日本対ポーランド@ヴォルゴグラード・アレーナ

スタジアムに隣接するママエフの丘の観光を終えて、キックオフ1時間半前になったところでスタジアムへ。隣接と言っても敷地が広大なので思いの外時間がかかりました。10分くらいで着くだろうと思っていたら、たくさんのロシア人から一緒に写真撮影に誘われるので結構時間がかかる。結局30分くらいかかってスタジアムに到着。

ヴォルゴグラード・アレーナ

今日の席もセネガル戦と同じくバックスタンドの2階席です。スタジアムの裏側に回り込むと広大なヴォルガ川が見えました。モスクワで話したロシア人にヴォルガ川は川幅が1km以上あると言われて、いくらなんでもそんなに広くないだろうと思っていたら本当にそれくらいありました。本当にロシアってなんでもスケールが大きなあ。

ビールと水を買って席に着くと思いっきり西日が差し込む席でした。今日のヴォルゴグラードは気温38度でとても暑いながらも、湿気は少なく日陰は結構心地よかったので一縷の望みを抱いていたけど、かなりきつい日向席だ・・・。一旦通路に戻って、他の日本人サポーターとちょっと交流していると、選手がピッチに出てきたっぽい。そろそろ席に戻ろう。

席に戻ったタイミングでスタメン発表。一部マスコミが報道していた通り日本代表はなんとスタメンを6人も変更してきました。この情報をネットで知った時は、完全にガセか情報操作だと思ってました。かなり有利な状況とはいえまだグループ突破が決まっていないチームが温存策なんて取るわけがないだろうと。でも現実だった・・。

スタメン大幅変更

主力メンバーによほど疲労がたまってたんだろうか。まあその辺の本当のチーム事情は知りようがない。誰が出たって勝ってくれればいいし、本当に強いチームは代わりに出た選手が活躍するもんだ。
ということで、今日の日本のスタメンは以下の通りでした。
GK 川島
DF 酒井宏樹、吉田、槙野、長友
MF 柴崎、山口、酒井高徳、宇佐美
FW 武藤、岡崎
我がレッズから槙野がスタメンに名を連ねたのは嬉しいもののやはり6人代えるのはリスクが大きすぎるんじゃないだろうか。だいたいダブル酒井と長友がスタメンってどういう布陣よ。サイドバック3人(笑)?しかも6人代わっても不調が続いている川島は引き続きスタメン。
対するポーランド代表のスタメンは
GK FABIANSKI
DF BERESZYNSKI,GLIK,BEDNAREK,JEDRZEJCZYK
MF KRYCHOWIAK,GORALSKI,GROSICKI,ZIELINSKI,KURZAWA
FW LEWANDOWSKI
もともとレヴァンドフスキしか知らないけど、こちらも大幅にスタメンを変えてきたようだ。まあポーランドはグループリーグ敗退が決まっちゃってるのでスタメンを大きく入れ替えるのは分かるんだけど、なんで日本はこんなに変えちゃったんだろう。かなりもやもやする。

日本対ポーランド

ともあれ引き分け以上でグループリーグ突破が決まる重要な試合。ワールドカップが始まる前は1,2試合目に連敗して、望みが消えた状態を心配していた3試合目が緊張感のある試合になってよかった。グループでFIFAランキングが一番高い(8位)ポーランドが2連敗してくるとは思わなかったけど。
アンセムが流れて選手入場。国歌斉唱が終わっていよいよキックオフ!
想像がつかなかった3人のサイドバックの布陣は結局酒井高徳が中盤の前の方に位置取るようです。なんか日韓W杯トルコ戦で突如三都主をトップに据えたトルシエの迷采配が頭をよぎった。ちなみに僕はあの試合を見に行きました。試合結果は・・いや縁起が悪いので考えないようにしよう。ポーランドはやはりかなりモチベーションが低いようだ。ボールもガツガツ取りに来ないし。
日本も相手がボールを取りに来ないのでゆっくりなボール回し。お互いに集中力を欠いたミスもポロポロ出て緊張感がなくてなんかキリンカップみたいだ。それでも武藤、宇佐美、岡崎はこのチャンスにアピールすべく積極的に攻める。ただやはりチームとしての連携が乏しくセネガル戦のような決定機を作れない。決定機になる一歩手前からシュートを打つ感じ。武藤、宇佐美、岡崎、酒井高徳がそれぞれ良いシュートを打ったけど惜しいとまでは言えない。
一方でポーランドもカウンター主体でごくたまに鋭い攻撃を見せて、川島が間一髪でヘディングシュートを防ぐシーンでは初めてゴールラインテクノロジーを体感しました。こうなると今大会話題のVARも体験してみたいところ。

見どころを欠いた展開で前半は0-0で終了。もう1試合のコロンビア-セネガル戦も0-0。このままいけば日本とセネガルが決勝トーナメント進出だけど、おそらくそんなことにはならないでしょう。とにかくあまり失点する心配はなさそうなので1点取ればぽろっと失点することがあっても最悪でも引き分けで上にいけるはず。後半1点でいいから頼むよ!
今日の試合は空席が多くて、ハーフタイムに空席だった僕らの左隣にポーランドのおじさん二人組がやってきて座りました。

後半は開始早々岡崎が負傷で大迫と交代。んー、これはちょっとプランが崩れたんじゃないでしょうか。展開次第では守りを固めたり、リスクを負って攻撃したりしなきゃいけない試合なのでここで同じポジションの選手を交代するのはちょっと嫌な感じ。岡崎はそもそも負傷を抱えていてメンバー選考の当落線上にいたわけだけど、やっぱり万全じゃなかったんですね。ちょっと嫌な交代だったけど、後半は日本ペースで進んでる。
というかポーランドはあきらかにやる気がない。敗退が決まっている故のモチベーションの欠如なのか、日本に遠慮してるのか分からないけど、少なくとも死に物狂いじゃない。こりゃあ1点取って終わらしてあげましょうよ。
日本が1点取ってそのまま1-0で終わり。そういう試合なんだと思いました。・・が、相手のなんでもない攻撃の時に山口が不用意なファールを与える。不用意に与えるCKやFKはゴールにつながることが多い。
非常に嫌な予感がしました。そして案の定ゴール・・・。脳裏をかすめたのはやはり日韓W杯のトルコ戦。あの時は中田浩二のパスミスから与えたCKが失点に繋がった。うーんトルシエ謎采配とか、この失点の仕方とか非常にトルコ戦とかぶる。日韓W杯はあの試合で日本のW杯が終わってしまった・・・。いやいや考えちゃいけない。
このポーランドのゴールの瞬間、左隣のポーランド人が持っていたビールを投げて雄叫びをあげました。投げられたビールは2列前のロシア人カップルの女性に当たって女性はビチョビチョ。その隣にいた日本人が振り返って激しく文句を言ったんだけど、ポーランド人のおっさんは
「あ?知らねえよ。ほっとけよ」
という態度。超こわい。今まで出会った人たちは非常に友好的なサッカーファンばかりだったけど、やっぱりサッカーにはこういう輩もいるんですねえ。ゴールを取られただけでショックなのに、隣にやばい輩が来てしまって非常にネガティブな感じ。でもまあとにかく1点取ってくれればすべて変わる。隣が暴れ出したら移動できる席はいくらでもあるし。
まだ時間はたっぷりある。宇佐美に変えて乾投入。乾頼むよー。セネガル戦の再現を!
ところがどうも攻撃がかみ合わない。乾が倒されていい位置でFK!と思いきやファールを取ってもらえずポーランドのカウンター。レヴァンドフスキにラストパスが渡って、2点目を覚悟したところレヴァンドフスキのシュートはゴールの上に外れました。おお!これはまだ行ける。こういうピンチを乗り切った後はチャンスが来るものだ。・・がその期待は外れて、なかなかチャンスが来ない。
それどころか槙野が判断を誤ってCKを与えたり、あわやオウンゴールというピンチも。うーん早く3人目を投入してくれ!本田、香川、原口の誰かを!
とじれていたところになんと長谷部投入。・・・長谷部??いやそりゃあ頼れるキャプテンなんだろうけど、彼に得点を求めるのか?いよいよ西野監督の迷采配が炸裂してしまったかと動揺したけど、ここから驚きのプランが実行されました。
なんと日本代表はこのまま試合を終わらせるつもりです。後ろでボール回しを展開しました。スタジアムは大ブーイング。どういうこと??このままで上にいけるわけ?後ろの日本人女性に聞いてみると、どうやらセネガルが0-1で負けているけど、勝ち点、得失点、総得点すべて日本と同じでどちらが上かわからないとのこと。うーんファールの数とか得点をした時間帯の速さとかで日本の方が上にいるんだろうか。日本代表スタッフもバカじゃないから少なくとも現時点で日本が上にいるのは間違いないんだろう。ところが前のロシア人の男の子が振り返って、スマホを見せてきてこのままだとセネガルが上だよと教えてくれた。・・確かに彼のスマホ情報ではセネガルが上にいる。どうなってるの??隣の例のおっかないポーランド人に聞いてみた。
「日本は0−1で大丈夫だ。上にいける」
とのこと。わかった。じゃあもうこれ以上点を取らないでねと伝えると、OKだと言って握手してきた。めちゃくちゃ人相も悪いけど、悪い人ではなさそうだ。ちなみに逆隣はインド人の家族。一応日本を応援してくれてるとのこと。つまらない試合になっちゃってごめんねと言うと、笑ってくれました。
ともあれなんで日本が上なのかわからないけど、セネガルが1点返しちゃったら日本が敗退なのは明らかだからこの選択はリスクがあるのは間違いない。そもそも他の試合に自分たちの運命を委ねるなんて嫌だ。僕は周りのロシア人と一緒にブーイングしました。みんなの憧れの舞台じゃないか。1分、1秒たりとも無駄にせずに全力で戦ってくれよ・・。
やるせない思いを抱える中で試合終了。終了時にはセネガルの試合がまだ終わっていないようで、日本代表の面々は喜ぶでも悲しむでもなくピッチにぼーっと突っ立ってる。1分くらいしてみんながハイタッチしているのが見えた。ブーイングが静まってきたスタジアムからもパラパラと拍手が起こる。うーん・・僕が想像していた予選リーグ突破の瞬間と全然違う。試合終了のホイッスルが鳴った瞬間に喜びが爆発すると思ってたのに。
当たり前だけどそれでも敗退するよりはマシ。敗退してたら残りの観光の予定を取りやめてすぐにでも日本に帰りたくなってたと思う。喜んだというよりはホッとして席に座っていると隣のポーランド人が「グッドラック」と言って握手を求めてきました。ビールをロシア人の女の子に浴びせた輩とは思えないほどの優しい笑顔で。ちょっとハラハラさせられたけどこの人と揉めることにならなくて良かった。そういう点でもホッとしました。

グループリーグは突破しました・・・

試合後スタジアムの通路に出ると日本代表サポーター「ウルトラス」の植田朝日さんに会ったので一緒に写真を撮ってもらいました。
今日の試合の感想を聞くと「まあ・・結果オーライでしょう」とのこと。確かに過程はひどかったけど結果はオーライですね。

ママエフの丘に夕日が沈む

灼熱の太陽も沈んできてようやく涼しくなってきました。一旦ホテルに帰ってファンゾーンに入って今晩のイングランドVSベルギーを観よう。勝った方が日本の決勝トーナメント1回戦の相手なのでちょっと楽しみ。

試合後追記
物議を醸したポーランド戦について、色々考えて、人ともたくさん語ったのでちょっと考えを書こうと思います。
まずこの試合の論点は二つあると思います。一つはスタメン6人変更、もう一つは最後の10分間は勝ちにいかずに他会場の試合に運命を委ねたこと。世間ではどちらかというと二つ目が話題になっていたように感じるけど、僕が強く問題と感じたのは一つ目。
あのスタメン変更が決勝トーナメントのための温存策だったとしたら、僕はそれは良くないことだと思う。温存策でなく前の2試合の疲労を考慮するとあのスタメンが3試合目を戦うにあたってベストだと考えたのなら問題ない。なぜ温存策が良くないか。
今回のワールドカップに来てみて強く感じたのは、ワールドカップはサッカーの戦争なんかじゃなくて、世界最高のお祭りだということ。世界中の人が集まってそこで行われる試合を楽しみにしている。次の試合がどうなるかじゃなくて、今ここで行われる試合を楽しみにしている。今日のヴォルゴグラードでもロシア人、両国のサポーターだけでなく、僕が話しただけでもベトナム、インド、香港、バングラディッシュ・・世界中の人がここに集まって交流して、両チームがベストを尽くして戦うのを楽しみにしていました。なにしろ4年に1度の試合ですから。ヴォルゴグラードの人にしてみれば自分の街で観れるワールドカップなんておそらく一生に一度でしょう。
もし選手を温存したのであれば今日の試合ではベストを尽くさないってこと。引き分けでいいんだから90%で戦って、次の試合で100%の力を出せた方がいいという考えだと思う。でも、今日ヴォルゴグラードに集まった人たちは100%の試合を観たいはず。
もちろんワールドカップは選手が行うもの。選手が一番重要。チームや監督、選手の判断が最終的に尊重されるべきで、観客がどう考えようとそれに判断を左右されるべきじゃないと思う。でも観客も欠かせない存在のは間違いない。試合会場の観客が熱狂する試合だからこそ、会場に行けない人たちが世界中でテレビで観戦して、だからこそ世界で一番の熱狂的なイベントになるわけで。試合会場の観客を熱狂させるためにベストを尽くさないといかんと思う。それは勝ち負けの前の話で、その国の全力を尽くすってこと。
ワールドカップを世界一のイベントたらしめているのは、レベルの高い国が集まってベストを尽くすから。なので監督が考えるベストで戦ってほしいんですよね。僕はあのメンバーそのものに文句があるわけではないです。西野監督が考えるベストなメンバーがベンチに座っていたのだとしたら、それが嫌なのです。ポーランド戦が決勝戦だったとしてもあのメンバーで戦ったというなら文句はないです。
グループリーグの3試合目は消化試合になることがあるのも理解してます。その試合に勝とうが負けようが次の試合があるならまだ仕方ない。でも次の試合が確約もされていないのに、その試合に全力を尽くさず次の試合を見据えていたのならそれは僕はワールドカップに失礼だと思う。これは正解はない話で、好き嫌いの問題だと思う。なので色々な意見があると思うけど僕は嫌い。決まってもいない決勝トーナメントなんて見据えるなよと。とにかく目の前のポーランドを倒すことだけを考えろよと、じゃないとスタジアムの観客にも失礼だろと。少なくとも僕は乾、香川、原口がいないスタメンを見てがっかりしました。彼らの疲労がたまっていて、酒井、宇佐美、岡崎がその時点での彼らより良いコンディションだったことを願います(でも本当は温存策だったんだろうと思ってるわけですが)。まあ違うメンバーが出ても同じクオリティのサッカーができるくらいに成熟したチームだったらまた違ったんでしょうけどね。

もう一つの論点のラスト10分のパス回し。これについては会社の同僚と何度か話しましたが、サッカー経験者は「アリ」、未経験者(というか野球派)は「ナシ」という見解が多かったですね。でも僕はサッカー経験者ですが「ナシ」です。
一つ目の論点とダブるけど、やっぱりワールドカップって憧れの舞台じゃないですか。その舞台に立ちたい選手が山ほどいて、その人たちを押しのけてピッチに立ってるわけですよね。泥臭い話になるけどやっぱり1秒たりとも無駄にせず全力で戦って欲しかったですね。0-1なら必ず上に上がれるけど、0-2になってしまうと上がれないというような状況なら、あのボール回しはアリなんだけど、他会場に運命を委ねたという点で、サッカーを放棄してギャンブルしてしまったという感覚ですね。
ただ、あの時点で一番可能性が高い選択肢だった(攻めるとカウンターを食らって失点する可能性の方が高かった)なら仕方ないかなという気持ちもあります。攻めると点を取れる確率よりも失点する確率が高いメンバーだったのだとすれば、だからこそスタメンはベストメンバーにしろよとも思いますが。
あと長友がコメントしていたように思うけど、「這いつくばってでも上に行きたかった」という選手の気持ちもよく分かる。だからこの選択をした日本代表を責める気持ちにはならないです。でも好きか嫌いかと言われれば嫌い。ラスト10分も攻撃して欲しかった。これは立場の違いだと思う。僕は観客だから。サッカーで食べてるわけじゃないし。
一つ目の論点でも書いたけど一番大事なのは戦ってる選手、監督。それは間違いない。なので日本代表チームが好きなようにやればいい。でも観客である僕らは、それをなんでもかんでも受け入れなければいけないかというとそんなことはないと思う。嫌だと思えばそう言えばいい。もし今回の選択を日本の国民の大半が受け入れなかったとしたら、次の代表監督はそういう戦い方をしなくなるかもしれない。今回は比較的「日本もこういう駆け引きができる大人な国になった」という日本代表の戦い方を受け入れる声が大きかったように思うので、今後もし同じ状況が来れば同じことをする可能性は高いけど。例えばアイルランドみたいな愚直な(褒め言葉です)国なら最後まで攻めるでしょうね。これは良い悪いじゃなくて好みの問題だと思う。
だから「アリ」という人も「ナシ」という人もいて良いんだと思う。「アリ派」と「ナシ派」の人が議論を重ねてその国のサッカースタイルというものが出来上がるんでしょうね。
SNSでせっかくロシアまで観に行ったのに残念な試合だったねと友達に言われました。確かに観戦直後はそういう気持ちだったけど、今後の日本サッカーのあり方に一石を投じた重要な試合を目撃したということで消化しようと思います。

Share this:

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です


Comments