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本の感想

伊坂幸太郎「チルドレン」

伊坂幸太郎著「チルドレン」を読んだ。
短編集かと思いきや、最初の短編の登場人物の「陣内」を中心にした一つの長編にも思える。
巻末の解説にあった著者の言葉を借りれば
「短編集のふりをした長編小説」
らしい。
ま、それだけでも今まで読んだ伊坂作品と毛並が違うんだけど、内容もちょっといつもと違う。読者を驚かせるようなトリックとか仕掛けとかもあるにはあるけどいつもよりは控えめ。
そのかわりなんかちょっとホロっとさせるっていうか、いいお話なのね。
登場人物の周りで起こるいろいろな出来事が、だんだん絡み合って最後には一つにまとまるっていう落とし方に伊坂節を感じるんだけど、あーなるほどってだけじゃなくて、ちょっと幸せな気持ちになれるお話ばかり。
全編読んで感じたのは、物事や出来事を一方向から見るんじゃなくて、多面的に捉えると本当の答えが見えたり、あり得ないことを起こせたりするかもしれないってこと。
パンクスの陣内や全盲の永瀬は、世の中のありきたりな既成概念に囚われた物の見方をしない(できない)。だからこそ他の人に見えないことが理解できるし、時には奇跡が起こせる。ありきたりな既成概念に囚われていないから、陣内も永瀬も年齢に関係なく「チルドレン」なんだよね。