2019年上半期映画ランキングベスト25!

CHANNELCINEMA.COM管理人の私が観た映画のランキングを発表しています。2019年上半期は劇場で25本観ました。だいたい週一ペースですね。このランキングを参考にして一人でも多くの方が映画館に足を運んでいただけると嬉しいです。

良かった!と思える作品があれば、CHANNELCINEMA.COMでその作品に投票して感想を書いていただければ幸いです。それでは、2019年上半期の映画ランキングをどうぞ!

1位
ブラック・クランズマン


監督:スパイク・リー
出演:ジョン・デヴィッド・ワシントン/アダム・ドライバー/トファー・グレイス

前略 スパイク・リー様

今から30年近く前、高校生だった僕はあなたにPublic Enemyを教えてもらいました。
中野ブロードウェイのBLOXでマルコムXのCAPも買いました。
今思えば当時の僕はただのミーハーでしたが、ともあれヒップホップの世界に導いてくれたのは間違い無くあなたでした。
まあ、ヒップホップの世界にはさほど深く立ち入らずに早々に退散しましたが。

そんなあなたがアカデミー賞の晴れ舞台のスピーチで
Do The Right Thing!
って叫んだときは感きわまるものがありました。
アカデミー作品賞がグリーンブックに決まった時、納得がいかないあなたは会場を出て行こうとしたようですね。
還暦も過ぎたというのになんと大人気ない振る舞いでしょう。
確かにあなたのブラック・クランズマンは凄い作品でした。
エンタメっぷりも強烈なメッセージも音楽もファッションも最の高です。
それでもやっぱりグリーンブックがアカデミー賞にふさわしいのです。

なんせあなたの劇薬は口に苦すぎなのです。
賞を狙うのであれば苦い薬はちゃんとオブラートに包まないと。

でもね。それでいいじゃないですか。あなたのそういうところがみんな大好きなんだから。
少なくとも僕は拳を突き上げ続けるあなたが大好きです。
今も30年前もお互い変わらずなによりです。
そうか。30年ですね。
Do The Right Thingは平成元年、ブラック・クランズマンは平成最後の年ですか。
あなたは知る由もないだろうけど、あなたも平成を駆け抜けたんですね。

早々
平成三十一年三月二十三日
CHANNELCINEMA.COM拝

2位
ヴィヴィアン・ウエストウッド 最強のエレガンス


監督:ローナ・タッカー
出演:ヴィヴィアン・ウエストウッド/アンドレアス・クロンターラー/ケイト・モス

当の本人が退屈な映画と評す最高傑作

年末年始にキューバを旅行した時に、現地で出会ったベルギー人の親子と2日ほど一緒に行動しました。
13歳のGaspardは非常に聡明で明るい男の子。両親は彼が4歳の時に離婚して、今回のキューバ旅行は実の父親Axelと二人きりの旅。この親子の関係が僕から見るとちょっと不思議で、お互いがとても独立しているというか、あんまり一緒に行動しようという雰囲気がない。かといって仲が悪いわけでもなく。
サンタクララという街で夜に音楽バーに行くことになった時に、Gaspardはまだ子供だったからバーに入れなかった。
僕の感覚なら、仕方ないねって断念して父親も一緒に宿に帰ると思うんだけどなんとAxelは
「じゃあお前一人で帰ってろ。帰り道はわかるだろ?」
と言い出したのです。いやいや!キューバは治安がいいとはいえ、今日初めて来た土地で今は夜の11時ですよ?ここから宿に一人で歩いて帰らすの?するとGaspardもGaspardで
「うん。わかった」
あまりに可哀想だろう。自分だけ楽しめずに一人で帰らされて、部屋で待つの?Gaspardがあまりに不憫だったので、僕らの宿(その音楽バーの目の前だった)で待ってもらうことにしました。Gaspardは
「優しいんだね。本当にありがとう。僕のことは気にしないで楽しんできて!」
と大人の僕でもできないような気遣いを見せてくれました。

映画と全然関係ない話が長くなっちゃったけど、要するにですね。欧米の人ってまずは自分が楽しむ!ってことを優先するのかなって思ったのです。
もちろんこの親子の関係だけを見て、全ての欧米の人がそうであるとは言わないけど、親父さんはどうしてもこのバーに行きたかったんでしょうね。(実際Axelがここに行きたいって言い出したし)
息子が入れようが入れまいが俺は行きたいと。
良いか悪いかは別にして日本人の親子の感覚だとあんまりないんじゃないでしょうか。子供の幸せを優先するというか。
特に日本の女性はそういう環境に置かれていると思います。誰かの彼女、誰かの奥さん、誰かのお母さんという肩書きになりがち。
自分の幸せよりも誰かの幸せを優先しなきゃいけない。夫や子供の幸せが自分の幸せであると感じるように刷り込まれてるというか。
繰り返すけど良いか悪いかは別としてです。誰かの幸せのために生きるっていうのも、時には良いことだと思うし。

ただそういう考えとは別の考えの素敵な生き方があるというのも間違いない。その最たるものがヴィヴィアン・ウエストウッドの人生。
彼女も夫を支える慎ましやかな妻という生き方を選びかけた時もあったようだけど、そうしなかった。まあ多分できなかった。
夫や子供に対してもまず自分ありき。わがままというのとはちょっと違う。
夫に知的魅力を感じなければ別れるし、子供かビジネスパートーナーか選択しなければならない時にも冷静にビジネスパートナーを選ぶ。

そうやって自分の幸せを追求することが、結果周りの人を幸せにするというあり方が理想なんだろうなあ。

もう一つヴィヴィアンのカッコイイところは常に未来を見て、過去に興味がないということ。
この映画を見終わってヴィヴィアン・ウエストウッドの店舗に行って、そこの店員に聞いたのですが、ヴィヴィアンとアンドレアス(ヴィヴィアンの今のパートナー)はこの映画について
「過去をまとめた退屈な映画」
と評しているそうです。そこがまたかっちょええ。

2019年1月19日(土)鑑賞

3位
記者たち 衝撃と畏怖の真実


監督:ロブ・ライナー
出演:ウディ・ハレルソン/ジェームズ・マースデン/ロブ・ライナー

陰謀論は誠実に

社会の闇を暴く陰謀論絡みの映画は大好物なもんで、辛抱たまらず早速観てきました。京都シネマの最初で最後のポイント特典鑑賞で。

イラク戦争のウソを暴くジャーナリストの映画なので、
ベトナム戦争のウソを暴く「ペンタゴン・ペーパーズ」と似ている。
現に記者たちのパンフにも「類似作品」としてペンタゴン・ペーパーズが紹介されているんだけど、似て非なる映画。まあ別の映画なので、そりゃあ非なる映画なのは当たり前なんだけど、僕の中では正反対の位置にいますね。

「記者たち」は非常に誠実な映画。
この映画を賞賛するために別の映画を貶めたくはないけど・・。
政治家のウソによって国が戦争に巻き込まれていくとき、その原因を大統領とか一個人に帰着させるのは、トカゲの尻尾切りでしかない。
オレオレ詐欺の出し子を捕まえて、
「ハイ、こいつが悪党でした。これにて一件落着」
って幕引きしようとする警察はとても誠実とは思えない。
むしろそんな警察は親玉とグルになってる。
ペンタゴン・ペーパーズにはそんな匂いがしました。だってワシントンポストもニューヨークタイムズも権力者の広報みたいなもんなんじゃないの?監督スピルバーグって、それって・・。

と、モヤモヤした一方でこの映画。
ニューヨークタイムズはプロパガンダってセリフもあってかなり僕の妄想に近い憶測に近い立ち位置を感じる。
もちろん悪党の親玉に近づけているのかというとそんなことはないんだけど、少なくとも出し子を親玉だと言って問題が解決したように装うよりも、残念ながら犯人は捕まえられなかったが、まだどこかでのさばってるから気をつけろと警告を発する方が信頼できる。

ロブ・ライナー、ウディ・ハレルソン、トミー・リー・ジョーンズといった大物を揃えながらもミニシアターでしか上映されず、
スピルバーグ、トム・ハンクス、メリル・ストリープのペンタゴン・ペーパーズは全国シネコン上映というあたりにも闇を感じる。

ま、諸々妄想コミコミなので、各自自己判断してくださいませ。
2019年3月31日(日)鑑賞

4位
愛がなんだ


監督:今泉力哉
出演:岸井ゆきの/成田凌/江口のりこ

好きの形に正解なし

主人公テルコを演じる岸井ゆきの。実に可愛い。実に可愛いのだけれどもしかし、非の打ち所がないかというとそうでもなくて、ふとした表情はあれ?ちょっとブサイク?と思わないでもない。
でも岸井ゆきのの笑顔は最強ですね。それこそ非の打ち所がない。
そんな岸井ゆきのの笑顔についつい騙されて、テルコがんばれ!幸せになって!と応援するのだけれども、冷静に考えるとテルコの「好き」のあり方は全く共感できない。
自分はこうはなりたくないし、知人にテルコのような人がいたら説教をしてしまうかも。
テルコ可愛い!!マモルってサイテーって第一印象なんだけど、共感できるのはなぜかテルコではなくマモルという不思議。

でも、タイトルの「愛がなんだ!」のシーン。
愛とか恋とか知らねーよ!私には私の生き方があるんだ!
って力強く宣言している気がして、そうかーそれなら仕方ないかもね。誰も止められないよね、頑張ってねってなったな。

「好き」の形に正解なんてないんですよね。
でも、テルちゃん・・いつか後悔すると思うぜー(笑)
2019年5月2日(祝)鑑賞

5位
サスペリア


監督:ルカ・グァダニーノ
出演:ダコタ・ジョンソン/ティルダ・スウィントン/ジェシカ・ハーパー

決してひとりでは見ないでください。

決してひとりでは見ないでください。
いかにもホラーにありがちな安易なキャッチコピーだなあと思っていたら、これは1977年のオリジナル版のキャッチコピーなんだそうです。
オリジナル版は観ていないけれどもホラー映画の金字塔的な作品らしいから、素直に「めちゃくちゃ怖いから」ひとりで見ないほうがいいよという意味だったんでしょう。

でも、このルカ・グァダニーノ版サスペリアはちょっと違う。
怖いというより、分からない。
え?あれって結局どういう意味だったの?というシーンのオンパレード。
僕は忠告に従わずひとりで観てしまったので、悶々とするしかありません。誰かと観に行っていれば、お互いの意見交換に花が咲いたことでしょう。
どう解釈したのか、人と話したくなる作品。そういう意味で
「決してひとりでは見ないでください。」
と言いたいですね。誰かと観てください。そして語ってください。

ということで、かなり難解な作品だったのですが、公式サイトで公開されている町山智浩さんの解説で救われました。こういう作品はまず観て、考えて、人の考察を聞いてまた考えてと何度も楽しめるのが素晴らしいですね。
池波正太郎が
映画は1日1作品にしておけ、その日はその映画の余韻を楽しむべきだ
というようなことを仰ってましたが、こういう作品を観ると確かにその通りだと思えます。

ということで、僕なりの考察をここで披露できたら良いのですが、町山さんや他の映画レビューを上回る考察は何一つないです。残念ながら。ただ強烈に感じたことを一つだけ。
それは、レストランの食事のシーンです。
見た目はフツーのおばちゃん(実は魔女なんだけど)が10人くらいレストランに集まって、賑やかに談笑しながらモリモリ食事しているシーン。大声で話して笑って実に楽しげなのに、観ている僕はどこかに違和感を感じて落ち着かない。
何故か。

はっきりした答えはまだ見つかってないけどつまるところ、「彼女たちが女性だったから」というのが答えのように思います。
彼女たちが全員男性だったら、フツーの食事のシーンに見えたのではないか。
女性だけで集まって、山盛りの食事を注文して大声で話して豪快に笑い飛ばす。どの行為も禁止されてることでもなんでもないのに、実はあまり見たことがない光景。
社会において、女性とはこうあるべきものの定義から外れてるからなんじゃないですかね。
女性は公の場では男性のお供であり、小食であって、おしとやかであるという社会の決め付けから外れていることが、不協和音のような違和感を感じさせたように思います。
そういうものに対する反抗だとか、解放だとかそういうメッセージ性もあるシーンだったのかも。
お!何やら考察っぽいですねえ。

2019年2月3日(日)鑑賞

6位
グリーンブック


監督:ピーター・ファレリー
出演:ヴィゴ・モーテンセン/マハーシャラ・アリ/リンダ・カーデリーニ

Love Letters to Dolores

仕事である以上は
「頑張ったけど、結果は出ませんでした!」
ではダメだというのは分かるけども、少なくとも努力をしている人は好感が持てる。
努力は十分条件じゃないけど、必要最低限の条件だと思ってます。
これは仕事に限ったことではなく、遊びでもおしゃべりでも全力の方がいい。
親父にそう教わった主人公トニーは食べること、笑うこと、喋ること、仕事、賭け事とにかく全てフルスロットル。
だからめんどくさがっていた妻への手紙も書くとなれば彼なりの全力を振り絞る。

グリーンブックは人種、育ってきた環境、立場を超えた友情がテーマだけど、僕が一番心を揺さぶられたのはこのトニーの手紙のエピソード。
デタラメなスペルで今日あった出来事がありのままに書きなぐられただけのトニーの手紙は、仕事で例えれば
「頑張ったけど結果は出ませんでした!」
なのかもしれない。
この全力投球だけが取り柄の手紙が、黒人ピアニストのシャーリーとの旅を通じてどんな変化を見せたか。
そしてそれが妻ドロレスにどう伝わったか。
実に・・良かったです。

パンフレットによれば、トニーの息子であるニック・バレロンガがつけたこの映画の元々のタイトルは
「Love Letters to Dolores」
だったんだそうです。
そうでしょうそうでしょう。分かりますよとニック氏と両手でしっかり握手したい気分。
監督のピーター・ファレリーがタイトルにするのは却下したそうだけど、
僕には思いっきり手紙の映画に仕上がってました。
2019年3月2日(土)鑑賞

7位
アリータ:バトル・エンジェル


監督:ロバート・ロドリゲス
出演:ローサ・サラザール/クリストフ・ヴァルツ/ジェニファー・コネリー

日本式の強い女

「強い女」が主人公の映画はそんなに珍しくない。
パッと思いつくのはエイリアンのシガニー・ウィーバー、バイオハザードのミラ・ジョヴォヴィッチ、トゥームレイダーのアンジェリーナ・ジョリーあたり。
彼女たちの共通点は見た目からして強そうで、そこらへんの男よりも男らしいということ。強そうを通り越してやや怖い。

そこんところ日本映画の強い女は違う。極妻の岩下志麻のようなこわもてもいるものの、セーラー服と機関銃の薬師丸ひろ子とか、風の谷のナウシカとか、小柄でか弱そうな見た目が特徴。
この傾向は日本人男性のロリコン趣味が故なのかもしれない。たいていの日本人男性はエイリアンと戦うリプリーよりも王蟲を束ねるナウシカの方が好きでしょう。ええ、もちろん僕もそうです。

アリータはハリウッド映画だけど日本の「銃夢(ガンム)」という漫画が原作なので、見た目は可愛らしいけれども、実はめっちゃ強いという日本式の強い女が主人公。
目がやたら大きくて予告編ではキモいとしか思えなかったんだけど、不思議と違和感はあっという間に消え去って、可愛くてたまらない状態に。
首から下は完全にロボットで、自分の心臓を取り出したりもするんだけどなぜかカワイイ。
で、そのか弱そうな女の子が実は最強バーサーカーで、キレキレの武術(機甲術)でいかつい筋骨隆々の敵と戦っていくそのギャップがたまらんのです。

ただ、こういう感覚はやっぱり男目線なのかも。女性もこの映画を見て、アリータカワイイ!アリータ頑張れ!ってなるのかは甚だ疑問。
2019年2月23日(土)鑑賞

8位
ファースト・マン


監督:デイミアン・チャゼル
出演:ライアン・ゴズリング/クレア・フォイ/カイル・チャンドラー

月面着陸否定派も楽しめます

アポロ11号は実は月に行ってなくて、月面着陸の映像は実はスタンリー・キューブリックが捏造した映像という陰謀論というには大げさないわゆる都市伝説があります。
僕はそれを信じているわけじゃないけど、捏造だったら面白いなあと思ってます。

初の月面着陸からちょうど50年経った2019年の映画としては、「月面着陸した」映画よりも「実は月面着陸は真っ赤な嘘でした」映画の方が観てみたい気はします。監督はマイケル・ムーアでどうでしょう。

ファースト・マンは当然そういう類いの映画ではなく月面着陸映画。
だけども、月面着陸を疑って観ていると
「あれ?もしかして、やっぱり本当に月には行けなかったんじゃないの」
とますます疑いが強まってしまう作品でした。(・・そういう人は多分少数派ですが)
ま、人間は自分に都合の良いように解釈してしまう生き物ということかもしれません。

なんかこう・・色々な失敗を乗り越えて月に行くんだけど、なぜ乗り越えられたのかがよく分からない。
練習で一度も成功させたことのないトリプルアクセルをオリンピック決勝で突然決めたような感覚。
実際のアームストロング船長は無口で多くを語らない人だったそうだけども、語らないというか語れないだけなんじゃないかとか・・ね。

ポイントは「もしかしたら行けてないんじゃないか」ってところです。「行ってないに違いない」までいってしまうとつまらないでしょうが、「ひょっとすると」程度に疑って観ると想像が膨らんできてなかなか面白いです。
なんでわざわざそんな嘘を?という疑問に対する答えもいっぱい描かれています(笑)
監督ももしかしたら半信半疑なんじゃないかってくらいに、月面着陸の偉業を手放しで讃える作品ではないです。
月へ行った宇宙飛行士の話ではなく、まず父親であり夫である一人の男が月へ行った話でした。

ちなみに都市伝説には続きがあって、月面着陸の捏造映像の依頼を受けたキューブリックは、完璧主義者だったためその映像を月まで行って撮影したと言われているそうです(笑)

2019年2月16日(土)鑑賞

9位
響け!ユーフォニアム ~誓いのフィナーレ~


監督:石原立也
出演:黒沢ともよ/朝井彩加/豊田萌絵

眩しすぎる青い春

高校サッカー部の最後の大会に負けた日。夕食を食べていて涙が止まらなくなったのを今でもよく覚えてる。
試合後は泣かずに、夕食の時に泣いた。
その時も薄々分かっていたけど、僕は試合に負けて悔しくて泣いたんじゃない。
サッカー部としての高校生活がこれで終わった。正月以外は毎日練習した日々が今日で終わり、本当にもう明日は練習がないんだってことを実感して泣いた。
最後の試合の相手は自分たちより数段上であることが明らかで、そこに勝つために本当に一生懸命やっていたけど、心の底から勝てるという自信は最後まで持てず、負けた後もやっぱりかという感じだった。
そのチームに勝って都大会に出るという目標に向かってはいたけどどこかで無理だろうという諦めがあった。
だから負けても、悔しさでは泣けなかった。
どこかで自分たちの力を客観的に測ってた。

だからこの映画の北宇治高校生たちがすごく眩しかった。結果を恐れず全力で目標に向かって走ってる。
トランペットの高坂が中学時の大会で負けて号泣しているのに驚いた黄前の気持ちはよく分かる。
そうか、それほど本気だったんだと。
単に部活が終わることが寂しいのではなく、勝負に負けたことを悔しがれるほどに本気で突き進める純粋さ。
大人になるとほどんどの人が失う。というかもともとそんな気持ちを知らない人も多いはず。成し遂げられなかったら泣いてしまうほどの努力をしているか?

鑑賞中どことなく恥ずかしくて何度も赤面したのは、彼女たちの真っ直ぐさを僕は今はおろか高校時代ですら持ち合わせていなかったからだ。
こんなに純粋で真っ直ぐな高校生活を過ごせる人は少ないでしょう。本気で一生懸命になれるものを見つけた人が羨ましい。
眩しいね。
2019年5月6日(祝)鑑賞

10位
バジュランギおじさんと、小さな迷子


監督:カビール・カーン
出演:サルマーン・カーン/ハルシャーリー・マルホートラ/ナワーズッディーン・シッディーキー

いつも心にハヌマーン様を

それが宗教でも法律でも師匠でもなんでもいいんだけど、心に絶対的な羅針盤を持っている人はブレない。
何しろその羅針盤は絶対だから、羅針盤が太陽が沈む方角を東と示すならそっちが東なのです。
疑う余地なんく思考はそこで停止するので、そういう意味では生きるのが楽なんだろうと思う。

主人公のバジュランギおじさんはヒンドゥー教のハヌマーン神の敬虔な信者。
いつでも心にハヌマーン様がいてその教えに従ってバカがつくほど正直に行動するのが笑えるんだけど、ひょっとするとインドの人からすると至極まっとうで笑うところじゃないんだろうか。
ともかくその敬虔なヒンドゥー教徒のバジュランギおじさんが、インドと対立するパキスタンのイスラム教徒の小さな迷子を助けるというのが映画の骨子。
異教徒であっても小さな迷子を見捨てなかったのはハヌマーン様の教えが正しい証拠ですなあ。
そしてイスラム教もバジュランギおじさんを優しく包み込む。

どんどんボーダーレスになっていくこの世界。それに伴って異文化が接触する機会もどんどん増える。
そんな時に必要なのは寛容の精神ですね。
あいつは俺とは違う。だからって敵というわけではない。同じ人間だ。
ってね。

まあバジュランギおじさんが小さな迷子を助けたのは、ハヌマーン様の教えのおかげだけじゃなく、小さな迷子がとてつもなくスーパー可愛いということもあるでしょう。
というか、むしろそれが助けた理由なんじゃないかってくらい可愛い。
羅針盤とか寛容の精神とか、もうそんなそんなぜーんぜん。なんとなくそれっぽく書いただけです。
忘れちゃってください。
とにかく迷子ちゃんが可愛いのですよ。

あとはこれはどーでもいいがバジュランギおじさんは筋肉ムッキムキ。
うん、そっちはどーでもいい。

2019年3月21日(祝)鑑賞

11位
バイス


監督:アダム・マッケイ
出演:クリスチャン・ベイル/エイミー・アダムス/スティーヴ・カレル

本当のバイスは誰だ?!

VICEというのは副大統領の「副」って意味だけでなく「悪徳」という意味もあるそうです。
要するに悪徳副大統領の映画です。

ただこの「悪徳」というのはなかなかクセもんで、現実世界は自分のことを「悪徳」と思ってる人はあまりいない。
自分こそは「正義」と信じてそれを振りかざし、一方でそれは他の誰かにしてみれば「悪徳」になってしまうだけで。

「悪徳」と「正義」は時間の経過によっても入れ替わる。だってイラク侵攻を始めた時は多くのアメリカ国民がそれこそが正義だと思ったわけなんだから。

それを今更、一人のVICE PRESIDENTに責任を押し付けて幕引きを図ろうとするのはとても違和感がある。
イラク人がこの映画観たら
「おい、この映画作ったやつらだって同罪だからな。他人事みたいに笑ってんじゃねーよ」
って怒るんじゃないですかね。
よその国に勘違いというか言いがかりで攻め込んでおいて、
「権力にとりつかれたネオコンVICEな野郎がやりました。」
ってそりゃあないでしょう。
知られたくない違う何かから目を逸らそうとしてないかって勘ぐっちゃう。

たまたま先週、イラク侵攻に対する疑惑を暴こうとした記者の映画「記者たち(そのまんますぎ)」を観て教えられたことだけども、こういう問題は常に本当か?って疑ってかかるべきだ。

チェイニーは確かにVICEだったんだろうけど、諸VICEの根源ではないんじゃないかって思う。
もっともっと巨大なVICEがいるんでしょう。問い詰めるべきはHALLIBURTON社のCEO(チェイニー)じゃないでしょう。
莫大な退職金がチェイニーに支払われたけど、ということは2600万ドル払っても余りある利益を得た人たちがいるんですよ。
チェイニーは「想定の倍以上の金額だ」って言ってるじゃない。
要するに彼はそれを払う側がどんだけ儲けを生み出してるかすら把握できる立場にいなかった。
雇われ社長が黒幕なわけない。本当のVICEは株主のファンドだと踏んでます。

ま、踏んでるというかね、そういうもっと巨大な黒幕がいてほしいなあと心のどこかで期待しちゃってるんです。
陰謀論大好き野郎の戯言でした。

2019年4月6日(土)鑑賞

12位
半世界


監督:阪本順治
出演:稲垣吾郎/長谷川博己/渋川清彦

稲垣吾郎の新世界

SMAPは紛れもなく国民的アイドルグループだったけれども、取り立てて好きとか応援するという対象ではなかった。僕だけじゃなくてほとんどの男性がそうだろうけど。
でもSMAP解散後、3人が超大手事務所のジャニーズを退所してから俄然興味が湧いた。ジャニーズに逆らって芸能界で生きていけるのかという大きなお世話と、体制に逆らうパンクな姿勢に対する憧れが混ざった興味。

まずはCMやインターネットTVから攻めて、さらなる展開としてのこの映画。テーマは不惑の40歳目前の男たち。迷いに迷って結論を出したであろう稲垣吾郎が演じる不惑を迎える男。これは見届けるしかない。

注目の吾郎ちゃんは、ちょっとガサツで男臭い役どころ。残念ながら実にこれが板についていない。身も蓋もない言い方をすれば大根なのかもしれない。稲垣吾郎のイメージは優しくて物静かな男性。そういう役どころであればきっちりこなせるんだろうけど、そのイメージとは対極に近い位置の今回の役はちょっとハードルが高かったのかもしれない。
だがしかし!僕はそのチャレンジに対して拍手を送りたい。稲垣吾郎45歳、まだまだチャレンジする姿勢、その意気やよし!
木村拓哉がキムタク的な役どころしか演じないのとは対極じゃないですか。
ま、本来その年齢であればきっちり結果を出して欲しいところだけども、これまでSMAPで結果を出し続けたのだから良しとしましょう。

そんな新人俳優のようなチャレンジ精神を見せた稲垣吾郎の脇は長谷川博己と渋川清彦が、がっちり固めてます。渋川清彦っていい笑顔見せるよなあ。なんか甲本ヒロトに似てるなあ。
それと忘れちゃいけないのが稲垣吾郎の妻を演じた池脇千鶴。終盤のこの人の演技を思い出すだけで涙が出る。稲垣吾郎を取り巻くこの3人の役者のおかげもあってすごく良い作品になってたなあ。

貧困にあえぐ国や、紛争が起こってる国も「世界」だけど、小さな田舎町の生活も「世界」なんだよなあ。世界中に発信するようなたいそれた「世界」じゃないかもしれないけど、一人一人が自分の「世界」で悩んで一生懸命生きてるんだよなあ。
稲垣吾郎の新世界を垣間見させていただきました。今後も期待です。

2019年2月17日(日)鑑賞

13位
翔んで埼玉


監督:武内英樹
出演:伊勢谷友介/GACKT/二階堂ふみ

埼玉愛憎物語

神奈川の川崎で生まれて、東京で育った後、今の実家は埼玉にある僕の埼玉や東京に対する感情は複雑だ。
東京の小中高大に通った自分は東京の人間だと思いたいけど、出身を聞かれると川崎と答えざるを得ないし、実家を聞かれれば埼玉なわけで、東京の出番が一向にやってこない。
東京の人間を名乗りたいのに、せいぜい「東京に住んでました」止まり。ああ憧れの花の都大東京よ・・・。

翻って埼玉。正直好きじゃない。
実家は埼玉だけど高校の時に引っ越してきたから大した思い出もない。そして何より・・・ダサイタマ。
埼玉をダサイタマたらしめているものは何か。
それは埼玉が埼玉であろうとせずに東京になろうとしているからじゃないか。
多くの埼玉人が東京の会社や学校に通い、休日は東京で遊ぶ。
少しでも東京に接点がある人は自分を東京の人だと信じ込もうとしている。
そのタラタラな未練がダサイタマを作ってる。
そう、ちょうど神奈川生まれ東京育ちで実家は埼玉の僕と同じように・・・。
ダサイタマは僕のコンプレックスの権化だ。だから好きになれないのに見捨てられない。

だからそんな埼玉を思いっきりいじった映画「翔んで埼玉」が公開されたと聞いて、僕はたまらず埼玉から遠く離れた京都の地で映画館に駆け込んだ。女王陛下のお気に入りとかギルティとかまだ観ていない名作が目白押しだと言うのに。
結果、実にバカバカしく素晴らしい作品でした。埼玉へのいじりを通り越してディスり倒していて、東京の植民地のような扱い。
くっだらねーって大爆笑しながらも、うんうん頷けることばかりで実質的にはノンフィクションですなあ。Based on a true storyです。

いじり芸はいじめだと批判を受ける風潮にある昨今、こんな埼玉ディスの映画は問題になるのでは?という僕の心配をよそに映画は大ヒット中で批判も全く聞かない。
これ、テレビドラマだったら批判殺到だと思うのです。あんまり言いたかないけどテレビだと、色々めんどくさい人も簡単に見れてしまうので批判が出る。実際は不快に思ってる人は少数だとしてもその少数がしつこく文句を言って「殺到」してしまう。
でも映画だと埼玉をいじり倒している映画だよと公言しているので、それが不愉快な人はわざわざお金を払って観にいかないだろうから、拍手喝采なんでしょうね。
クレームを恐れて万人が傷つかない番組ばかりでテレビがつまらなくなってきた昨今、こういう映画がヒットされている状況を目の当たりにして、やっぱりこういうの好きな人がいっぱいいるんだなって嬉しくなりました。

そこのところ誰でも簡単にみれてしまうブログでダサイタマなどと書いてしまってビビってる僕なので、ちょっと弁解しますと僕はかなりの浦和レッズファンであります。
埼玉LOVE。
2019年2月24日(日)鑑賞

14位
麻雀放浪記2020


監督:白石和彌
出演:斎藤工/もも/竹中直人

作品に罪はあるのか

ピエール瀧メンバーが出演していることで、上映を中止すべきでは?いや作品に罪はないから上映すべきだ、というちょっとした論争を呼んだ話題作。
果たして本当にその作品に罪はないのかしかとこの目で確かめるべくGW10連休突入前夜のTジョイ京都へ。アベンジャーズ/エンドゲーム公開日のためマーベルファンでごった返す中、僕を含めた総勢5人の流行に無頓着な猛者どもは12番シアターに入って行きました。

封切り前はあんなに話題になっていたのに、その後の評判はとんと聞かないので出来がよろしくないのかと思いきやかなり笑えました。
原作小説も漫画も和田誠版の映画も知らないので「笑えた」のが正解か分からないけど、ガラガラだったこともあり声を出してゲラゲラ笑った。

ベッキーの一人二役も良かったなー。ベッキーって、ほらまあ色々ゲスちゃって必要以上に叩かれたじゃないですか。それで自虐もかましながら徐々に復帰してようやくこういう舞台に戻ってこれたんだなあ、頑張れよーって応援しながら観てました。

ということで作品そのものの評価以前になんやかんや頭に浮かぶことが多い本作です。
作品の罪うんぬんに関しては、近未来バーコードテクノカットの瀧メンバーを観ても、あー僕も瀧メンバーみたいにキマりたいなーとは全然思わなかったし、そう思う人は皆無だろうから無罪ですね。
すったもんだというか吸った打ったがあったけど、かなり笑えたのでお蔵入りにならなくて良かった。
ただ瀧メンバーの出番はあんまり多くないので、撮り直しをしようと思えばできたとは思う。敢えてそうしなかったのかな。過剰なバッシングをする今の世間を暗にたしなめようとしてるのかもしれない。だからこそベッキーを桧舞台に引っ張り上げたのかもなあ。
だとしたら凄くいいね。
2019年4月26日(金)鑑賞

15位
こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話


監督:前田哲
出演:大泉洋/高畑充希/三浦春馬

大泉洋の素晴らしき立ち位置

水曜どうでしょうで大泉洋を知って、大泉洋でTEAM NACSを知りました。
そういう経緯もあって10年くらい前までは、僕にとってTEAM NACSというのは大泉洋とその仲間達というイメージだったけども、徐々に安田顕が頭角を現してきて、3,4年前くらいから大泉洋を超えたのでは?と思っていました。

キムタクが何を演じてもキムタクになってしまうのと同様に、大泉洋も何をやっても大泉洋になってしまうという印象がある一方で、安田顕は役の幅が広い。シリアスからおふざけまで何でもござれ。

そんな大泉洋評を抱えながら観た本作品。
やっぱり大泉洋は筋ジストロフィー患者を演じてもあくまで大泉洋だった。ボランティアの田中(三浦春馬)に対する
「田中くーん」という呼びかけは
「藤村くーん」となんら変わらない。
(注:藤村くんというのは水曜どうでしょうのディレクター。念のため。)

さはさりとて!本作品における大泉洋は実に素晴らしかった。筋ジストロフィー患者の実話という、どうしても重くなりがちなテーマを、明るく楽しく描いた本作品は大泉洋なくして成り立たなかった。
底抜けの明るさを持つ大泉洋だからこそ、ただの湿っぽい映画にならなかったんだと思う。安田顕もコミカルな役を十分こなせるけど、この役は大泉洋で正解でしょう。

どんなにいいメッセージがあっても、人に伝わらなければ意味がない。どんなにいい映画を作っても観てもらわなければ意味がない。
障がい者に対するツッコミのようなタイトルをつけて、
大泉洋という人を笑わせたらピカイチの役者を使って、
コミカルタッチの宣伝をしたこの映画の仕掛け人達も素晴らしい。

とにかくまずは多くの観てもらうということ。それができなきゃなんにも始まらないんですよね。

そして、まんまとその作戦にはまって観ると、当然笑いだけでなく涙もあるわけです。この映画を観なければ知らなかったことをたくさん教えてくれるわけです。
正攻法で訴えかけることだけが誠実ってわけじゃないよなあ。
筋ジストロフィー患者とボランティアの実録闘病記という仕上がりだったら、申し訳ないけど観に行かなかったと思うもの。

2019年1月14日(祝)鑑賞

16位
運び屋


監督:クリント・イーストウッド
出演:クリント・イーストウッド/ブラッドリー・クーパー/マルコ・グラフ

いつでもまっすぐ歩けるか

以前出席した友人の結婚式の2次会で、新郎新婦のご両親が二人の人柄について語ったビデオが流れた。
新郎の親父さんが息子について
「せがれは昔っからイタ公に憧れててさあ」
と語って場内は爆笑となった。親父さんの人柄を感じさせる語り口調から「イタ公」という表現に侮蔑の意味はこれっぽっちもないということはその場にいた全員がわかったからこその爆笑だった。
これがテレビやSNSだったなら親父さんは謝罪に追い込まれるでしょう。
でもあのビデオでイタ公ではなく「イタリア人」だったらあんな笑いになっただろうか。
もちろん親父さんは笑わそうとしてそう表現したのではなく、自然体でその表現だったわけでだからこそウケたのだけど。

今、誰もが傷つかない表現が求められている。
ポリティカル・コレクトネスってやつ。
でもそれって終わりがないよ。誰もが傷つかない表現なんてないんだし、もしあったとしてもなーんにも面白くないよ。
それにうんざりした人がバランスを取り始めている。
クリント・イーストウッドはその一人のようです。
イーストウッド演じる主人公アールの口から出る「ニグロ」や「タコス野郎」には、友人の親父さんと同じ香りがした。
イーストウッド本人が演じてるだけあって、イーストウッドから直接ポリコレを説教されている気がしました。

ポリコレについては露骨に説教された一方で問題提起されたことが一つ。
それは、先週見たROMAに引き続き「不二」。
主人公の贖罪は間に合ったともとれるし、遅すぎたともとれる。
最後には家族にとって良い夫、父、祖父になりえたとしても、一方でコカインで多くの人の人生を破滅させることにつながる運び屋稼業は正しかったのか、間違いなのか。
アメリカで麻薬を売りさばく不法入国メキシコ人の存在はどうか?
トランプがメキシコ国境に壁を作るぞと改めて宣言したこのタイミングで、
共和党支持者のイーストウッドがこの映画を作った。
(注:共和党支持者のイーストウッドはトランプのことは一理あると言っているものの、全面的に支持しているわけではないとのことです)
メキシコ人ギャングが時にみせる優しさや人情を表現したものの、
トランプを支持するアメリカ人の目には
けしからん不法入国のメキシコ人に見えただろう。
イーストウッドの真の意図は本人にしかわからない。
家族を犠牲にして仕事に集中すること、壁の建設、不法入国者、麻薬の密売、ガサツな表現。
悪いことだと咎めるのは簡単。もう一歩深く考えてみようよってことなのかな。
少しの寛容の精神を持って。

大体からして人間は誰しも、いつでもまっすぐ歩けるわけじゃないんだから。
あなたも僕も。

2019年3月16日(土)鑑賞

17位
ダンボ


監督:ティム・バートン
出演:コリン・ファレル/マイケル・キートン/エヴァ・グリーン

ディズニーへの警鐘

実写版ダンボ。完全にノーマークだったけれどもティム・バートンが監督だと知って俄然興味が湧いて観に行きました。
結果・・泣いて笑って可愛くて、そしてそれ以上でも以下でもなかった。
毒にも薬にもならないというか、いたって無風。
偏差値50、TOEIC550点、松竹梅の竹、中の中、無味無臭。

特に憤りを感じるでもなく、良いモン観たなあという満足感もなく、鑑賞後に河原町のディズニーストアに寄ってみた。
ダンボのぬいぐるみはあまり人気が無いようだったけど、子供たちは目をキラキラ輝かせている。お父さんお母さんも我が子以上に幸せそうな顔。

子供に夢や希望を与える一方で、大人からしっかり回収している様を目の当たりにして、劇中に出てきたDream Landってのはディズニーランドのことなんだなあと改めて確信(いや知らんけど)した次第。

資本家と手を組んで儲けることばかり考えて、雇用も母ゾウのジャンボも顧みなかった劇中の「Dream Land」の末路はティム・バートンからディズニーへの警鐘なんだと思うと、急にダンボが社会派作品に見えてきた。
そんなわけないけど。
2019年3月30日(土)鑑賞

18位
泣くな赤鬼


監督:兼重淳
出演:堤真一/柳楽優弥/川栄李奈

余命ジャンルはずるい

余命数ヶ月の元教え子と教師の物語。
またしても余命か。日本映画界は余命が好きですねえ。日本人はもう誰か死なないと泣けないくらい感受性が鈍ってるとでも思ってるんですかね。
しかも甲子園目指してた的な感じだ。ここまでくるとお涙頂戴どころかお涙強奪だ。クライマックスは当然主人公が死ぬところで、ここ泣くところですよーって・・みえみえ。ついでにそこで号泣しちゃう僕もみえみえ。
ええ、わかっていてもそりゃあ泣いちゃいますよ。でもずるいですよねそういうの。
そんなもんわざわざ金出して観にいくわけない・・と思いきやその余命青年役はまさかの柳楽優弥。
そして主題歌竹原ピストル・・。
マジか。ホントずるいなあー。行くしかないじゃん(笑)

で、まあ当然泣いたわけですが、思いの外赤鬼の成長物語であり、川栄李奈って演技うまいねーって発見以外は全てが想像の範囲内。
スッゲー泣いたけど、1年後には何も心に残らないだろうな。やっぱり映画に限らずなんであれ、お手軽であれば良いってもんじゃない。
2019年6月15日(土)鑑賞

19位
ROMA

監督:アルフォンソ・キュアロン
出演:ヤリッツァ・アパリシオ/マリーナ・デ・タビラ/マルコ・グラフ

フニーローマ

不二という仏教の教えは、
あらゆる対立概念は、実は二つの対立はなく一つのものであると考える。
例えば光と影。

光があれば影がある。表裏一体。
人生は光と影。照る日もあれば曇る日もある。
強烈な光を浴びている人は、実は深い影が落ちる時もある(はず)。

主人公クレオの人生は影が濃い。
曇りのち雨時折薄日が差す人生。
新生児と地震、ベビーベッドと暴動。

でもね。
ビーチではあなたに太陽がサンサンと輝いていましたね。
夕日か朝日か分からないけど僕たちにも強い日差しが照りつけてきましたよ。
この時クレオにどんな言葉をかければいいのでしょう。
うん、おめでとうかな。
クレオの人生よ、おめでとう。
やっぱりあなたの人生も影ばかりではなかった。
おめでとう。

白黒映画は光と影。
ビーチでクレオにふりそそいだ光のための白黒映画だったんだとお見受けしました。
違ってたらゴメン。

2019年3月10日(日)鑑賞

20位
女王陛下のお気に入り


監督:ヨルゴス・ランティモス
出演:オリヴィア・コールマン/エマ・ストーン/レイチェル・ワイズ

魑魅魍魎専門動物園

動物園の動物たちは自然界の動物と違って
誰かに食べられちゃうとビクビクしなくていいし、食べ物の心配もないし、万全の医療体制で健康をケアしてもらえるけども、
一生檻の中で暮らすことを悟った姿は幸せそうには見えない。

広い世界を思いのままに駆け回る自由。すべての動物にとって一番重要な権利。
人間の場合これを奪うことを投獄と言う。

イギリス女王の住む宮廷はそんな動物園に似ていた。
確かに民衆と違って、食べ物には困らないし、贅沢な余興を楽しめる。
けれども世の中で起こってることを直接見ることはできず、人づてに聞くことしかできない。
自分の意思では宮廷から外に出られない(出たいとすら思わないんだろうけど)。
そんな浮世離れした場所で、戦争続行だとか税金倍増だとか民衆の運命を大きく変える重要な決定がなされていく。

宮廷に住む動物どもはそれぞれ自分の立ち位置を確保しようと必死。
檻が区切られていないという意味では動物園というよりサファリパークに近いか。
優しい動物は秒で淘汰されてしまうので、残るのは虎、狼、タヌキにキツネ・・。
そんな魑魅魍魎が跋扈する動物園にやってきたエマ・ストーン演じるアビゲイルは純真無垢なバンビちゃん・・であって欲しかったけども、彼女もまた逞しい大蛇に育っていくのでした・・・。

こんな恐ろしい動物園は嫌だね。暮らしたくないね。
宮廷からサバンナに追放された彼女は脱獄できたってことなんだろうな。

2019年3月3日(日)鑑賞

21位
ザ・ファブル


監督:江口カン
出演:岡田准一/木村文乃/山本美月

大事なところは隠せ

バラエティ番組で最近軍人か侍役ばかりだと嘆いていた岡田准一が久々に「じゃない」役を演じた本作品。
といっても役どころは伝説の殺し屋なわけでフツーの現代人じゃないんだけど。
岡田准一の演技を見るのは初めてかな?見事な肉体美でそりゃあ軍人とか侍とかストイックな役があつまるよねえ。
覆面をかぶったアクションも全部自身で演じたらしい。ということで確かにアクションはすごかった。期待していなかったこともあってかなり興奮。

だがしかし。
僕が求めたのはそこじゃなかった。ジャンルはコメディアクションだという本作品のコメディの部分にかなり期待していたのに、コメディの部分はからっきしだったなあ。くすりともできなかった。
なんかお笑い部分のすべてのシーンを予告編で見ちゃってたと思う。すべてのボケを知ってる漫才を観てるみたい。初めて観るのに「ああ知ってる」ってなるのはどういうことよ。
予告編を観ていなかったら、もっと笑えたのかな。
大事なところはここぞって時まで隠しておきましょうね。岡田くんの全裸シーンのように。
2019年6月23日(日)鑑賞

22位
多十郎殉愛記


監督:中島貞夫
出演:高良健吾/多部未華子/木村了

チャンバラ未来論

チャンバラ映画を映画館で見るのは多分初めてだけど、想像よりはるかに興奮しました。特に初めて真剣を抜く瞬間。おおっ!ついに!って。
ということでチャンバラ映画は過去の遺物なんかではなく、将来性もあるじゃないですかと上から目線した次第ですが、輝かしい未来を確信したわけじゃないです。
むしろそこが変わらないならチャンバラ映画に未来は無いってくらいに気になった部分があります。
それはリアルさ。
昔からそうなんだろうけど、斬られた人の着物が破れて血が出たり、腕が落ちたりしないのは、あえてなの?それとも技術的に厳しいのかな?
いやいや、今や耳が大きい子ゾウを空に飛ばすことだってできるのに、刀で斬られた人の服一つ破けないなんてこと無いでしょう。CG一切無し縛りの業界お達しとかあるんだろうか。
ま、なんでここが気になるのかっていうと、バサっとやりあった後になぜか両者がしばし見合う瞬間が嫌なのね。スクリーンの裏側にいる作り手に、「フフさて、どっちが勝ったでしょう?」って意地悪されてるみたいで。
実際だったら斬られた瞬間、超痛いでしょ。血がドバッと出て、悶絶でしょ。

でもまあ、その服も破けず血も出なくて「うわーっ」ってのけぞって倒れる福本清三スタイルこそがチャンバラなんだ!って言うのであれば、それはそれで大事にしたらいいと思います。それならもう僕はチャンバラは大丈夫ですってだけのことなんで。
2019年4月13日(土)鑑賞

23位
魂のゆくえ


監督:ポール・シュレイダー
出演:イーサン・ホーク/アマンダ・セイフライド/セドリック・カイルズ

スピリチュアル×エコロジカル×ホラー

オール曇天ロケ。そういう撮影条件があるのかどうか知らないけど、あるとすればこの映画はそれだ。
いやー今日はちょっと晴れちゃったねえ、ちょっと雲待ちしてみようか。
みたいな会話が何度も撮影スタッフの間で交わさたことでしょう。
その甲斐あって、終始どよーんと雲が重くたれこめた曇天。そしておどろおどろしい音楽。横幅が極端に短くて窮屈なスクリーン比率。実に禍々しく気味が悪い。
今日はホラー映画のハロウィンと迷った挙句この映画を選んだのに、あれ?この映画もホラーだっけ?って不安になる仕上がり。
イーサン・ホークがエクソシストにでもなっちゃうんじゃないかと。

結局そうではなくて、スピリチュアルな映画だったんだけども、スピリチュアルが過ぎてさっぱりわからん。後半は何度も「はい?」ってなった。
理解を深めるためにパンフレットを買ったものの、町山智浩御大の解説を読んでもなお意味不明。
結局YouTubeの映画ファンの方の解説を観てようやくオチの意味はわかりました。
映画の正解を探すのはあまり好きじゃないけど、さすがにオチの意味くらいは理解したい映画でした。まあオチを理解できても良い映画だったとは思わなかったけど・・。

2019年4月21日(日)鑑賞

24位
夜明け


監督:広瀬奈々子
出演:柳楽優弥/小林薫/YOUNG DAIS

映画リテラシー判定

観終わった直後は、うわーつまんねーって感じだったけども、パンフレットで監督のコメントを読んで、なるほどそういうことですか、とおのれの映画リテラシーの低さを痛感した次第です。

仮にも映画ランキングサイトを運営している身でありながら、自分の理解力の低さにしょんぼりしていた僕にとって、柳楽優弥の
「(この映画は)100人中、4〜5人にしか響かないかもしれない」
という言葉は若干の救いになりました。
100人中、95,6人に響かない映画ならまあ仕方あるまいと。

ということで、僕は全然オススメはできない映画だけど4,5%の人には刺さるようです。自分がどっち側の人か試してみたい方は是非どうぞ。

分かりやすい物語の展開はなくて、人物の心の動きをどう感じるかという映画なのであまり僕の解釈を書かない方がいいと思いますが、当たり障りのないことでいうと、監督の広瀬奈々子はあの是枝裕和監督の弟子ということもあって変則的な家族の形を描いた作品です。
家族モノという衣装を脱いでみると、人間の狂気を描いたホラーなのですが。
(あくまで主観です)

あとは小林薫主演の深夜食堂が大好きなのですが、その深夜食堂の主題歌「思ひで」を歌ってる鈴木常吉が出演していて、
「こ・・このおっさんがあの名曲を歌ってる人なのか?」
とまあ大変失礼ながら、ネガティブサプライズを受けた作品でもありました。

2019年1月20日(日)鑑賞

25位
ハッピー・デス・デイ


監督:クリストファー・ランドン
出演:ジェシカ・ローテ/イズラエル・ブルサード/ルビー・モディーン

二兎を追う者

コメディ・ホラーだと聞いて、笑って怖い映画ってどーいうこと?
と興味津々で行ったものの、笑えもしないし、恐くもないしで中途半端だったなあ。
先週観たザ・ファブルはコメディ・アクションのコメディ部分に期待していたもののくすりともできなかった一方で、アクションは想像以上にすごくてなかなか興奮できたからまだ良かったけど・・・。
ついでに成長物語や、謎解き要素も盛り込まれてるんだけどぜーんぶ中途半端かな。

まあそんなエラソーなことを言っておきながら、謎解き部分は最後まで気づけなかった僕ですが・・・。
2019年6月29日(土)鑑賞


以上です!大ブレイクしたアベンジャーズ エンドゲームは20作以上ある過去作を全部観てないと楽しめないとのことなので断念しました。
みなさんも是非映画館へ足を運んで、オススメの映画をCHANNELCINEMA.COMで投票して下さい!

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