令和に想う平和!戦争映画ランキングベスト10!

平成から令和への改元は天皇陛下が生前退位された(崩御されてない)こともあり、ちょっとしたお祭りさわぎで、4月30日はまるで大晦日のようでしたね。

天皇陛下は平成を振り返って
「平成が戦争のない時代として終わろうとしていることに、心から安堵しています」
と仰っていました。戦争を知る世代が少なくなってしまった今の時代に天皇陛下が「戦争が起こらなくて良かった」と述べられたのはとても意味があることだと思います。
令和もそういう時代にしないといけません。戦争を知らない僕たちは戦争の恐ろしさを意識的に胸に刻まなければいけない。映画は時にそういう役割も果たしてくれます。それでは「何があっても戦争を起こしてはいけないと教えてくれる映画」10作品をご紹介します!

10位
ディア・ハンター


監督:マイケル・チミノ
出演:ロバート・デ・ニーロ/クリストファー・ウォーケン/メリル・ストリープ

人生を一変させてしまうもの

第二次世界大戦の日本では召集令状(赤紙)を渡す人は「おめでとうございます」と言い、受け取った人も「ありがとうございます」と答えた。
本人も親族も心では戦争に召集されたことを嘆き悲しむのだけども、それを口にすることは許されず、バンザイをして戦争に送り出す。
辛く悲しいやりとりだけれども、アメリカの場合は少し違うよう。
ディア・ハンターでは主人公とその友人がベトナム戦争に向かうのだけれども、恋人も友人も心の底からおめでとう!頑張ってこいよ!と祝福しているように見える。
アメリカは第二次世界大戦や朝鮮戦争に勝ってきたから、戦争に行っても基本的に「無事に帰ってくる」と思っているからだろうか。もちろん多少の危険はあるのは承知しているけど、それはスタントマンとか高所で作業する大工とかそういう類のリスクと同じ扱いなのかもしれない。
でもベトナム戦争はそれまでの戦争とは違った。主人公たちは思い知らされる。心身ともにボロボロになって帰国して、それを迎える恋人や家族も
「こんなにも人生が変わってしまうなんて」
とようやく気づくのだ。

デ・ニーロ演じる主人公は男前で精神的にもタフな正義マンで、対する北ベトナム軍は単純に「悪」という描かれ方をされているのは、終戦からわずか3年後に作られた1978年の映画なので目をつぶりましょう。

幸せな日常を変えてしまうもの。それが戦争なのです。
ロシアンルーレットは多分に演出要素が強いけど、戦争の狂気を表現するには最適。鑑賞後、すごくいやーな気分になったので、戦争映画としては正しいかと。

追伸:どーでもいいことだけど、鹿狩りの時のデ・ニーロのスタイル(ヒゲ+ニットキャップ+黒シャツ+ベージュベスト)は戦場カメラマンの渡部さんを彷彿させます。同じことを思って誰にも伝えられない人多数とみたのでここに記します。

9位
30年後の同窓会


監督:リチャード・リンクレイター
出演:スティーヴ・カレル/ブライアン・クランストン/ローレンス・フィッシュバーン

反戦ロードムービー

「50才のスタンド・バイ・ミー」というふれこみだったのでおっさんの青春映画かと思いきや、監督がパンフレットで語っているように戦争映画だった。戦争映画といっても戦場のシーンは一切なし。

それでもこの映画は明確に戦争映画。そして素晴らしい反戦映画でもある。ヒロイズムに走る戦争映画は良くないと前から漠然と感じていたけど、この映画がその思いをさらにはっきりさせてくれた。
戦争映画は殺す人や、生還した人、英雄的な活躍をした人にフォーカスするべきではない。
殺された人、帰ってこなかった人、英雄ではなかった人にフォーカスするべきだ。そしてその映画を観た人が多かれ少なかれ「戦争をしてはいけない」と思うような作品であるべきなんだ。
表現の自由はあるべきだけど、僕は戦争映画に限ってはそういうものでない限り駄作と評したい。
ベトナム戦争もイラク戦争も嘘の目的のために行われた。共産主義から世界を守るため、大量破壊兵器を見つけるため、そういう嘘の名目で多くの若者がジャングルや砂漠に送られた。少なくともアメリカを守るためではなかった。そういうことをしっかり伝えるいい映画。

だからと言って説教臭いわけではなくユーモアも散りばめられているし、確かにスタンド・バイ・ミー的な要素もあります。3人のおっさん(と1人の若者)が爆笑しているシーンのバカ話は正直たいして面白い話じゃない。
でも仲間内の笑いってそういうもんですよね。周りから見ていると何が面白いのか分からない話でも仲間の空気感、当時の思い出、いろいろなものが混ざって大爆笑になる。そういうところも良かったな。だからただ反戦だけがメッセージの映画じゃないですね。

8位
ロープ/戦場の生命線


監督:フェルナンド・レオン・デ・アラノア
出演:ベニチオ・デル・トロ/ティム・ロビンス/オルガ・キュリレンコ

悲劇の中にも笑いを!それが人生

紛争中のバルカン半島(多分ボスニア・ヘルツェゴビナ)で、井戸から死体を引き上げるためのロープを探すというあらすじ。
バルカン半島の紛争は民族と宗教が複雑に絡みあった紛争だったこともあり、誰が敵で誰が味方なのか非常に解りにくい紛争だった。昨日まで友人だった人どうしが殺し合う紛争だったそうです。必要なのはたった一本のロープであって、住民のために井戸をキレイにしたいだけなのに様々な邪魔が入る。複雑な利害関係や敵味方関係を背景に主人公たちに与えられたシンプルなミッション。

以前クロアチアを旅行した時に僕が出会ったガイドのおじさんは、かつて旧ユーゴのスパイで、内戦中はボスニアのムスリムと戦ったと言ってました。友人だった隣人同士が殺し合う本当に酷い戦争だったと言ってた。
そういうこと聞いていたこともあり、この映画の世界の複雑に入り組んだ悲劇が辛かったです。そんな辛く厳しい状況でもティム・ロビンス演じるビーがおどけてユーモアをかましてくれるのがこの映画の救いです。
これぞ人間の強さというか素晴らしさというか。

クロアチアで会ったガイドのおじさんも言ってました。「今はボスニアに(ガイドとして)毎日のように来て、ムスリムの人と一緒にお茶を飲んで笑ってる。人生ってそんなもんだよ。」って。

7位
ゼロ・ダーク・サーティ


監督:キャスリン・ビグロー
出演:ジェシカ・チャステイン/ジェイソン・クラーク/ジョエル・エドガートン

容疑者殺害が何故許されるのか

ウサマ・ビン・ラディンをアメリカ軍が殺害したニュースを知った時の強い違和感を今でも覚えてます。
殺害した?それってアメリカ軍が殺人を犯したということ?裁判もせずに殺すことがなぜ許されるのか?アメリカが頻繁に大義として掲げる民主主義はどこへ行ったのか?裁判もせずに容疑者を殺害してしまうことは法治国家のすることなのか?
今もその答えは見つかってないけど、この映画はそのビン・ラディンの居場所を突き止めるCIAの女性を描いた映画。
これを観て思うのは組織の恐ろしさだ。ジェシカ・チャステインが演じる主人公のタスクはとにかくビン・ラディンを探すことだし、SEALsのタスクは指示された場所に行き、指示された人物を殺し死体を持ち帰ること。
細かく細分化された一つ一つのタスクは難易度も高く、そこに疑問なんて感じていたらとてもタスク達成はできない。
自分の行動を俯瞰している余裕なんてない。
でも、映画を観ている人は俯瞰することができる。血眼になってビン・ラディンを探しているけど、彼らの行いは本当に正しいのか?って疑問を投げかけながら観ると良いでしょう。

ちなみにビン・ラディンの遺体はひっそりとアラビア海に水葬されたとされています。ごく一部の人にしか知らされず、記録もわずか。
この不自然な顛末を考えると、そもそも本当にビン・ラディンは殺されたのか?というとこから疑わしい。アメリカと密約を結んでこれ以上表舞台に出て来ないことを条件に「死んだこと」にしたのかも。

このアメリカ軍による殺害事件について概ね各国の反応は歓迎姿勢。これも非常に違和感ありだけど「密約」があるのだとすればまあ分からないでもない。ウルグアイ、チリ、ベネズエラあたりの中南米国はアメリカの行いを糾弾する声明を出したけど、これらの国は「密約」を知らされていなくて至極真っ当な声明をだしたのかも。
もちろんたわいのない妄想だけど、大本営発表を全部信じたら危険ってことを忘れちゃいけない。

6位
アメリカン・スナイパー


監督:クリント・イーストウッド
出演:ブラッドリー・クーパー/シエナ・ミラー/ルーク・グライムス

戦場で人は命と心を落とす

兵士を英雄視する戦争映画はプロパガンダみたいなものだから良い映画ではない。少なくとも僕の中の公式はそうです。この映画はややもすると、そういう映画と捉えられなくもない。
実際アメリカでも賛否が分かれたようです。でも僕は主人公クリスは英雄には見えなかった。愛国心を持つ若者であり、国に騙されてイラク戦争に参加し、帰国後もPTSDを患ってしまった戦争の被害者に見えた。

戦争に行けば、命を落とす危険性がある。あるいは運良く命は助かってもクリスのように戦場に心を落としてしまう人が沢山いるんですよね。
戦場を何度か経験したクリスは故郷にいる時よりも、戦場にいる時のほうが人間らしくいられてしまう。心をイラクに置いてきてしまった。
クリスはイラクで160人もの命を奪った。それは「味方を守るため」であり後悔は微塵もなく、神にもしっかり説明できると彼は語るが、そもそも米軍はイラクに行くべきでなかった。
クリスが「守った味方」がイラクに行かなければ、クリスに殺された160人は死ぬことがなかった。
もちろんクリスの責任ではない。
戦争をでっち上げた、戦争で金儲けを企んだバカタレの責任。
クリスかっこいい!
ではなくてクリスかわいそう・・イラク人も米軍もみんなかわいそう。戦争はいかんよって映画です。

5位
7月4日に生まれて


監督:オリヴァー・ストーン
出演:トム・クルーズ/ウィレム・デフォー/キャロライン・カヴァ

地球学園の学級委員アメリカくん

アメリカをしっかり批判することができ、自身もベトナムで戦った経験を持つオリヴァー・ストーン監督の作品。
アカデミー作品賞・監督賞を受賞した「プラトーン」の方がエンタメ的な起伏があって楽しめるけど、戦争の痛ましさを伝える力では「7月4日に生まれて」の方が全然上ってことでこちらを選びました。
(ちなみに、プラトーンのウィレム・デフォーとトム・ベレンジャーも出演してます)

アメリカの戦争は基本的に金儲けがきっかけ。朝鮮半島もベトナムもイラクもシリアも打倒共産主義も大量破壊兵器も独裁政権も全部建前。もっと言ってしまうと「嘘っぱち」。
そういうことを知らされずに「国のため」と信じて戦った若者がベトナムで経験したものは何だったのか。

ベトナムで悪魔を倒せたのか。正義を振りかざせたのか。女子どもたちを倒して味方同士撃ち合って、枯葉剤撒き散らして自然をぶっ壊してね。
そこまでして倒したかった共産主義って何なの?
何年か前にハノイに遊びに行ったことがあります。確かに社会主義のベトナムの経済発展は遅れてるかもしれないけど、だからって不幸な感じはしなかった。
アメリカが決めつけた幸せの基準で、ああベトナムが共産主義になったら経済発展が遅れてベトナムの人々がかわいそう!って乗り込んで殺しまくるなんて恐怖の学級委員ですね。
真実はそうじゃなくて「金儲け」だと思いますが。
そういう戦争を「国のため」と信じて戦ったロン・コビックの視点で語った映画です。

この映画は主人公ロン・コビックの実話です。これが戦争の真実。それでも戦争しますか?するんですよね・・全然懲りてないね。

4位
ダンケルク


監督:クリストファー・ノーラン
出演:フィオン・ホワイトヘッド/トム・グリン=カーニー/ジャック・ロウデン

戦争映画ではない?脱出サスペンス映画??

観終わった直後は、これまでの戦争映画と違う!ということしか頭に浮かんでこなくて具体的な違いを言葉にできなかったけど、パンフレットの解説を読んで腑に落ちました。良質なパンフレットに感謝です。

まず、クリストファー・ノーラン監督はこの映画を戦争映画ではなくサスペンス映画だと言う。
なるほど。
普通の戦争映画と何かが違うと感じたのは、監督のそういう意図が大きいのだろう。
戦争がテーマなのに敵が全然出てこないし、ほとんどの兵士は戦意喪失していて、戦わずにひたすら逃げる。
いかにダンケルクから脱出するか?を描いたサスペンス映画なんだそうです。

次に凄いのは、登場人物に一切感情移入させてくれない演出。最初の30分で主要な登場人物の人柄を描いて、観客に感情移入させて、その人物の挫折や成功に一喜一憂させるのが映画の一般的なパターン。
ところが本作はそもそも主人公らしい主人公がいないし、感情移入できるほどそれぞれのキャラを描いていない。だからこそ観客自身が戦場に放り込まれたような感覚に陥る。これも脱出を描いたサスペンスであろうとする演出なんでしょうね。凄い!

もう一つ印象的だったのは、戦うのではなく逃げるという状況下での兵士の精神状態。平和な世の中で生まれ育った僕は戦争で戦うなんて想像もつかないけれど、戦場で戦う兵士はある種のトランス状態になって突っ走っていくんじゃないかと思われます。
でもそのトランス状態から覚めて、戦う精神状態からひたすら逃げる精神状態になった時の心境はどれだけ恐ろしいものなんだろう。既にこちらは戦意喪失しているのに敵は攻撃の手を緩めない。ついさっきまで隣にいた戦友が一瞬にして屍になってしまう状況。1分後に自分が生きている保証はない世界。
常に緊張状態が続いているのに、助けの船が見えた瞬間に喜び、船に乗れた瞬間に喜び、船が出発した瞬間に喜ぶ。その船がいつ敵の襲撃で破壊されるか分からないのに。
もっと言えば無事に国に帰れても本土決戦になるかもしれないのに。
それでも兵士は些細なことでも物事が好転するごとに喜ぶ。ある意味で過去も未来も関係なく「今のこの瞬間」を生き抜いているんだなと・・。僕なら本当に安全なところに逃げ帰るまでは全く喜べそうもないけど、些細なことでも喜びを感じて本能的に精神のバランスを取っているのかもしれない。

監督の思いに反して恐縮ですが、やっぱりこれは戦争映画なんだと思います。

3位
野火


監督:塚本晋也
出演:塚本晋也/リリー・フランキー/森優作

真実は大衆ウケの向こう側に

塚本晋也主演・監督作品で、都会的なイメージが強いリリー・フランキーも出演している割には随分安っぽい作りだなと。
それもそのはず、資金を集められず自主製作になってしまったからです。戦争映画はウケないとかそういう理由じゃない。永遠の0のような映画は700万人を動員し大ヒットだ。
「塚本晋也「野火」全記録」によれば、
「日本兵がボロボロになる映画というだけで、タブーに触れる雰囲気があった」
からだという。ヒロイズムを描いた泣ける戦争映画ならOKだが、辛くむごいだけの映画はタブーだ。
確かにこの映画を観ても、いい気持ちには全くならない。悲しいという気持ちすら起こらない。目を背けたくなることばかり。でもそれが戦争でしょう。
何度でも書きます。戦争映画は観終わった時に
「何があっても戦争はNO」
と思わせるものであるべきだと僕は思います。
僕は戦争を知らない。だから甘っちょろい考えかもしれない。でも戦争を知りもせずに「時には戦争も必要だ」などと知ったかぶりするのは間違ってる。少なくとも僕は何があっても戦争反対。
戦争の悲惨さだけにフォーカスした映画をタブーとするような雰囲気に塚本晋也監督が危惧感を抱いて自主製作で作った「野火」。僕のような個人ブロガーが支えずして誰が支えるのでしょうという勝手な使命感でランクインです。

あと忘れちゃいけないのがリリー・フランキー。もちろん僕はリリーさんの本当の人柄を知りません。
でも、普段は可愛らしい絵を描いてエロいこと適当に言ってる都会的な人が、こういう低予算のしかもイメージと全然ちがう日本兵を演じるなんてね。
熱いものを持ってる人なんだろうなあ。だからこそリリーさんの毒舌は笑えるんでしょうね。芯に愛があるから。そういえば「東京タワー」読んでスッゲー泣いたもんなあ。

2位
 ゆきゆきて、神軍


監督:原一男
出演:奥崎謙三

知らぬ存ぜぬは許しません

元日本兵の奥崎謙三が第二次世界大戦中に日本軍が行った戦争犯罪の真実を求めて元上官たちを訪ねて問い詰めるドキュメンタリー。
撮影された時期は昭和50年代で、街並み、ファッションや人々の振る舞いや話し方は「男はつらいよ」の世界を思い起こさせる。
奥崎謙三の口上も車寅次郎のそれと似てなくもないし。
冒頭、奥崎氏が媒酌人を務めるとある田舎の結婚式。まさに寅さんのワンシーンのよう。ああ素晴らしき昭和の世界・・。
と、思いきや奥崎氏の挨拶がどうにも結婚式のそれにふさわしくない。
まあ寅さんも場違いなスピーチをすることは多々あったけれども、不適切のレベルが違う。
天皇陛下にパチンコを打ち込んで服役したという仰天告白にとどまらず、人を殺したこともあるという・・。
とどめは「田中角栄を殺す」とデカデカと書かれた車の前で万歳三唱。正直かなり怖い。
でも、ここで観るのを止めたらいけない。この奥崎謙三の狂気じみた怒りはどこから来るのか、きれいごと100%オフの衝撃を見届ける義務が令和を生きる僕たちにはある。

奥崎氏が問い詰める戦争の真実。かなり衝撃的な真実ではあるものの、戦争をというものを想像を巡らせてよく考えてみれが、確かにそういうことも起こりうるだろうなという真実。つまり平和ボケの僕たちは戦争に対する想像力が足りない。戦争の実感がないのは仕方がないとしても想像力も足りないのであれば、せめてこういう戦争体験者たちの話に耳を傾けなければならない。

時に暴力に訴える奥崎氏の手法はコンプライアンス第一主義の今の世の中であれば批判されるものかもしれない。
戦争犯罪を行ってもなお嘘をつき続ける元上官たちもSNSで袋叩きにあうのかもしれない。
でもそれは問題の本質ではない。暴力を抑えきれないほどの怒り、上官からの命令は絶対で是非を疑う余地もない状況、保身のために嘘をつくのではなく思い出すことも口に出すことも憚られるほどの深い悲しみがもたらす沈黙。
正しいことをしろというのは簡単だ。それをさせないのが戦争。戦争に正義はない。

プライベート・ライアンのリアル銃撃戦も戦争の恐ろしさを伝えてくれるが、戦場が一切描かれなくても戦争をこんなに現実的に描いた映画がある。
ほとんどの戦争体験者がなくなってしまった今、頼れるものはこういうドキュメンタリー映画です。なかなかここまでの作品は無いと思うけど。
マイケル・ムーアをして「最高のドキュメンタリー映画」と言わしめた作品。
決していい気分にはならないです。でも戦争ってそういうこと。いや、こんなもんじゃない。当たり前だけど。

1位
この世界の片隅に


総監督:片渕須直
声の出演:のん/細谷佳正/稲葉菜月

普通の人に忍び寄る戦争

キネマ旬報の2016年のベストテン作品賞に選ばれたり、ライムスターの宇多丸さんが絶賛していたりで、ほうぼうでその道のプロの方々が絶賛されているので素人の僕がいくら褒めても褒めたりない。もういわゆるただの最高傑作です。全ての賛辞に同意します。

とりわけ僕が一つだけ挙げるとすると、のんさんですね。いやもう、声だけでこんなに凄い演技ができるのかと。じぇじぇじぇの東北弁だけじゃなくて、広島弁も出来るのかと。
主人公すずさんのキャラがのんにイメージに重なることもあって、演じやすいということもあったかもしれない。でも、すずさんらしくなく、あるいはのんさんらしくなく感情を爆発させるシーンが2つあるのですが、そこは思い出しただけでも涙が出ます。
一つだけ挙げるとするとと書いたけど、あともう一つ。
戦争中の日本人は「欲しがりません勝つまでは」の精神でとても禁欲的なイメージがあるけど、実際はそうではなく元々は現代を生きる我々と変わらないいわゆる「普通の」人たちだった。
そういう普通の人たちの生活にいつの間にか忍び寄ってくるところが戦争の恐ろしさ。銃を持って戦場に行くことも怖いけど、いつの間にか戦争が日常生活に忍び寄ってくるのも怖い。その恐ろしい戦争を体験したのは、特別に忍耐強い立派な人たちではなく、時にはだらけて、時にはくだらないことで笑うような僕らと同じ普通の人たちだった。よく考えれば当たり前のことなのに理解できていなかったこと。
それこそがこの映画のキモなんじゃないか。
すずさんと僕たちは何も違いはない。すずさんは僕たちだ。他人事じゃない。
だからこそ、これは世界中のすずさんに観ていただきたい映画。
日本人であれば必見の映画。


いかがでしたか?僕は戦争映画は観終わった後に、「戦争は決して起こしてはならない」と思わせるものでなければならないと思ってます。
SEALsかっこいいとか、にっくき敵を倒してスカッとしたとかそんな感想を抱かせるような戦争映画はプロパガンダと思ってます。
だから、有名なお涙頂戴映画はランクインしていないちょっとクセの強いランキングになったかもしれません。
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