カテゴリー
本の感想

清水愛砂著「パレスチナ非暴力で占領に立ち向かう」

2012年の年末から2013年の年始にかけて、エルサレムやベツレヘムを旅してから、イスラエルとパレスチナの問題に興味を持つようになりました。行ってみるまでほとんど関心がなかったのは情けないけど、それでも興味を持ち始めることが出来たので旅行して良かったと思ってます。
パレスチナと聞くと多くの日本人は「危険」とか「テロ」というイメージが沸くと思います。私もそうでした。そのイメージは完全な間違いではないのだけれど正しくもない。事実は、パレスチナの人々がイスラエル軍によって攻撃されているためにパレスチナは危険な土地になっているのです。パレスチナの人が危険なのではありません。
もちろん、イスラエルに報復するためにパレスチナの人々もテロを行っているので、イスラエルだけが危険な行為をしているわけではありません。ハマスという過激派組織がイスラエルに向けてロケット弾を撃ち込むこともあります。
この本は著者の清水さんが実際にパレスチナに何度も滞在し実際に目にしたことを記録したものです。パレスチナの人々がイスラエル軍から攻撃されないように、清水さんのような外国人の平和活動家が、パレスチナの人々と行動をともにします。外国人がいればイスラエル軍もそこを攻撃しにくいという理屈です。もちろんその効果は完全ではなく、時には攻撃を受け清水さんも何度か負傷しています。
自分の命を危険に晒しながら、世界平和のために突き進める清水さんのような人は本当に凄いと思う。一方で清水さんのようなジャーナリストの記録を我々はどのように読み解くべきか。
この本を読んで私達がしてはいけないことは「イスラエルはなんて酷い国だ。」と大きな括りでまとめてしまうことです。
清水さんも書かれていますが、まずこの活動はユダヤ人が悪いのではなく、シオニストが問題なのであるとしています。私はそれでも括りが大きい気がしますが、清水さんの場合は実際に自分で行動しているので、具体的に憎むべきものは何かを現場で感じ取ることができるからこの括りで良いのでしょう。
僕が言いたいのは、清水さんのような実際に体験している人の一部の記録を読んだ人が、それよりも大きな括りで憎むべき対象を決めてしまうと、平和に対して何の貢献もしないということだ。僕たちはこの本を読んで一部のイスラエル軍が問題行為を行っていることを理解しなければならない。ただし全てのイスラエル軍やもちろん全てのユダヤ人が悪いというような誤解をしてはいけない。
例えば本の中にイスラエル軍の戦車がパレスチナの子供を追い回したことを、別のイスラエル兵に抗議した逸話が書かれていた。その抗議を受けたイスラエル兵の反応を読む限り、少なくともその兵士はテロリストからイスラエルを守るという使命を感じて任務を遂行しており、不当にパレスチナの人々を苦しめようとしているわけではないということが分かる。僕はイスラエルの肩を持ちたいわけではなく、一部あるいは大部分のイスラエル軍に問題があったとしても、「イスラエル軍が悪い」とひと言で片付けてしまうのは大変危険だと言いたいのです。
日本も韓国と仲が良いとは言えませんが、「韓国」なんて大きな括りで語ってしまうから距離を縮められないのだと思います。僕の会社のグループ会社にも韓国人はいますが皆良い人だし、日本を憎んでいるとは到底思えない。韓国に日本を嫌いな人がいるのは事実だろうけど、それが報道されたからと言って「韓国人は日本を嫌っている」とひと言で片付けるのは本当に危険です。
そのような危険性を十分考慮したとしても、多くのパレスチナの人々が苦しめられているのは事実です。去年旅行した時にはこんなことは全く知りませんでした。
ベツレヘム(パレスチナ自治区)郊外のヘロデオンで、案内してくれたパレスチナ人のタクシー運転手が
「あそこがユダヤ人入植地だよ」
と教えてくれました。なんのことかよく分からず「ふーん」と流してしまいました。
アパルトヘイトウォールも見ましたが、酷いことするなあとなんとなく思っただけでした。旅行前にもっと勉強しておけば良かったと後悔していますが、少なくとも今はこうして関心を持つことが出来たので旅行して良かったなと思ってます。

カテゴリー
本の感想

浅田次郎著「王妃の館」

年末にパリに行くことにしたところ、親がこの本を貸してくれました。
パリのヴォージュ広場にある通称「王妃の館」と呼ばれるシャトー・ドゥ・ラ・レーヌという格式あるホテルに泊まる日本人ツアーの物語。このシャトー・ドゥ・ラ・レーヌは実在するパヴィヨン・ド・ラ・レーヌというホテルをモデルにしています。小説の中で「地球の歩き方」にも載っていないと書いてあったけどモデルとなったホテルはばっちり地球の歩き方に載ってます。
ま、そんなことはどうでも良いのですが、上下巻を読んで3回くらい爆笑しました。・・・が、全体的にはあんまりストーリーに入り込めなかったです。そもそもの設定にかなり違和感を感じてしまいました。ややネタバレですが、どうしても端数の金額も必要だったのであれば150万円のツアーを170万円に価格設定すると思うのです。めちゃくちゃ格式高いホテルなのであれば、まずこんなことしないだろうし・・・。
もちろんフィクションだから多少は無茶な設定があって良いんだけど、要はスマートに騙して欲しいんですよね。今回はちょっとスマートじゃなかったな。
また現代の物語と同時並行でルイ14世の時代の「王妃の館」の話も展開されます。こちらの物語は最初はあんまり面白くないんだけど、どんどん引き込まれていって、結局現代の物語より楽しめたなー。
ということでお話そのものはまあちょっと笑えたと言う程度だけど、パリ旅行のテンションは上がりました。行く予定じゃなかったヴェルサイユにも行きたくなっちゃった・・・。どうしよ。

カテゴリー
本の感想

辺見じゅん著「収容所(ラーゲリ)から来た遺書」

水道橋博士が絶賛していたという本です。いわゆる号泣本で涙無しには読めません。通勤・通学中に読まないで家で読んで人目を気にせずに思いっきり泣きましょう。
僕にとって不幸だったのがたまたまテレビでこの物語の再現ドラマが放送されていたのを見てしまったので、本の途中でオチが分かってしまっていたということ。あれ?これもしかしてこないだテレビでやってたお話??みたいな感じで読んでしまいました。
それでも泣けます。泣けるとかそういう安直な表現をしたら申し訳ないくらいです。
以下ネタバレなので、僕と同じ道を辿りたくない人はとにかく本を読んでから、このブログを読んで下さい。
物語(実話なんだけど)は第二次世界大戦でソ連の俘虜になった山本さんのお話。日本の俘虜たちは日本への帰国(ダモイ)を夢見て収容所生活に耐えます。厳しい労働、わずかな食料、極寒の収容所、仲間の裏切り・・・いつ終わるか分からない俘虜生活の中で次第に希望を失っていく人達も入る中で山中さんはみんなに希望を与えます。
帰国を信じて、また辛い収容所生活の中にもわずかな楽しみを見つけてみんなを勇気づける。それに感謝して山本さんの遺書を日本に届けた人達・・。
人はこうあるべきだ。希望を失わず、どんな境遇にいても喜びを見つけて周りの人を幸せにする。幸せを分けてもらった人はいろいろな形で恩を返すべきだ。
そんな人達ばかりだったら間違いなく世界は平和になる。
山本さんのような人になろう。簡単なことじゃないのは分かってるけどそう思いました。
あとは間違ってはいけないのは、ソ連の人達が悪いということではないということ。戦争が終わったのに、日本人を開放せずひどい重労働に従事させたわけだけど、悪いのは戦争状態にしてしまったということで、その状況下であれば日本人だろうとアメリカ人だろうとどんな人でも非道に走る。
この物語に登場する元日本兵だって満州の人達から見たら酷いことをした人もいたでしょう。
人間を変えてしまうのが戦争。戦争を起こさないことが重要であって、かつての敵国を憎むことは生産性が無い。
・・・理屈ではそう思ってもなかなか難しいと思うけど。

カテゴリー
本の感想

奥田英朗著「サウスバウンド」

上巻は東京の中野を、下巻は西表島を舞台に繰り広げる「家族」の物語。
以前住んでいた中野がリアルに描かれていてかなり懐かしかったなあ。
長男(何故か名前は二郎)の目線で描かれているけど、やっぱり一番いい味を出しているのは元過激派の父親。
西表島編は母親もかなり本領を発揮します。
父親のメッセージはブルーハーツっぽかったなあ。
「革命は運動では起きない。個人が心の中で起こすものだ。」
「これはちがうと思ったらとことん戦え。負けてもいいから戦え。人とちがっていてもいい。孤独を恐れるな。理解者は必ずいる」
過激派とまでいかなくてもこういう気持ちはちょっとでも持っていたいものだなあ。
例え経理の仕事をしていてもね(笑)
都会に住んでいるときは父親に嫌悪感を抱いていた二郎も、西表島に行ってからは次第に父親の素晴らしさを理解しはじめるのと同時に、大人の男として成長していく。
家族全体が暗くならないように、明るく振る舞ったりする気遣いは今の僕でも出来るだろうか。
そんな二郎もやっぱり過激派の血を受け継いでいるなって思ったのは
「常識から外れるのは、どこか快感があった。」
というところ。常識から外れるのが快感な人と不安な人がいるけど、僕はどちらかと言うと後者かな。
憧れはあるんだけど。

カテゴリー
本の感想

中田永一著「くちびるに歌を」

図書館で90人待ちになっているくらい人気がある本。予約してから3ヶ月待ってようやく読めました。
いわゆるザ・青春小説です。
青春の定義ってなんでしょう?いろいろな定義があるだろうけど、青春とは大きく成長出来る時期なんじゃないでしょうかね。そんなことを思いました。
ナズナもサトルもたった1年の間に別人のように変わることができた。その成長は自分の努力だけじゃなくて周りの友人のおかげであることも多い。そういう時期が青春なんでしょうね。
それとささいなきっかけだけで突き進める力。これも青春なんじゃないでしょうか。綺麗な先生が顧問になった、たまたま荷物を音楽室に届けた。大人はこんなことくらいじゃ合唱部に入ったりしません。それくらいのメリットを吹き飛ばすだけのデメリットがあっという間に頭に浮かんで来てしまうから。でもって尻込みして何もしない。
そこへ行くと青春時代の若者達は、「こうしたい!」って思ったら障害は目に入らなくなる。脇目もふらずまっしぐら。
いいね。そういう真っ直ぐで力強く前向きなベクトル。
感動しました。
ただし3ヶ月待った割には・・・という思いも多少はあります。

カテゴリー
本の感想

有吉佐和子著「悪女について」

富小路公子という「悪女」とされる女性について、27人の登場人物が語っていくというスタイルの小説。その手法はとても新鮮で最初の6、7人までは次々に明らかになる富小路公子の真実にページをめくる手が早くなるんだけど、次第におや?と思うようになります。
27人の証言は真実であるという思い込みで読んでいくのですが、どうも嘘や記憶違いもあるようだ。富小路公子を悪女という人もいれば、あんなに良い人はいないという人もいる。それは富小路公子に二面性があるだけでなく、証言者達の性格や立場によっても受取り方が大きく変わることもあるんだと。
果たして富小路公子がどういう女性だったのかはこの本を読んだ人がそれぞれ考えれば良いと思うんだけど、人間って一言で良い人、悪い人なんて決められないと思う。
土日は優しいパパをしている人も、会社では厳しい人で部下からは鬼上司と嫌われているかもしれない。
富小路公子の長男が次男を不憫だと思っていても、次男は全く気にしていなかったりもする。
主人公である富小路公子が一度も登場せずに、富小路公子をとりまく人達の証言だけで富小路公子を浮き上がらせる。そしてその証言は必ずしも真実とは限らない。もやもやが少し残る部分もあるけど・・・まあ、悪女だったんでしょうね。それもかなりの。
この小説は今年テレビドラマ化されました。富小路公子役は沢尻エリカ。・・・ピッタリです。

カテゴリー
本の感想

四十九日のレシピ

読み終わったときは、とても感動してました。
あー良い本だったな。ブログにどんな感想書こうかなと。
で、いざどこが良かったかと改めて考えてみると、もしかしてちょっとありがちな展開だったんじゃないかなって冷めてしまいました・・。
鉄道員の雰囲気というか手法に似てる部分もあるし、
誠実な人は最終的にはある程度報われて、それでいてちょっと嫌な人もこちらに罪悪感が残らない程度のところに落ち着く。
そう考えると、メッセージ性はちょっと少なかったのかな。
一つひねり出すとすれば、死してもなお人に影響を与えられるって凄いなということ。
ただ、乙美さんの場合は夫にも義理の娘にも生前に優しくしてもらえなかったようで、
その辺は悲しすぎるかな・・。

カテゴリー
本の感想

転々

映画が良かったので原作を読んでみました。
読んでみてビックリ。
「東京散歩」というテーマは映画と同じだけど、それ以外のストーリーはかなり違ってます。
映画に出てくるスーパー3人組やふふみは原作には出てこないし、小説でかなり重要な登場人物の美鈴は映画では出てこない。
ただ、それでもどちらの作品も良かったな。映画以上に小説は「東京散歩」を詳細に描いてる。
僕の出身校がある荻窪を通ったり、一人暮らししていた新井薬師も歩く。なにより嬉しかったのは大久保通りを環7方面から中野五差路を二人が通るくだり。これは以前僕が住んでいたマンションの前を二人が歩いたってこと。
もちろんフィクションなんだけどなんだか嬉しかったなー。
そして東京が恋しくなりました。
複雑な環境で育ってクールでたんたんとしている文哉が激しく恋する様も良かった。
映画では多分尺の都合から恋愛関連のエピソードは一切カット。そのかわりに感情を発露する場面としてカレーのシーンがあったんだと思う。あれはあれでとても好きなシーン。
映画も小説も良い作品。
どちらもオススメです。

カテゴリー
本の感想

はじめて資産運用をまなぶ本

先日読んだ「はじめての株1年生」に続いて、今度は「はじめて資産運用をまなぶ本」なる本を読んでみました。
資産運用は株だけじゃなかろうと思って読んでみた次第です。
なんとなく資産運用というと「リスク」という言葉が頭に浮かぶけど、そんなことじゃ日本経済はお先真っ暗だぞとこの本は言ってます。
銀行に預金するのだって投資だし、タンス預金だってインフレのリスクがある。株や投資信託、債券への投資をイメージだけで避けてしまうのは単なる食わず嫌いなわけです。
というわけで、色々刺激になりました。
感想や紹介というよりは、自分への備忘録(図書館に返さなきゃいけないから)として、ブログに残しておこうと思います。
その1:分散投資
株式投資だけでなく債券や短期金融市場(定期預金)に分散して投資せよ。
なおかつグローバル投資が重要。外国企業への投資は難易度が高い場合は、外国株式のインデックスファンドを活用せよ。
その2:時間による分散
時間的分散投資も忘れるな。例えば一定額でコンスタントに株を購入していく「ドル・コスト平均法」もリスク低減の効果がある。
その3:レンガ積みの逸話
これは、投資の話とはちょっと離れたところで刺激になったので。
レンガ積みをしていた3人の職人に
「あなたは今、何をしているのか?」
と、同じ質問をすると、
一人目の答えは
「私は今レンガを積んでいます」
二人目の答えは
「私は今レンガを積んで建造物の壁を造っています」
三人目の答えは
「私は今レンガを積んで、大聖堂を建造することに参加しています。将来子供達に立派な聖堂を見せてやることがたのしみです」
であった。
行為自体は同じでも、見通しているものの奥深さ、志の持ち方によって、その行為に対する意義の捉え方、モチベーションがまったく違ってくるというたとえ話。
株の売買は、目先だけ見れば個人の金儲けのためでしかないかもしれないが、大きな視点で考えれば、経済発展への寄与であるということ。
なるほど。これって投資だけじゃなくて日常生活や仕事でも重要な考え方ですね。
・・・とは言え、個人で儲けられないなら嫌ですけどね。

カテゴリー
本の感想

はじめての株1年生

ようやく日経平均が1万円を超えたし、今年は国債が償還されるということもあって、久しぶりに株を買おうかなということで改めて勉強してみようと思い読んでみました。
株式投資は初めてじゃないけど、売買してたのは随分前だし大した知識も無いので基礎から。
この本はタイトル通り、ゼロから指南してくれます。
さすがに配当金とはとか、単元とはみたいな用語解説みたいなところはさらっと流す。
後半もまあ知らないことはほとんど無かったけど、実践出来ているかとなると別問題。
一番実践が難しいのが、損切りですね。
買った株が値下がりした時に、冷静にその時点での価値や将来性を判断しなきゃいけないのは分かるんだけど、プロの投資家じゃないから、ノルマや期限があるわけじゃないので、ついつい塩漬けしてしまう。
そうやって売れなくなった株が結構あります・・・。
この本では例えば20%下がったら損切りするというような自分のルールを作ると良いって書いてあります。
まあそのルールを作るのは簡単だろうけど、守れるかなあ。