人間が一生懸命栽培してるんだから。
吸いたく無い人までも取り込んでしまうリトル・ジョーのアグレッシブさは大麻と全然違うけど。
2020年7月20日(土)鑑賞


17位
行き止まりの世界に生まれて

監督:ビン・リュー
出演:キアー・ジョンソン/ザック・マリガン/ビン・リュー

青春の続きの現実は?

宣伝チラシに使われているスケートボードのシーン。
早朝とおぼしき無人の街をスケートボードで滑走する3人の若者。
このシーンを観ながら自分の青春が一気に甦ってきた(僕はスケーターではないけど)。
徹夜明けの早朝、普段は人でごった返す渋谷や新宿は人気が無く、まるで世界で生きているのが自分たちだけなんじゃないかと錯覚するような感覚。
ああ世界は僕らのものだ・・みたいな感覚。
という実にユースフルデイズなシーンで始まるこの映画。
いわゆる青い世界を期待したのだけども、その後は「行き止まり」へ進んでいく。

街の衰退と貧困、家庭内暴力の連鎖、拭い去れない人種の壁。
そういったつらい現実から逃避する手段としてのスケートボード。
舞台となるイリノイ州ロックフォードはThe Rust Belt(錆びた地帯)と呼ばれる地域であり、かつて盛んだった製造業が衰退してしまい工場や機械が錆びついていると喩えられている。
トランプ大統領が選挙で勝ったのはこのThe Rust Beltで勝ったことが大きいのだそうだ。
確かにトランプに投票したくなる気持ちもわかる。
かつての栄華を知っていて、今日の衰退に対してこんなはずじゃないと憤ってる人に響くメッセージは、地球に優しい温暖化対策などでは無く、
「Make America Great Again」なのは当然といえば当然。

あの栄光を取り戻そうぜって気持ちは分からなくもないなあ。
でもこの若者たちを見ているとグレートなんかじゃなくて慎ましくても良いから自分らしく生きたいって感じてる気がする。
今年の選挙では彼らはどちらに投票するのでしょうね。
2020年9月19日(土)鑑賞

追伸:インスタで投稿した主人公の一人のKeire JohnsonのイラストをなんとKeire Johnsonご本人からお褒めのコメントをいただきました!すっごく嬉しいです!


18位
グッバイ、リチャード!

監督:ウェイン・ロバーツ
出演:ジョニー・デップ/ローズマリー・デウィット/ダニー・ヒューストン

サンキュー、リチャード!

先日定年退職を迎えた方に
「おつかれさまでした。これからはゆっくり悠々自適ですか?」
とお尋ねしたところ
「いやこれからは自分で何か事業をしたいと思ってます。
私の理想は死ぬ1週間前まで働いていることなんです。」
と仰った。
とても共感出来る。

働くことや社会の役にたつということのありがたみが分かっていなかった若い頃は 宝くじでも当たって一生のんびり過ごしたいと考えてたけど、アラ人生折り返し地点ともなると少し考えが変わってくる。
人の役に立っている、社会になんらかの付加価値を与えている。そうした自分の存在意義を感じられることの幸せを求めるようになっている。
まあ、だからと言ってサラリーマンとして働くことに諸手を挙げて幸せを感じてるわけではないのだけども。

そう考えるようになったのはやはり「死」を意識するようになったからだと思う。
平均寿命まで生きられるとして、今は人生のハーフタイム。
概ね今までの人生と同じだけ生きたら試合終了。
人生の前半戦を振り返り、後半戦をどう戦うか誰しも考える。
前半戦はしっかり生きていたか?ただ存在していただけなのか?
リチャードは残り180日しかなかったけど、幸い僕らの後半戦はもっと時間が残されてる(まあ何が起こるかわからないけどそれは置いといて)。
いや、時間はたっぷりあるなんてウカウカしてたら多分あっという間にアディショナルタイムに突入しちゃうな。
いつリチャードのようになっても悔いが残らないようにしっかり生きねば。
大切なことを改めてリマインドしてくれた気がしました。
サンキュー、リチャード!
2020年8月25日(火)鑑賞


19位
ノッティングヒルの洋菓子店

監督:エリザ・シュローダー
出演:セリア・イムリー/シャノン・ターベット/シェリー・コン

日本を代表するお菓子とは

例えば日本を離れて海外で暮らすことになった時に、恋しくなる日本のお菓子は何ですか?
僕なら・・どら焼き、おはぎ、赤福、今川焼き・・まあとにかくあんこを使ったお菓子になると思います。
そもそも日本を懐かしむ食べ物は「お菓子」じゃないかも。
味噌汁とか納豆とかなんじゃないかなー。

ともあれ、異国で暮らしていたらふるさとの味で母国に思いをはせたくなるのはなんとなく理解できます。
本作では日本のお菓子も登場します。果たしてそれが何なのかは観てからのお楽しみということになりますが、 僕は・・そのお菓子を食べたことがありません。それどころかあまり聞いたこともありませんでした。
そういうお菓子もまああるんだろうねという感じ。
東京の人にとっての「東京ばな奈」みたいなもので、外国人にとっての「日本のお菓子」だったんじゃないでしょうか。
2020年12月20日(日)鑑賞


20位
ウルフウォーカー

監督:トム・ムーア/ロス・スチュアート
出演:オナー・ニーフシー/エヴァ・ウィッテカー/ショーン・ビーン

誇り高き狼よ

以前、高知で土佐犬の闘犬を見たことがあります。
土俵に上がるや否や相手に襲いかかる凶暴な姿に、まさに闘うために生まれてきた犬なんだなと驚くのと同時に「声をあげたら負け」というルールを熟知しており、どれだけ噛まれようとも黙々と闘う姿を見て、プロフェッショナルを感じました。
土佐犬は生まれも育ちもそんじょそこらの犬とは全く別物だなと。
チワワと土佐犬が同じカテゴリーにいていいわけがない。
狸とヒグマぐらいに違う生き物に見えました。

そこんところ狼のポジショニングはどうなんでしょう?
僕はたぶん動物園でも狼というものと見たことが無いけど、見た目はシベリアンハスキーみたいなイメージだ。
チワワと土佐犬をひとくくりに「犬」と呼ぶのであれば、狼も「犬」の仲間でいいんじゃ無いか?
そう思わなくもないのだけれども、狼が犬と決定的に違うのは「人に媚びない」ってことなのです。
おそらく祖先は同じである犬と狼の違いは、人間に家畜化されることを受け入れた種と受け入れなかった種なのです。
人に媚びることを拒否した狼は日本やヨーロッパで駆逐されてしまいました。 最近になって「地球に優しく」などと言い始めた人間が、狼に対して尊敬の念を抱いているのは 決して降伏を受け入れず誇り高く滅びていったからなんじゃ無いですかね。
神秘的で誇り高くてカッコイイ狼。いつか野生の狼を見てみたいな。アラスカあたりですかね?
2020年11月21日(土)鑑賞


21位
透明人間

監督:リー・ワネル
出演:エリザベス・モス/オルディス・ホッジ/ストーム・リード

人類みなのび太

ドラえもんが好きだという将棋の藤井聡太棋聖が一番欲しいドラえもんの道具はなんだと思いますか?
「グルメテーブルかけ」だそうです。
お、おう・・そうか・・。僕も人並みにドラえもんは好きだけど正直このアイテムは知らなかった。
簡単に説明するとこれは好きな食べ物がなんでも出せるという代物のようです。
ま、一生食うに困らないというのは心のゆとりを生んでくれそうではありますが、それでも「どこでもドア」とか「タイムマシン」の方が・・と考えてしまうのは一般人の浅はかさか、はたまたドラえもん愛の足りなさゆえか。
ドラえもんの便利な道具はたいていのび太がしょうもない使い方をしてしまいろくでもない結末を迎えてしまうように、ハイテクな道具というのはそれを使いこなす人間の知性によって有用度合いが変わってきますね。
例えばスマホ。多くの人は使いこなすというより、スマホに支配されてしまっているように見えます。
そんなこんなで使う人間の知性が試されるハイテクグッズ。
今回ご紹介するのは透明人間になれるこちらの商品です。
使い方は簡単・・・なのですがネタバレなので説明しませんけども、ドラえもんでいうところの透明マントをイメージしてください。
さああなたなら何をしますか?
恥ずかしながら僕は若干のエロいことや、エンタメのタダ見くらいしか頭に浮かびませんでした。
この映画を観た直後は、おいおい世紀の大発明の使い道がこれかい!!
などと呆れたものの透明になれても大して良いことって無いものですねえ。
ということで透明マントならグルメテーブルかけのほうが欲しいなあ。
2020年7月12日(日)鑑賞


22位
ハースメル

監督:アレックス・ロス・ペリー
出演:エリザベス・モス/カーラ・デルヴィーニュ/ダン・スティーヴンス

人生初の劇場貸切作品

人様の仕事ぶりにケチをつけるのはお行儀が良くないが、本作の宣伝活動はイマイチだったんじゃないか。
映画のチラシでは主役のエリザベス・モスがおどろおどろしい表情で鏡を見つめてる。サスペンスかホラーだと思ってスルーするところだったけど、劇場で予告編を見たら パンクバンド(大好き)のお話だという。
しかもカーラ・デルヴィーニュ(大好き)も出るとか。いやー、パンクのカーラ・デルヴィーニュなんて超観たいじゃないの。早く言ってよー(by松重豊)状態だ。
心をときめかせアップリンク京都へ。上映10分前。客は僕一人。
まあ、Twitterでもほとんど話題になってないもんな・・人気ないよな。
でもまさかそのまま誰もやって来なくて人生初の劇場貸切になるとは思ってもいませんでした。
コロナ期であるとはいえ、まさか日曜日に貸切になるとは思わなかった。
数年前に今は無き立誠シネマで観たSALAD DAYSですら3人だったと思う。(ちなみにこれもパンクバンドの映画)
内容は傑作とまではいかないまでも結構楽しめる映画だった。カーラ・デルビーニュの登場シーンなんて超かっこよかったし、ライブハウス特有の息苦しくなるような閉塞感がよく再現されてた。
だからやっぱりこの人気のなさは宣伝が失敗だったんじゃないかなあ。
タイトルもチケット買うまで「ハーメルン」みたいなワンワードだと思ってたからね。ああ、ハー・スメルなのかって上映直前に気付いた。
ま、これは僕の問題かもしれないけど。
それにしても僕がいかなくて観客ゼロでも一応上映したんだろうか・・・
2020年9月27日(日)鑑賞


23位
ブリット=マリーの幸せなひとりだち

監督:ツヴァ・ノヴォトニー
出演:ベルニラ・アウグスト/ペーター・ハーバー/ランス・ヌベ

自分探しの旅もHYGGEでいこう

スカンジナビアにはHYGGE(ヒュッゲ)という概念がある。
リラックス、幸せ、楽しい、心地良いという感覚が合わさった状態らしい。
この映画は専業主婦一筋だった60過ぎの女性が新たな人生を踏み出すという映画。
新しいことを始めるのは若者でも大変なんだから、還暦を過ぎた専業主婦の挑戦はさぞかし大変だろう・・
と思いきやブリット=マリーの冒険は実にヒュッゲ。
とにかく会う人みんな良い人ばかりかつ超親切。
スウェーデンでは映画もヒュッゲな展開じゃないとウケないのかな。
クソ真面目でリアリストな日本人の僕はもっと苦難をください!ってなりました。

40代に入り人生折り返しを実感する今日この頃、歳をとってから新たな人生を歩み始めるというのは どういうことなのかと参考にするべく鑑賞したのだけどあまりに理想的モデルケースだったので参考にならず。 やっぱり自分の道は自分で考えろってことですかね。
2020年7月26日(日)鑑賞


24位
スパイの妻

監督:黒沢清
出演:蒼井優/高橋一生/東出昌大

狂ってると言われようとも自分の信念を

テレビドラマ「とんぼ」のオープニングで長渕剛が演じる小川英二が砂浜を歩く。
何度か撮り直しをしたらしく砂浜に足跡の列が残ってるのを見つけた父が
「映画だったらこういうのは消して撮り直しをする」
とぼそっと言ったのをよく覚えてる。
なるほどテレビドラマと映画の違いはそういう手間のかけ具合なのかと納得した覚えがあります。
タダで観れるテレビと、お金を払って観る映画の違いだなーと。

そういう点においてこの映画はどうにもテレビドラマっぽい感じがしました。
敢えてなのかもしれないけど・・・
市電の窓の外の風景を用意できなかったのか真っ白に飛ばしてごまかしてるように思えたし、神戸という舞台やセリフにこだわってるという割には主要キャストはみな標準語だし。
まあ、東京育ちの人が神戸に引っ越したという設定なのかもしれないですけどね。
もちろん映画の本質はそこじゃない!ってことなんでしょうけど、そういう細部にまでこだわって作りこむのが映画だと思ってたもんで、なんか違う・・って感じでした。
NHKが制作したからなんだろうか・・・
でもTwitter界隈では絶賛コメントが並んでるので僕の感覚がおかしいのでしょう。 みんなと違っていればそれは自分が狂っているということなのです。
劇中で蒼井優がそんなことを言ってました。
2020年10月25日(日)鑑賞


25位
アルプススタンドのはしの方

監督:城定秀夫
出演:小野莉奈/平井亜門/西本まりん/中村守里

スタンディングオベーションのはしの方

とにかく絶賛のつぶやきでタイムラインが溢れてたのでさっそくアップリンク京都へと足を運びました。
みんながこぞってイイというモノに対して斜に構えてしまう時が自分にあるのは認めるけども、公平に見てこの日の僕はこの映画に対して前向きにがっぷり四つに組む所存で臨みました。
・・・が、イマイチ刺さらなかった。
サッカー部だった僕は帰宅部や軽音部の友達の方が多かったので、青春に色々な形があるのはわかってるつもりです。真ん中とはしっこの間くらいにいたので花形の青春を送る「真ん中の人」に対して卑屈になる気持ちも理解できます。
なぜ高校野球だけこんなにも特別扱いされんだろうと違和感を感じる側の人間でもあります。

それでもだ。
アルプススタンドのはしの方でも、
野球に一切興味がなくても、
文科系の青春を送っていても、
挫折をしていても、
甲子園は血の滲むような努力をしてきた同級生の青春の大舞台であるのは理解できるでしょう。
君のつまづきやそこから立ち上がってまた走り出すこともとても大事だけど、今ここでそれをするか。
自分の大会でうまくいかなかったとか、
誰が好きとか、
学校の成績で1番じゃなくなったとか、
確かにそれも大事だ。
でもその話今じゃなきゃダメ?試合が終わったらゆっくり聞くからさ。
君が真剣に取組んでいる演劇を観に来た人が、舞台をそっちのけで身の上話に夢中になり、クライマックスだけ大きな拍手を送っていたらどう思うの?
青春の形はひとそれぞれ。
野球部も演劇部も帰宅部も青春だ。
君が理解できなくても、嫌いでも彼らの集大成なんだから。

し・か・も!
あまりに雰囲気が違うので自分を言い聞かせるのに苦労したけど、ここは甲子園なのです。
強豪がひしめく埼玉県を勝ち抜いた県立高校の応援。
埼玉から泊りがけでわざわざ兵庫県まで来て、 それでもなおこのぬるさなのか。
この辺の甲子園感(全国大会感)の無さを世の中の99%を占める絶賛組はどう消化したのでしょうか。まあそこじゃないってことなんでしょうけど。
設定が地区予選ならもう少し共感できたな・・・。
2020年8月1日(土)鑑賞


26位
8日で死んだ怪獣の12日の物語

監督:岩井俊二
出演:斎藤工/のん/樋口真嗣

真実は売れない

2011年の東日本大震災。
長渕剛はその鎮魂歌ともいうべき歌「愛しき死者たちよ」で
「よみがえれ愛しき死者たちよ!
100年かけても眠るんじゃないぞ!!」
と歌った。
タイトルに「死者」という強烈な言葉が入ったその歌は普通であれば安らかに眠ってくださいと言うところを眠るなと叫ぶ。
実に長渕剛らしい不器用でまっすぐな素晴らしい歌だと感動した。
これは多くの人の心を打つ名曲になるだろうと震えたものだけど、ファンを除けば大して話題にもならなかった。
他にも数多く作られた震災をテーマにした歌の中で一番話題になった歌といえば、「花は咲く」でしょう。
実に美しいメロディと爽やかな歌詞。
花は咲く、いつか生まれる君に
花は咲く、いつか恋する君のために
長渕が死者を見つめいつまでも我々の胸を叩き続けてくれと憤りながら叫ぶ一方で、この歌は悲しみを越えて未来を見よう、恋もしようと優しくささやく。
どちらの表現も素晴らしいのだけど、売れるのは後者だなと少し寂しくなり、僕が惹かれるのは前者だと改めて認識した。

そして2020年のコロナ禍。
映画界も打撃を受けた。そんな中で「破壊の日」というコロナに挑む怒りと祈りに満ちた魂の映画が出来上がった。
緊急事態宣言を経て短い製作期間で本来オリンピックが開幕する予定だったスポーツの日 2020年7月24日に上映した反骨心溢れる映画だった。
それからやや遅れてこの「8日で死んだ怪獣の12日の物語」が上映された。
コロナ自粛で流行ったリモートワークを取り入れた「リモート作品」
破壊の日が新しい生活様式に抗った映画であるならば、「8日で死んだ怪獣・・」は新しい生活様式にうまく適合した映画だ。
オシャレ度も全然違う。
これももちろんどちらが正解とかじゃない。それぞれのスタイルだ。
それでもやっぱり売れるのは「8日で死んだ怪獣」で、僕が惹かれるのは「破壊の日」なんだよな。
僕の中に洗練された器用なものに対する僻みのようなものがあるのも認める。 たぶん僕は厳しい真実をオブラートに包んで優しく表現するのは好きになれないんだな。

岩井俊二監督。
この「8日で死んだ怪獣の12日の物語」の監督であり、「花は咲く」を作詞した人でもあるということを、今この感想を書いていて初めて知って、色々と腑に落ちた次第です。
2020年8月16日(日)鑑賞


27位

レイニーデイ・イン・ニューヨーク

監督:ウディ・アレン
出演:ティモシー・シャラメ/エル・ファニング/セレナ・ゴメス

花の都大紐育

社会人になりたての頃に中学時代の友人たちと渋谷で飲んでいた。
渋谷で飲んでいたと言っても渋谷に繰り出したわけではなく、渋谷の小・中学校を卒業した僕らは地元たる渋谷で飲んでいたわけです。
東急本店近くの馴染みの居酒屋で、その日は隣で大学生らしきサークルあるいは合コン的な大規模な飲み会が盛り上がってた。
僕らと彼らを隔てている襖がなんかの拍子で倒れて女の子にお酒がかかった。
もちろん僕らが倒したわけじゃないけど、酔っ払ってる男どもは女の子にかっこいいところを見せたかったのか、
酒で気が大きくなっていたのか僕らに絡んできた。
草食系男子の僕らの中では一番血の気が多いヤツが言い返して、お互い多少の手が出たところで店員が入ってきてレフェリーストップ。
やれやれやっと収まったと思ったところで先方の一人が捨てゼリフを吐いた。
「ったくよお!てめえらどこだよ!!」
どこだよ・・・?その言葉の意味を理解するのにやや時間がかかったけど要するに修学旅行先の京都でガンを飛ばし合うヤンキー中学生が叫び合う
「てめえら何中だよ!!」
的なことなんだろう。
いやこれどう返すべきなんだ。
中学や高校ならまだわかるけど、なんせ僕らはもう社会人だ。まさか会社名を言えってことじゃなかろう。
所属を言うんじゃないとすると、やっぱりここは地元を名乗るのが筋なんだろう。
思考がそこまでたどり着いた時に、本当に悲しくなった。
僕らは地元で飲んでいただけなのだ。たまたま僕らの地元はよそ者が集まる渋谷なのだ。
いつものように地元でひっそり飲んでいたらよそ者がいっぱいやってきてケンカを売られ、挙げ句の果てには
「てめえらはどこからやってきたんだ」
ときた。
渋谷は人が集まる場所であり、渋谷で生まれて渋谷で育った人がいるだなんて彼らは想像すらできないんだろう。
「てめえらこそどこから来やがった。俺たちはなあ、ココのもんだよ。この東急本店の裏の中学卒業だわ。」
と怒鳴り散らしてやった・・・つもりになった(パンクブーブー式に突っ込んでください)。
誰しも地元があるでしょう。でもその地元によそ者がびっくりするくらいやってきて、しかもいつの間にか自分たちよりも地元に詳しくなっていって、いつの間にか我が物顔で歩いていく・・そんな切ない気持ちになるのは東京の人間くらいでしょう。
(この辺りの東京人の切ない心情は文京区出身ジェーン・スーさんのエッセイにちょいちょい出てきます。)

10代は圧倒的なアドバンテージに優越感に浸り
20代になるとよそ者に追い越されていく焦りを感じ
30代で観念する(そして僕の場合は京都に越しました)
東京を作ってる人は東京以外の人。多くの東京人はひっそり暮らしてます。
でもね。心のどこかじゃ渋谷は僕らの街だ!ってプライドを持ってるんですよ。

ニューヨーク出身のウディ・アレンもそれに似た匂いがする。その作品からニューヨークに対するプライドをすごく感じる。
本作でも田舎もんがギャーギャー騒ぐんじゃないよ。みっともないねえ。
ってよそ者を見下したニューヨークファーストが滲み出てました。
でもウディ・アレンももちろんわかってる。ニューヨークを作っているのは野望を持ってよそからニューヨークに集まってきた人たち。
エル・ファニングが演じたアシュレーみたいな人たちだってことを。
ま、もちろんウディ・アレンのように生粋のニューヨーカーたちも頑張ってるわけですが。

ということで都会っ子の心情にシンパシーを感じる一方で、世界の大都会であるニューヨークに拒絶された感じもして、上京後東京に冷たくされる人の気持ちも分かったりもしたのでした。
2020年7月4日(土)鑑賞


28位

ハニーボーイ

監督:アルマ・ハレル
出演:シャイア・ラブーフ/ルーカス・ヘッジズ/ノア・ジュープ

そこに愛はあるのかい?

子供のころから俳優として活躍していたシャイア・ラブーフの自伝的な映画。
シャイア・ラブーフ本人は自分の父親役として出演。
そして幼きシャイア・ラブーフを演じるのは期待の若手ノア・ジュープ。
このノア・ジュープがかわいくてたまらない。
ノア・ジュープのかわいらしさと青年時代を演じたルーカス・ヘッジスの苦悶顔。
ルーカス・ヘッジスは悩める青年を演じさせたら右に出る者なしだなあ。
なんかもうデフォルトで眉間にしわが寄ってるし、眉毛が悩んでるし、瞳が怯えてる。
何はともあれこの二人のインパクトがすごい(というか良くも悪くもそれに尽きる)。
こんなにかわいらしい子をあんなにも苦しみ悶える青年に育ててしまったのか、あのろくでなしの親父は。というお話。
夕日を浴びたハニーボーイ少年の神々しい雄たけび。
いつまでも見惚れていたい・・と思ったのもつかの間、ハニーボーイ青年の地獄の雄たけびにかき消されてしまう。
でも実際はシャイア・ラブーフという有名俳優に育ったわけなので、親父さんはハニーボーイの人生をめちゃくちゃにしたってほどじゃないですけどね。
中にはこんな感じで本当に人生を潰されちゃったハニーボーイもいるんでしょうねえ。

キャッチコピーは
「大人になった今、僕は知った。そこに、愛があったことを」
ってことなんだけども、ごめんなさい
他人の僕にはそこに愛は見つかりませんでした。
親子にだけ分かる愛ってやつなのかな?
2020年8月10日(祝)鑑賞


29位
ミッドナイトスワン

監督:内田英治
出演:草なぎ剛/服部樹咲/水川あさみ

娯楽度100%

「多様な意見がある。素晴らしいこと。人の数だけ意見が富んでる。素晴らしいこと。 でも自分の映画を社会的にはしない。これは娯楽。娯楽映画で問題の第一歩を感じれればいい。 社会問題は誰も見ない。映画祭やSNSでインテリ気取りが唸り議論するだけ。なので娯楽です。 多くの人に観てほしい。それだけ」
誤解を生まないように原文をそのまま載せましたが、これは内田英治監督のTwitterの投稿です。
本作ミッドナイトスワンへの批判的な意見に対するアンサーなのだそうです。
冒頭で多様性を認めつつも隠しきれない怒りが滲み出てますね。
トランスジェンダーの主人公の映画を撮ったけれどもこれは社会問題を扱ったわけでは無く娯楽映画なのだから小難しいことで批判してくれるなというようにも読めます。
当然SNSのインテリ気取り界隈はこのツイートを不快に感じて、それがまたSNSで議論して盛り上がっていたところで興味が湧いてきて観てきました。

確かにこれは娯楽映画ですね。
何かを訴えたい、表現したいという気持ちよりもシンプルに「泣かせたい」という狙いが随所に感じられました。
割とズル目の安っぽい催涙弾。僕のTwitterのTLでは絶賛されていた草なぎ剛の演技も期待が高すぎたのか今ひとつ。
己の不遇を泣いて嘆き悲しむシーンの演技は「ウソ泣き」の演技をしてるのかと思うほどシラけた。
それでも周りの多くのお客さんはラスト20分あたりから大号泣でしたね。いたるところで鼻水をすする音が聞こえてきました。
なので娯楽映画としては成功と言っていいでしょう。
社会問題は微塵も感じませんでした。うん。大丈夫。内田監督は間違ってない。
2020年10月11日(日)鑑賞


30位

誰がハマーショルドを殺したか

監督:マッツ・ブリュガー
出演:マッツ・ブリュガー/ヨーラン・ビョークダール/アレクサンダー・ジョーンズ

信じるか信じないかはあなた次第

リアリティ番組のテラスハウスに出演していたプロレスラーの木村花さんが SNSでの誹謗中傷を苦にして自ら命を絶ってしまった。
誹謗中傷の原因は「脚本なし、出演者の素の姿」とされている「リアリティ番組」を信じた人が、ヒールを演じた出演者が本当に嫌な人なんだと思い込んで腹を立てたからのようだ。
匿名の立場で知りもしない人に誹謗中傷を浴びせてしまうことが非道であるのは間違いないのだけれども、その一方では視聴者にはなかなか難しいリテラシーが求められているということもある。
何しろ制作側はあくまで「ブックなしですよ」と言い張っているのだ。
でも視聴者はそこで無邪気に「事実なんだ」と受け取ちゃいけない。
「了解了解。やらせなしというテイなのね」と大人の事情を飲み込んだ上で楽しむのが正解なのだ。
まさにプロレスと一緒(ガチのプロレスファンに怒られるかもしれないけど)。これは英語の話ではないのだけど個人的には「リアリティ」の「ティ」になんちゃって感が見え隠れする。
いや、リアルじゃないんですあくまでリアリ「ティ」。
リアル的な感じです。
と説明するテレビ制作会社の胡散臭いディレクターが頭に浮かぶ。 (一度もテレビのディレクターに会ったことないけど)
※英語的にはREALが形容詞で、REALITYは名詞という違いがあるだけです。上記はあくまで個人的なイメージです。
ということでリアリティ番組の僕の定義は
「脚本や演出はもちろんがっつりあるけど、あたかもそういうのは一切なしって思って観ると楽しめる番組」になる

一方でドキュメンタリーはというとこっちはガチ。
リアリティがバッタならドキュメンタリーはほんまもん。
リアリティ番組が民放ならドキュメンタリーはNHKだ。
事実をありのままにフィルターをできるだけ排除して伝える。
ドキュメンタリーにおいて視聴者は「ああ事実ってテイなのね」などと忖度をする必要はない。
「おお!そんな事実があったのか」と素直に驚けば良い。

この「誰がハマーショルドを殺したか」という映画はこっちのジャンル(のはず)。
ハマーショルドという人は知らなかったけど、アフリカの平和に尽くした国連事務総長で 謎の墜落事故で亡くなった人だと聞いてそこに何かの陰謀めいたものがあるのだと興味を持ってこの作品を観た。
・・・ところが。これは僕のイメージするドキュメンタリーではなかった。 限りなくリアリティ番組に近いドキュメンタリー。
UFOや幽霊などの超常現象特番に近いか
証人がことごとく怪しい。そもそも本名で出演してるのかってところから怪しい。
監督とその相棒はさらに輪をかけて怪しい。
ま、本人も認めている演出がその胡散臭さを何倍にもしてる。
ドキュメンタリーの信ぴょう性を敢えて放棄したみたいだ。
パンフのレビューですら
「これは事実かそれとも虚構か」
って書いてるくらいだからね。
もうどう消化していいのかさっぱりわからんです。
2020年8月30日(日)鑑賞


最後まで読んでいただきありがとうございます。
いかがでしたでしょうか?新型コロナウイルスによる緊急事態宣言があって上期はあまり映画館に行けなかった反動か下期はたくさん行きました。しかも良作がいっぱい。順位をつけたものの20位以上はだんご状態で本当に僅差です。どれが1位でもおかしくないくらい好きな映画がいっぱいでした。
2021年は早くコロナが収まって映画だけでなく旅行や食事を気兼ねなく出来る世の中に戻って欲しいですね。
2021年もどうぞよろしくお願いいたします!
(ちなみに2020年上半期のランキングはこちらへどうぞ。)
みなさんも是非映画館へ足を運んで、オススメの映画をCHANNELCINEMA.COMで投票して下さい!

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