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本の感想

有吉佐和子著「悪女について」

有吉佐和子著「悪女について」の感想

富小路公子という「悪女」とされる女性について、27人の登場人物が語っていくというスタイルの小説。その手法はとても新鮮で最初の6、7人までは次々に明らかになる富小路公子の真実にページをめくる手が早くなるんだけど、次第におや?と思うようになります。
27人の証言は真実であるという思い込みで読んでいくのですが、どうも嘘や記憶違いもあるようだ。富小路公子を悪女という人もいれば、あんなに良い人はいないという人もいる。それは富小路公子に二面性があるだけでなく、証言者達の性格や立場によっても受取り方が大きく変わることもあるんだと。
果たして富小路公子がどういう女性だったのかはこの本を読んだ人がそれぞれ考えれば良いと思うんだけど、人間って一言で良い人、悪い人なんて決められないと思う。
土日は優しいパパをしている人も、会社では厳しい人で部下からは鬼上司と嫌われているかもしれない。
富小路公子の長男が次男を不憫だと思っていても、次男は全く気にしていなかったりもする。
主人公である富小路公子が一度も登場せずに、富小路公子をとりまく人達の証言だけで富小路公子を浮き上がらせる。そしてその証言は必ずしも真実とは限らない。もやもやが少し残る部分もあるけど・・・まあ、悪女だったんでしょうね。それもかなりの。
この小説は今年テレビドラマ化されました。富小路公子役は沢尻エリカ。・・・ピッタリです。

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