2020年映画パンフレットランキング!

例えどんなに映画がつまらなくてもパンフレットは必ず買います。
映画を観た日はその映画に浸っていたいので、パンフレットを読んで反芻するのです。たいていはそれで終わり。一度しか読みません。
なので溜まってきたらメルカリに出品しているのですが、中には「これは手元に残しておきたい!」と思えるパンフレットに出会うことがあります。
今回は2020年に観た映画のパンフレットで良いなと思ったものをランキングにしてみました。
※あくまでパンフレットとしてのランキングなので、映画の良し悪し、好き嫌いは関係ありません。

1位 ミッドサマー

編集・発行:ファントム・フィルム
デザイン:大島衣堤亜
絵:ヒグチユウコ
編集協力:中谷祐介
印刷:アベ印刷
定価:818円+税

これはなかなかぶっ飛んでいるパンフです。発行部数がどれくらいあるのか知りませんが、よくもまあ800円そこいらでこんなに凄いパンフレットが作れたものだと感心してしまいます。
全ページ型抜きで、表紙と裏表紙は袖口が織り込まれた仕様になってます。
後ろの方のページにはなんと金色の印刷もあります(下の写真参照)。

予算を管理する編集者と強烈なこだわりを持つデザイナーとの激しい衝突が目に浮かんできます。
「いや、こんなところにお金をかけなくても良いじゃないですか。型抜きだけでもう十分でしょう。4色(CMYK)印刷で行きましょうよ」
「馬鹿言っちゃいけない。ここは特色を使うから意味があるんだ。金が使えないなら俺は降りる。」
と、まあこんなやりとりがあったかどうか分かりませんが、どこかで誰かが苦労したのは間違いないでしょう。
おつかれさまです。

勉強不足で、大島衣堤亜さんというデザイナーを知らなかったのですが、映画パンフレットのデザインで有名な方で「大島依提亜と映画パンフ」という本まで出ているくらいです。

そのこだわりの金色ページの向かい側にはヒグチユウコさんという画家のイラストが。

ヒグチユウコさんの絵

むちゃくちゃ気持ち悪いですね。いや、映画もそんな感じだからこれで良いのですけど。

そして解説も充実。謎に包まれた映画の分析がしっかりなっされていて、キーワードが解説されてます。こういう謎めいた映画にはお決まりの映画評論家町山智浩さんのエッセイもあり。
近年稀に見る素晴らしいパンフレットでした。

キーワード解説もしっかり

2位 mid90s

表紙A面
表紙B面

発行:株式会社トランスフォーマー
デザイン:石井勇一(OTUA)
絵:ヒグチユウコ
編集協力:中谷祐介
定価:800円(税込)

映画と同様に実にクールな仕上がりのパンフレット。
雑誌風の作りで右綴じ本としての表紙が本来の表紙なんだろうけど、裏表紙も表紙っぽくてそちらから読み進めると写真集のような作りになってます。
90年代の西海岸スケーターカルチャーの映画なので、この辺りの解説も充実。まあLAの地図を出されてもさっぱりわからないけど、90年代の年表は胸熱です。

90S年表は熱い!

3位 私をくいとめて

発行承認:日活株式会社
編集・発行:松竹株式会社 事業推進部
編集:岩田康平(松竹)
テキスト協力:羽佐田揺子、長濱亮祐、遠藤薫
デザイン:吉川俊彰、須藤知華(PLAINS)
印刷:株式会社久栄社
定価:819円+税

映画と同様に賑やかで楽しいパンフレットです。
監督、出演者のインタビューはもちろん、原作者のインタビューもあり、写真も文字もたっぷり充実です。
FOXサーチライトマガジン的な雑誌みたいな作りだなーと思ってたら、中面に雑誌Hanako風の「Mitsuko」なるページがあって、Mitsuko的なファッションチェックやらライフスタイル、お部屋紹介など映画を観終わった後も映画の世界観に浸れる作りになってます。

中面に雑誌が!
キャラクターのファッションチェックもあります
情報量も豊富

4位 TENET テネット

編集・発行:松竹株式会社 事業推進部
編集:岩田康平(松竹)
デザイン:垣花誠、志氣慶二郎
テキスト協力:稲垣貴俊、よしひろ まさみち、木川明彦
印刷:成旺印刷株式会社
定価:819円+税

これはですね・・。パンフレットが良いというか、パンフレットが必須なのですね。映画とパンフレットがニコイチで、パンフレットがなければ映画がほとんど理解できないのです。
パンフレットの解説を読んで「ああそういうことなのか」となりました。
できればそういう膝を打つ感じは映画を観ている最中に感じたいのですけども・・。
ただまあこのパンフレットがありがたかったことには間違いないのでランクインです。

こういうキーワードを鑑賞中に全部理解するのはほぼ不可能です
時系列もパンフレットで要確認

5位 破壊の日

発行:株式会社imagination
編集:小野寺隆一
著者:Mr.やぶれかぶれ
定価:1000円(税込)

このパンフは素晴らしいとか良いとかそういうことではなくて、いかれてるという意味で凄いパンフレットです。
東京オリンピックの開幕予定日だった2020年7月24日の公開に向けてコロナの活動自粛下で作られた映画。この公開日に観ることに意味があると感じて、上映時間は夜だったにもかかわらず、朝イチで席を予約するべく出町座へ。
無事一番乗りで席を予約して家に一旦帰る前にパンフレットを買いました。
1000円のパンフレットは80ページもあってかなりのボリュームです。
帰りのバスで「さ、パンフを見てみようか」とパラパラっとページをめくって度肝を抜かれました。
全ページモノクロで文字がぎっしり。写真はほぼなし。
表紙をよく見ると21万字の製作日誌だという。
実はこの映画のクラウドファンディングに参加していたのですが、その特典として毎日製作日誌がメールで届けられていました。
それを冊子に起こしたものだそうです。
ただでさえものすごい文字量なのに文字間が詰まってて実に読みにくい。
製作者の気概を感じて、よし読みきってやろうじゃないか!と気合を入れたけど・・結局無理でした。全部は読んでません。

しかもこんなにボリュームがあるのに監督や出演者のインタビューは無し(監督の話は製作日誌の一部として出てくるけど)。めちゃくちゃとんがってますね。

文字がぎっしり・・
数少ない写真の一つです

ま、映画もいわば狂気の映画ですので、映画にふさわしいぶっ飛んだパンフレットということでランクインです。


6位 アルプススタンドのはしの方

発行:株式会社スポッテッドプロダクションズ
編集:直井卓俊
デザイン:寺澤圭太郎、鈴木規子
スチール:柴崎まどか
協力:籔博晶、半田桃子(gina creative management)、久保和明(レオーネ)、EPICレコード、猪股祐一郎
定価:1200円(税込)

映画ファンの間で人気が高かった本作品。正直僕はあまり刺さらなかったので、1200円というなかなか高めの値段設定にひるんだけれども、映画が面白くてもつまらなくても必ずパンフレットを読むというポリシー(半ば意地)なので買いました。

ただ中身はさすがに1200円するだけあってなかなか充実してます。本作と同様に映画ファンの間で人気が高かった「音楽」の原作者大橋裕之の漫画も収録(お世辞にも面白いとは言えないけど)。

大橋裕之の漫画も収録

そして何よりありがたかったのは原作戯曲のシナリオが巻末に収録されてるところです。本作の原作は東播磨高校演劇部の演劇なのです。
映画だとどうしても舞台が甲子園だと信じきることができなかったけど、演劇なら「ここは甲子園だ」って違和感なく楽しめると思う。
演劇向きの作品だなあと思いましたので演劇の脚本は映画そのものよりも楽しめました。
ちょっと残念なのは奥付に印刷会社の記載がなかったこと。
kinko’sとかの簡易印刷だったのかな?編集、デザイン、協力を書くなら印刷会社も記載してあげてほしかったです。

演劇のシナリオも収録

7位 ジョジョ・ラビット

発行・編集:株式会社ムービーウォーカー
発行人:五十嵐淳之
編集:下田桃子、別所樹
編集協力:宇野維正、平井伊都子
デザイン:塚原敬史、岩間良平(trimdesign)
印刷:大洋印刷株式会社
定価:764円+税

ジョジョ・ラビットのパンフレットがとりわけ素晴らしいというよりも、FOXサーチライト・ピクチャーズスタジオのパンフレットシリーズの作りが素晴らしいです。
「マガジン化」することで映画ファンのコレクター魂をこちょこちょくすぐってきます。
映画のパンフレットがたくさん増えていくのが嫌な理由の一つとして、その形やサイズがバラバラだから書棚にしまいにくいというのがあります。
中でもマトリックスの超特大サイズのパンフレットは最悪でした(メルカリでも未だに買い手がつかない)。
そこんところ、このFOXサーチライト・マガジン方式は最高です。企画サイズが統一されていて書棚に飾っても美しい。

キャストの対談あり
監督インタビューあり

内容も充実していて監督やキャストの対談、コラム、写真も盛りだくさん。
読み応え十分です。
巻末にはマガジンらしく、FOXサーチライトスタジオの説明や他の作品紹介もされています。

FOXサーチライトのポリシー紹介もあり

8位 家族を想うとき

発行・編集:ロングライド
デザイン:石川瑛美(ヘルベチカ)
印刷:三映印刷
定価:728円+税

「わたしは、ダニエル・ブレイク」で知ったケン・ローチ監督は労働者や社会的弱者の視点で社会の格差や貧困の現実を描くことが多い監督さんだそうです。
本作もそういう作品なのですが、家族のあり方にも焦点を当てています。
家族を描くといえば是枝裕和監督だなーと思っていたら、なんとパンフレットにはケン・ローチ監督と是枝監督の対談が載ってました。
冊子としての作りはいたって普通のパンフレットですが、この企画は素晴らしい。内容はケン・ローチ監督のフィルモグラフィについて二人で語るものなのですが、当たり前のように一つ一つの作品を語れる是枝監督ってやっぱり映画が好きなんだろうなあって思いました。

ケン・ローチ監督と是枝裕和監督の対談

9位 パピチャ 未来へのランウェイ

発行承認:株式会社クロックワークス
編集・発行:松竹株式会社 事業推進部
編集:広瀬友介(松竹)
デザイン:石井勇一(OTUA)
印刷:三映印刷
定価:746円+税

いろいろな国のモスクに行ったことがありますがどこも清潔で時折見られるアラベスクのデザインがとても綺麗。
本作はイスラム原理主義に反抗しながらデザインの道を歩もうとする女性の物語なのですが、それにふさわしい素敵なデザインのパンフレットでした。
全ページのフチにアラベスクな模様がデザインされています。
とりわけ表紙の「PAPICHA」のロゴが好きです。

デザイナーは石井勇一さんという方で2位のmid90sもデザインされた方ですね。

各ページのフチも素敵
内容も充実してます

いかがでしたでしょうか!
僕は映画は1日1本までと決めていて、一つの作品を観終わった後はしばらくその余韻に浸るのですが、その時にパンフレットはとても良いお伴になってくれます。
これからも良いパンフレットがあれば紹介したいと思います!
ちなみにこの記事を作成中に観た「花束みたいな恋をした」のパンフレットも非常に好きな仕上がりになってるのですが2021年鑑賞なので対象外としました。

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