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本の感想

中田永一著「くちびるに歌を」

図書館で90人待ちになっているくらい人気がある本。予約してから3ヶ月待ってようやく読めました。
いわゆるザ・青春小説です。
青春の定義ってなんでしょう?いろいろな定義があるだろうけど、青春とは大きく成長出来る時期なんじゃないでしょうかね。そんなことを思いました。
ナズナもサトルもたった1年の間に別人のように変わることができた。その成長は自分の努力だけじゃなくて周りの友人のおかげであることも多い。そういう時期が青春なんでしょうね。
それとささいなきっかけだけで突き進める力。これも青春なんじゃないでしょうか。綺麗な先生が顧問になった、たまたま荷物を音楽室に届けた。大人はこんなことくらいじゃ合唱部に入ったりしません。それくらいのメリットを吹き飛ばすだけのデメリットがあっという間に頭に浮かんで来てしまうから。でもって尻込みして何もしない。
そこへ行くと青春時代の若者達は、「こうしたい!」って思ったら障害は目に入らなくなる。脇目もふらずまっしぐら。
いいね。そういう真っ直ぐで力強く前向きなベクトル。
感動しました。
ただし3ヶ月待った割には・・・という思いも多少はあります。

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本の感想

有吉佐和子著「悪女について」

富小路公子という「悪女」とされる女性について、27人の登場人物が語っていくというスタイルの小説。その手法はとても新鮮で最初の6、7人までは次々に明らかになる富小路公子の真実にページをめくる手が早くなるんだけど、次第におや?と思うようになります。
27人の証言は真実であるという思い込みで読んでいくのですが、どうも嘘や記憶違いもあるようだ。富小路公子を悪女という人もいれば、あんなに良い人はいないという人もいる。それは富小路公子に二面性があるだけでなく、証言者達の性格や立場によっても受取り方が大きく変わることもあるんだと。
果たして富小路公子がどういう女性だったのかはこの本を読んだ人がそれぞれ考えれば良いと思うんだけど、人間って一言で良い人、悪い人なんて決められないと思う。
土日は優しいパパをしている人も、会社では厳しい人で部下からは鬼上司と嫌われているかもしれない。
富小路公子の長男が次男を不憫だと思っていても、次男は全く気にしていなかったりもする。
主人公である富小路公子が一度も登場せずに、富小路公子をとりまく人達の証言だけで富小路公子を浮き上がらせる。そしてその証言は必ずしも真実とは限らない。もやもやが少し残る部分もあるけど・・・まあ、悪女だったんでしょうね。それもかなりの。
この小説は今年テレビドラマ化されました。富小路公子役は沢尻エリカ。・・・ピッタリです。

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長渕剛

長渕剛ARENA TOUR 2012

ニューアルバムのSTAY ALIVEにかなり感動したので、久しぶりに長渕のライブに行って来ました。
こないだまでやってたRUN FOR TOMMOROWツアーはバンドスタイルのツアーで今回のSTAY ALIVEツアーはアコースティックメインだということなので、こちらに参加。
やっぱり長渕はアコースティックのほうが良いでしょ。
ただ、ファンサイトの掲示板では「ひどいツアー」という評価が多かったのであまり期待せずに行きました。
・・が、とんでもない。僕はファン歴は長いけど、ライブ経験は10回未満とそんなに多くない。
それでもDVDになった東京ドームとか桜島とか横浜スタジアムとか要所要所のライブには参加しました。
それらと比較しても今日のライブは最高だったと思います。
何回か泣きましたね。特に「何故」という歌はCDではそんなに良い歌だと思わなかったけど、ライブでは本当に感動したなあ。無意味に長い拳上げとかもほとんどなくて良かったわあ。
ちょっと「カラオケ」曲が多かったのが残念かな。「愛おしき死者たちよ」はアコギで聴いてみたかったな。
あとは「大阪で生まれた女!」嬉しかったねー。浜田省吾も六甲おろし唄ってたけどやっぱり大阪のファンにはサービスしたくなるのかな。
以下セットリストです(某ファンサイトより)
01 日本に生まれた
02 LICENSE
03 He・La-He・La
04 君のそばに
05 親知らず
06 何故
07 六月の鯉のぼり
08 ガーベラ
09 激愛
10 愛おしき死者たちよ
11 巡恋歌
12 俺らの家まで
13 Myself
14 ひとつ
15 Tomorrow
16 STAY DREAM
17 Stay Alive
18 逆流
アンコール
19 大阪で生まれた女!
20 乾杯
21 しょっぱい三日月の夜

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本の感想

四十九日のレシピ

読み終わったときは、とても感動してました。
あー良い本だったな。ブログにどんな感想書こうかなと。
で、いざどこが良かったかと改めて考えてみると、もしかしてちょっとありがちな展開だったんじゃないかなって冷めてしまいました・・。
鉄道員の雰囲気というか手法に似てる部分もあるし、
誠実な人は最終的にはある程度報われて、それでいてちょっと嫌な人もこちらに罪悪感が残らない程度のところに落ち着く。
そう考えると、メッセージ性はちょっと少なかったのかな。
一つひねり出すとすれば、死してもなお人に影響を与えられるって凄いなということ。
ただ、乙美さんの場合は夫にも義理の娘にも生前に優しくしてもらえなかったようで、
その辺は悲しすぎるかな・・。

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本の感想

転々

映画が良かったので原作を読んでみました。
読んでみてビックリ。
「東京散歩」というテーマは映画と同じだけど、それ以外のストーリーはかなり違ってます。
映画に出てくるスーパー3人組やふふみは原作には出てこないし、小説でかなり重要な登場人物の美鈴は映画では出てこない。
ただ、それでもどちらの作品も良かったな。映画以上に小説は「東京散歩」を詳細に描いてる。
僕の出身校がある荻窪を通ったり、一人暮らししていた新井薬師も歩く。なにより嬉しかったのは大久保通りを環7方面から中野五差路を二人が通るくだり。これは以前僕が住んでいたマンションの前を二人が歩いたってこと。
もちろんフィクションなんだけどなんだか嬉しかったなー。
そして東京が恋しくなりました。
複雑な環境で育ってクールでたんたんとしている文哉が激しく恋する様も良かった。
映画では多分尺の都合から恋愛関連のエピソードは一切カット。そのかわりに感情を発露する場面としてカレーのシーンがあったんだと思う。あれはあれでとても好きなシーン。
映画も小説も良い作品。
どちらもオススメです。

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はじめて資産運用をまなぶ本

先日読んだ「はじめての株1年生」に続いて、今度は「はじめて資産運用をまなぶ本」なる本を読んでみました。
資産運用は株だけじゃなかろうと思って読んでみた次第です。
なんとなく資産運用というと「リスク」という言葉が頭に浮かぶけど、そんなことじゃ日本経済はお先真っ暗だぞとこの本は言ってます。
銀行に預金するのだって投資だし、タンス預金だってインフレのリスクがある。株や投資信託、債券への投資をイメージだけで避けてしまうのは単なる食わず嫌いなわけです。
というわけで、色々刺激になりました。
感想や紹介というよりは、自分への備忘録(図書館に返さなきゃいけないから)として、ブログに残しておこうと思います。
その1:分散投資
株式投資だけでなく債券や短期金融市場(定期預金)に分散して投資せよ。
なおかつグローバル投資が重要。外国企業への投資は難易度が高い場合は、外国株式のインデックスファンドを活用せよ。
その2:時間による分散
時間的分散投資も忘れるな。例えば一定額でコンスタントに株を購入していく「ドル・コスト平均法」もリスク低減の効果がある。
その3:レンガ積みの逸話
これは、投資の話とはちょっと離れたところで刺激になったので。
レンガ積みをしていた3人の職人に
「あなたは今、何をしているのか?」
と、同じ質問をすると、
一人目の答えは
「私は今レンガを積んでいます」
二人目の答えは
「私は今レンガを積んで建造物の壁を造っています」
三人目の答えは
「私は今レンガを積んで、大聖堂を建造することに参加しています。将来子供達に立派な聖堂を見せてやることがたのしみです」
であった。
行為自体は同じでも、見通しているものの奥深さ、志の持ち方によって、その行為に対する意義の捉え方、モチベーションがまったく違ってくるというたとえ話。
株の売買は、目先だけ見れば個人の金儲けのためでしかないかもしれないが、大きな視点で考えれば、経済発展への寄与であるということ。
なるほど。これって投資だけじゃなくて日常生活や仕事でも重要な考え方ですね。
・・・とは言え、個人で儲けられないなら嫌ですけどね。

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はじめての株1年生

ようやく日経平均が1万円を超えたし、今年は国債が償還されるということもあって、久しぶりに株を買おうかなということで改めて勉強してみようと思い読んでみました。
株式投資は初めてじゃないけど、売買してたのは随分前だし大した知識も無いので基礎から。
この本はタイトル通り、ゼロから指南してくれます。
さすがに配当金とはとか、単元とはみたいな用語解説みたいなところはさらっと流す。
後半もまあ知らないことはほとんど無かったけど、実践出来ているかとなると別問題。
一番実践が難しいのが、損切りですね。
買った株が値下がりした時に、冷静にその時点での価値や将来性を判断しなきゃいけないのは分かるんだけど、プロの投資家じゃないから、ノルマや期限があるわけじゃないので、ついつい塩漬けしてしまう。
そうやって売れなくなった株が結構あります・・・。
この本では例えば20%下がったら損切りするというような自分のルールを作ると良いって書いてあります。
まあそのルールを作るのは簡単だろうけど、守れるかなあ。

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やぶさか対談

学生時代に、友人が東海林さだおのエッセイはとても面白いと薦めてくれたんだけど、いまだに1冊も読んだことがないのに気がついて対談集を読んでみました。
東海林さだおはサラリーマン専科とか書いてる漫画家。対談相手は椎名誠。
二人の対談だけじゃないくて、ほとんどの対談はゲストを迎えて3人で展開される。
ゲストは田嶋陽子、大江健三郎、ドクター・中松といった有名人から、秋葉原の実演販売人や無類のラーメン好きなど色んな生き方をしている人を迎える。
二人が凄いなと思うのは、どんなゲストが来てもその人に関連するテーマのお話で盛り上がれるってこと。もちろんゲストは二人が選んでいるから、そもそも二人が興味がある生き方をしている人なんだけど、それにしてもこんなに幅広い人達とよくもまあこんなに話を広げられるものだと感心する。
そして、こういう話が出来る人になりたいなと思う。
自分に関する話で、場を盛り上げることはまだできる。こないだこういう面白いことがあってかくかくしかじか、みたいな。
でも話し相手のテリトリーに入っていって話を盛り上げるのは相当難易度が高いと思う。
決して聞き上手なんていう営業マンのテクニック的な盛り上げ方ではない。
これはトークのテクニックじゃないと思う。二人の生き方が現れてる。色んなことに興味を持って深く知ろうとする、いくつになっても衰えること無い好奇心みたいなものが大切なんじゃないかな。
素敵な生き方。憧れる。
ちなみに僕が一番興味を持ったゲストは大江健三郎。もちろんノーベル文学賞を受賞した人ってことは知ってるけど、難しそうというだけで敬遠してた作家。この人の言葉に対する思慮深さみたいなものは半端じゃない。この対談に来るにあたって、「やぶさか」という言葉について1週間も考えて来たんだそうな。
そういう入れ込み具合に尊敬の念を抱くことはやぶさかでありません。

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3652 伊坂幸太郎エッセイ集

あの伊坂幸太郎がエッセイ集を出しているのかと驚きました。
あとがきで本人が書かれているけど、やはりエッセイは苦手なんだそうな。確かにエッセイスト(そんな職業があるのか分からないけど)が書くエッセイとはちょっと違う。
僕がエッセイを面白いと思うのは目の付けどころが違うなーって感心したり、おもしろおかしい表現に出会えるからなんだけど、このエッセイ集はそういうエッセイとはちょっと違うかなあ。
物事を深く掘り下げて捉えた理屈っぽいエッセイという感じでしょうか。理屈っぽいという表現は批判しているように思われるかもしれないけど、そうじゃないです。
その理屈っぽさは伊坂幸太郎っぽさだと思うのです。
ああ、こういう人だからああいう小説が書けるんだなみたいなそういう感じ。
あと、小説に対する愛情がよく伝わって来ます。伊坂さんの書評は本当に丁寧で紹介されている全ての作品を読みたくなってくる。(ということで佐藤哲也という人の本を1冊読んでみたけど、残念ながらちょっと自分好みではなかった・・)
それにしても10年の積み重ねというのは凄い重みですね。2週間くらいで一気に読んじゃったけど、ちょっと失礼だったかな。

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夏の入口、模様の出口

同世代の女性のエッセイということで、先日読んだ大宮エリーの「生きるコント」とイメージをダブらせながら読みました。
何気ない日々の出来事を個性的な切り口で面白おかしく書いたエッセイという点では同じだったけど、大宮エリーと比べるとちょっとネガティブな感じがしたなあ。
エッセイの中にも何回か出てくる「なんだかなあ」という言葉。
この言葉の持つ雰囲気が全体に漂ってる感じ。
真っ向から否定するでも無く、もちろん諸手を上げて賛成してるわけでもない。
斜に構えている感じかな。
エッセイを面白いと感じられるかどうかって、あるあるというような感覚や、ああなるほどという感覚を得られるか、つまり共感出来るかってことにかかってる気がするけど、大宮エリーと比べるとそういう感覚が少なかった気がしたなあ。
だからって川上未映子が大宮エリーよりも劣っていると言いたいわけじゃないです。
何となく僕と感覚が違うかなって思っただけ。
感覚の違いはあれど、物事を捉える切り口はやっぱり一般の人よりも違った角度だなって感心しました。
(なんかエラソーだけど)
特に良かったのが「無視力」についてのエッセイ。
数年前からタクシーの運転手は
「シートベルトしてください」
と言わなきゃいけなくなった。
言うほうも言われるほうも、建前でやってるってことが分かってるから言われてもシートベルトしません。
シートベルトしなくても、運転手は全く気にしません。
これって言われてみれば不思議な状況だし、誰もが経験してることだけど改めて考えたことあんまりないと思う。こういうところに目を付けられるのってさすがだと思います。
こんなエッセイがいっぱいだったら大満足だったんだけどなあ。
ひらがなが多くて読みにくく感じたのも入り込めなかった一因かも。
「去年のいまごろはなにしてたのだったかな」
なんて、「今頃」か「何」のどっちかは漢字にしても良いんじゃないでしょうか。
ひらがなだとぱっとイメージが頭に浮かばないから、読み込むのにちょっと時間がかかります。
つまりじっくり読むことになります。これってもしかしたら作戦なんだろうか。
文章を書くことを生業としている人の仕事だから、それくらいの作戦は立てるのかもなあ、なんて思ったりしました。