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本の感想

夏の入口、模様の出口

川上未映子著「夏の入口、模様の出口」の感想

同世代の女性のエッセイということで、先日読んだ大宮エリーの「生きるコント」とイメージをダブらせながら読みました。
何気ない日々の出来事を個性的な切り口で面白おかしく書いたエッセイという点では同じだったけど、大宮エリーと比べるとちょっとネガティブな感じがしたなあ。
エッセイの中にも何回か出てくる「なんだかなあ」という言葉。
この言葉の持つ雰囲気が全体に漂ってる感じ。
真っ向から否定するでも無く、もちろん諸手を上げて賛成してるわけでもない。
斜に構えている感じかな。
エッセイを面白いと感じられるかどうかって、あるあるというような感覚や、ああなるほどという感覚を得られるか、つまり共感出来るかってことにかかってる気がするけど、大宮エリーと比べるとそういう感覚が少なかった気がしたなあ。
だからって川上未映子が大宮エリーよりも劣っていると言いたいわけじゃないです。
何となく僕と感覚が違うかなって思っただけ。
感覚の違いはあれど、物事を捉える切り口はやっぱり一般の人よりも違った角度だなって感心しました。
(なんかエラソーだけど)
特に良かったのが「無視力」についてのエッセイ。
数年前からタクシーの運転手は
「シートベルトしてください」
と言わなきゃいけなくなった。
言うほうも言われるほうも、建前でやってるってことが分かってるから言われてもシートベルトしません。
シートベルトしなくても、運転手は全く気にしません。
これって言われてみれば不思議な状況だし、誰もが経験してることだけど改めて考えたことあんまりないと思う。こういうところに目を付けられるのってさすがだと思います。
こんなエッセイがいっぱいだったら大満足だったんだけどなあ。
ひらがなが多くて読みにくく感じたのも入り込めなかった一因かも。
「去年のいまごろはなにしてたのだったかな」
なんて、「今頃」か「何」のどっちかは漢字にしても良いんじゃないでしょうか。
ひらがなだとぱっとイメージが頭に浮かばないから、読み込むのにちょっと時間がかかります。
つまりじっくり読むことになります。これってもしかしたら作戦なんだろうか。
文章を書くことを生業としている人の仕事だから、それくらいの作戦は立てるのかもなあ、なんて思ったりしました。

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